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反対派の精神構造と思考構造
反対派最後のとりで

民法改正法案が可決しないのは、選択的別姓制度や、
婚外子差別の撤廃なんか認められないという、反対派たちの存在です。
法案は国会で審議にかけることで、決まりますから、
国会議員の中の反対派が、抵抗をしていることが、直接の原因となります。

反対派議員が多いのは自民党ですが、全員反対ではないです。
野党議員は全員賛成ですし、公明党も賛成しています。
反対派は、議会全体の過半数に達しないのに、なぜに彼らは優勢であり、
民法改正法案は、いつも反対されるのかが気になるところです。


法律はその作られかたによって、大きく2種類あります。
ひとつは政府の省庁が提出するもので、「閣法」とも言われます。
もうひとつは、議員が直接発議するもので、「議員立法」と言われます。
民法改正法案は、法務省の法制審議会が作ったものですから、
政府提出の法案(閣法)、ということになります。

このうち、政府提出による閣法の扱いですが、自民党政権では、
「事前審査・承認制度」という、自民党内独自の制度が設けられています。
法的に定められたものではなく、慣例で行なわれるものですが、
議会提出の前に、かならずここを通されることになっています。


事前審査は、「法務部会」という会議で行なわれます。
関心のある議員が参加するのだと思いますが、原則としては多数決ですが、
実質的には全会一致で、取り決められることになります。
ここで自民党議員の意向が取り込まれるよう、法案が修正されたりします。

こうして審査された法案は、ほとんど例外なく「党議拘束」がかけられます。
「党議拘束」は、すべての党所属議員が、採決などの際、
政党の決定(党議)にしたがって投票するという指示です。
日本の自民党のこのシステムは、議員内閣制度を採る、
ほかの先進国と比べても、例を見ないほど拘束力が強くなっています。

事前審査を通過すると、法案はようやく国会に提出されることになります。
理論的には、国会の審議は形式的なものとなり、
党議拘束をかけられた、多数派をしめる与党議員が、
全員賛成することで、閣法はかならず可決することになります。
そればかりしていると、「強行採決」と見られて反発を招くので、
野党の意見を聞いて、法案の修正を行なうこともあるのですが、
実質的には、自民党内の事前審査で、すべてが決まっているとも言えます。

法務部会で行なわれる事前審査で、意見が集約できなかったときは、
法案は自民党内で止まってしまい、国会には提出されないことになります。
この審査は全会一致が多いので、気に入らない法案であれば、
だれかが議論を紛糾させてつぶしてしまえば、提出の阻止もできます。

民法改正法案は、じつはそうやって国会への提出が、
いつもはばまれる法案のひとつだったりします。
自民党内の反対派議員も、世間一般の反対派たちとおなじです。
頑迷きわまりなく、いかなる理由も理屈も聞く耳持たず、
ヒステリックに反対するばかりであり、そんな反対派を相手に議論すれば、
おのずと紛糾することは、想像にがたくないでしょう。

つぎのコンテンツに、法務部会という、事前審査を行なう会議の様子を
書きましたので、反対派の実態を、ご鑑賞していただけたらと思います。
「自民党法務部会(2002年)」
「自民党法務部会(2003年)」
「自民党法務部会(2004年)」


民法改正法案が、かりに自民党の事前審査をパスして、
国会に提出されたとすると、21世紀はじめ現在の議会勢力であれば、
まずまちがいなく、可決することになるでしょう。
はじめにお話したように、野党は全部賛成していますし、
(民主党は党議拘束をかけて全員賛成)、これと公明党に、
自民党内の賛成議員をあわせれば、過半数を制することができるからです。

そうなると、反対派としては、なにがなんでも、
法務部会の事前審査のところで、法案をにぎりつぶす必要が出て来ます。
民法改正法案が、国会に提出されたら、「一巻の終わり」ですが、
事前審査でつぶすのは、いまお話したようにわりあい簡単だからです。

自民党が政権についていて、閣法が自民党にまわされる限り、
かならず事前審査を受けますから、民法改正法案は可決はおろか
国会への提出も、半永久的になされないと思ってよいでしょう。
この法務部会の事前審査こそ、唯一絶対にして絶好の、
提出のにぎりつぶしができる場所であり、いわば反対派たちにとって、
民法改正法案の成立阻止のための、「最後のとりで」なのだと思います。

事前審査はあくまで慣例ですから、ここを通さないで、
法案を直接国会に提出することは、なんら違反はないことになります。
ところが事前審査は、自民党内では強烈に固定化していて、
ここを通さないで閣法を国会へ提出することは、事実上不可能となっています。

郵政民営化法案を提出するとき、小泉首相(当時)が、
慣例であって法的根拠はないと言って、事前審査を通さずに、
直接国会への提出を、強行したことがあったのでした。
ところが、かかる強権を持ってしても(持ったために?)
自民党が相当に混乱したことを見れば、この慣例に反することが、
いかにむずかしいかが、わかることと思います。


議員立法というかたちで、法案を提出することも模索はされています。
(政府提出の法案ですが、これを議員が独自に作ったことにして発議。)
これは、衆院では50人以上、参院では20人以上の賛同者が必要で、
さらに所属政党の承認も、必要とされています。

法務部会でいつも紛糾する法案を、議員立法で発議することに、
自民党の執行部が首を縦に振ることは、まずありえないでしょう。
そんなことをしたら、反対派議員たちの猛烈な抗議にあって、
党内はけんけんがくがくとなり、大混乱をきたすからです。

ほかに、野党が毎年のように、民法改正法案を独自に提出しています。
しかしこれは、多数派である自民党が、わざと審議に応じないで、
だまって無視をすれば、簡単ににぎりつぶすことができます。
(野党から出た法案を無視することを、俗に「つるす」なんて言います。)
いつも「つるし」をしていれば、反発を招きますが、
たまにこうした強権を使うと、効果的なわけです。


自民党が下野して、民主党が政権を取れば、政府提出の法案は、
民主党にわたされますし、民主党は党議拘束をかけて、
民法改正法案に賛成ですから、ほどなくして国会で審議され可決でしょう。

自民党には、政府提出の法案は、わたされないですから、
法案阻止の舞台である、法務部会は通らないことになります。
よって反対派議員が、法案をつぶす場所はなくなることになります。
したがって、選択別姓の反対派たちは、自民党政権の維持・延命のために
全力をあげるのが得策ということになるでしょう。

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