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典型的な「日本の伝統」認識

平沼赳夫氏、国会議員です。
かつては自民党にいましたが、郵政民営化に反対して、
小泉首相(当時)の公認を取れず、それ以後無所属となっています。
政治信条は、典型的な国粋主義でしょうか。

05年3月4日のテレビ東京の『ニュースアイ』という番組で、
平沼赳夫氏は、選択別姓法案に、しっかり反対を表明していました。
つぎのエントリに、発言の全文が載せられています。
http://fb-hint.tea-nifty.com/blog/2005/05/post_09e9.html
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「基本的には反対です。
先祖を、たとえばお墓参りひとつとってもどういう形で持続するか、
それはやはり日本の習俗、伝統、文化、そしてアイデンティティですから。
いま私はあえて(民法を)変える必要はない(と頷く)
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ものごころついたときから、日本に定着していたので、
きっと日本の「伝統」に違いない、という単純素朴な思い込みですね。
夫婦同姓が、日本の「伝統」でも、文化でもなんでもないことは、
わたしの拙コンテンツ、「歴史のわい曲」をご覧ください。

お墓を持ち出すのも、よくある反対派の主張のひとつです。
お墓の引き続ぎは、財産の相続に準じた扱いだそうです。
霊園のかたに聞いたところ、結婚して苗字が他家に変わった女性でも、
縁者であれば、引き継ぐことができます。
となれば、夫婦同姓にこだわる必要もないでしょう。

墓標に「なんとか家」と書くことについては、最近は別姓対応で、
苗字をふたつ書き込める墓石もあるので、それを利用すればよいでしょう。
その前に、死んだ人間を、生きている人間に優先させる発想が、
そもそものまちがいだと、わたしは思います。


この番組は、じつは、ネットの市民団体が主催した、
選択別姓の院内集会の取材にもとづいて作られた番組でした。
野田聖子氏が、番組のメインで、ポストコイズミの
有力首相候補として、取り上げられていました。

その野田聖子氏が、長いあいだ関わってきた法案として、
民法改正、選択制別姓制度が、特集されたものです。
平沼赳夫氏は、「そのほかの首相候補」として、登場していました。
選択別姓が話題になったので、平沼氏の見解を訊いたのでしょう。

平沼赳夫氏というのは、日本の「伝統」と言われると、
なんでも正当化できると思うというか、思考停止するのかもしれないです。
女性天皇・女系天皇も、日本の「伝統」に反すると信じて、
反対しているのは、想像にがたくないと思います。

しかも、その根拠のひとつに、「アインシュタインの予言」を挙げて、
その「伝統」が、外国人からも評価された、などと言うから失笑ものです。
この「予言」は、アインシュタインが日本の天皇制を礼讃した(!)、
などというもので、実際にこんなことがあるはずなく、
にせの文書にほかならないですよ。

もう、なんで、こんなでたらめな人が、
人気や支持を博すのだよ?と、わたしなら思ってしまいます。
こういう「伝統」が大好きな人間は、既成道徳のお題目や、
固定観念を並べますから、ある種の人たちには、
あたまの中に入っていきやすいのかもしれないです。

さらに、国粋主義とむすびつくことで、日本人としての
自尊心をくすぐるのもあるのだと思います。
たとえば、平沼赳夫氏は、郵政民営化反対の理由の槍玉に、
「年次改革要望書」を挙げて、アメリカの要求にすぎないとしています。
こんなことがあるので、民族派や、反米ポピュリスト受けして、
持ち上げられたりもするのでしょう。


平沼赳夫氏は、本業の経済でも(小泉政権時代に経産相だった)、
経済効率や国民の受益よりも、ナショナリズムとか、
「伝統」といったものを、持ち出すようです。
55年体制時代が繁栄したのは、「日本人の本来の精神」が
保たれていたからで、それが損われたから、バブルが崩壊して
未曾有の不況におちいった、ということになるそうです。

55年体制の破綻は、冷戦の終了や経済のグローバル化や、
「会社本位主義」という、個人疎外のシステムの破綻など、
国内外の状況の変化で、それまでの再分配システムが、
機能しなくなったからでしょう。
「時代に取り残された一人の哀しい政治家」だと、
平沼赳夫氏のことを言うかたもいますが、[2007年10月24日 23:32]、
わたしも、そうだろうと思います。

参考文献、資料
  • 『文芸春秋』 2006年4月号
    「この国のかたち」を壊すのは誰だ
    「勝ち馬に乗れ」で乱れた心を取り戻すことは出来るか
    藤原正彦氏と、日本経済についての対談。

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