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法務省陰謀論?

太田誠一氏、自民党の議員です。
「レイプは元気」発言の人だと言えば、「ああ、あいつか」と、
おっしゃるかたも、たくさんいらっしゃるでしょう。
少子化対策の議論の最中に出てきたのですが、太田氏に言わせると、
性欲があるからこうした男性は、まだまともなのだそうです。

こうしたすさまじい女性観や、恋愛観、結婚観を
お持ちなだけのことはあって、民法改正、選択別姓には反対しています。
自民党の法務部会という、国会に提出する法案の、
事前審査をする党内会議があるのですが、なんでも太田氏は、
ここで「法務省の陰謀だ!」などと叫び散らしたというお話です。
http://fb-hint.tea-nifty.com/blog/2006/06/post_91a4.html
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でもね、確かに法制審答申いらい、政府案として民法改正を
国会に提出しようと試みても自民党の一部の国会議員が
猛烈に阻止しまくったんですよね。
太田誠一氏なんて「法務省の陰謀だ!」と叫び散らしたとか。
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共産主義やフェミニズムの陰謀だと、わめく反対論者はたくさんいますが、
法務省の陰謀だと言う人は、太田誠一ひとりだけのようです。
「レイプは元気」と言う人は、なにかがちがうのでしょうか?
ほかの政府提出の法案とおなじく、民法改正法案も、
もとは法務省が作ったのですから、これを反対論者たちが、
目のカタキにしないほうが、奇妙なのかもしれないです。


例の本『夫婦別姓大論破!』の「家族の名前は一体感を象徴する」
というタイトルのセクションが、太田誠一氏の分担したところですが、
180ページにこんなことが書いてあります。
これから察するに、自分の知らないあいだに、法務省が法案提出を
決めていたので、それを根に持ったのかもしれないです。
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私は国会の法務委員の理事を十数年やってきて、法務省のかかわる
法律のことならだいたい知っているはずだと自負していました。
しかし、夫婦別姓については昨年の暮れ(注1)に法務省から聞いたばかりです。
しかも、この春には国会に提案したいという。 
あまりに拙速すぎです。 私がそのとき聞いたくらいですから、
一般の人たちはほとんど知らないのではないでしょうか。
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法務省は「婚姻制度等に関する民法改正要綱試案の説明」
というものを、1994年7月に出しています。
また1992年12月にも、「婚姻及び離婚制度の
見直し審議に関する中間報告」を発表しています。
太田氏が聞かされる何年も前から、じつは法務省は、
議論の経過を報告してきています。

太田誠一氏は、法務省の法案はだいたい知っている、
などと言っていますが、なにを見ていたのかと思いたくなります。
百歩譲って、本当に彼にとって、抜き打ちだったとしても、
単に太田氏だけが、家族のことなど興味ないといった理由で、
知らなかっただけではないかと思います。

『夫婦別姓大論破!』の、太田誠一氏の記事は、
インタビュー形式なのですが、聞き手のかたは、
「しかし、夫婦別姓に関する審議は91年に開始され、
民法改正要綱の試案、中間答申、さらに最終答申がでた」と訊いています。
このかたは、法務省の議論の経緯を、よくご存知のようですね。

聞き手のかたは、「あなたは知らないと言うが、
知る機会はいくらでもあった」と言いたくて、訊いたのだと思います。
ところが、太田氏はこんなふうに、論点をすりかえてきたのです。
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法制審議会でいくら議論がなされたといっても、
それは政府のなかでの話でしょう。
立法の責任を負っているのは、国民にゆだねられた国会議員です。
適切でない立法をしたときに選挙で落とされるのはわれわれなのですから。
法制審議会の議論を聞き、われわれ自身が議論をしたうえで決めるべきでしょう。
審議会の審議によって立法されるとすれば、官僚独裁になってしまいます。
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きれいごとをおっしゃりますが、たいていの法案は
官僚にまかせきりで、「いちばん守られていない憲法の条文は、
じつは41条」と揶揄されるくらいなのに、なにをかいわんやです。
ようは、自分が直接首を突っ込んで反対する機会が、
ほしかっただけなのかもしれないです。


さらに、太田誠一氏は、つぎのように続けていたりします。
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そう考えれば、夫婦別姓を推進しておられる方々は
十分に議論を尽くしたといわれるが、まだ国会でも十分議論をしていない。
賛成論と反対論を戦わせた上で、1年くらい後に決める
というのがよいのではないですか。
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わたしも、まったくもってそう思いますよ。
ぜひとも、国会に法案を提出して、議論したいただきたいと思います。

ところが実際には、法務部会の事前審査という、
自民党の内部会議で頑迷きわまりない反対派議員の抵抗にあって、
握りつぶされてばかりで、国会で審議がなされないのでした。
法務部会で「法務省の陰謀だ!」とさわぐ太田誠一議員も、
そうやって、法案を握りつぶす一員であることは、想像にがたくないでしょう。

  • (注1) 『夫婦別姓大論破!』の初出一覧(300-301ページ)を見ると、
    太田誠一氏のインタビュー記事は、「『日本経済新聞』 1996年4月7日
    リレー討論(2) 「夫婦別姓を考える」として掲載」となっています。
    太田氏が聞かされた「昨年の暮れ」とは、1995年と思われます。

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