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反対派の精神構造と思考構造
まぼろしの通称法案
反対論者の「対案」?


つぎのページも合わせてご覧ください。:「高市早苗の通称案(略年表)」

選択別姓の反対派たちは、結婚改姓にともなう
さまざまな不利益の解決として、婚前の苗字を通称として
使えるようにすればじゅうぶんだと、主張します。
戸籍に婚氏と、婚姻前氏の両方をならべて記述し、身分証明書をはじめ、
さまざまな公的な文書に、旧姓を記載できるようにするものです。

通称使用の法制化で、これが選択制の「対案」ということなのでしょう。
反対論者たちは、通称使用でじゅうぶんだと、やたら強調するし、
それで通称使用の法案は、すでに存在すると思っているかたも、
これをご覧の中にも、たくさんいるのではないかと思いますが、
実際のところは、どうなのでしょうか?


通称使用案の内容に、おおやけに述べられている記事として、
2001年12月25日の産経新聞で、高市早苗氏の案が紹介されたものがあります。
選択的夫婦別姓制度に反対する高市早苗議員は十一月、 戸籍法の一部改正案を自民党法務部会で提案した。 戸籍は従来通り夫婦同姓として記されるが、結婚前の姓を”通称”として 法的に使用できるようにするもので、パスポートや運転免許証などの 行政文書に戸籍名(本名)と通称名を併記できるようにしている。
「法務部会」というのは、自民党が、国会に提出する政府法案を 決定するために、事前に審査を行なう会議です。 ここで気をつけておきたいのは、高市早苗氏は部会で、 通称使用を「提案した」のだということです。 具体的に作った法案があって、議論の棚上に乗せているのではないですよ。 2002年7月30日の、フジテレビの『とくダネ』という番組で、 選択別姓がテーマになったことがありました。 野田聖子と高市早苗も番組に出演して、議論になったのですが、 「ためにする反対はやめて、対案があるなら出してほしい」と、 高市氏は、野田氏から、詰め寄られたらしいのです。 このときは、まだ法案があったのではないようですね。 http://www2.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=141423&log=20020730 それから、『婦人公論』2003年2月号の、「井戸端会議」を見ると、 高市早苗氏の案は、「法案としてはまだできていません」と、 佐々木知子代議士(当時)に、はっきり言われています。 このときまでは、通称使用の案は「構想」のままで、 法案のかたちになっていなかったのは、たしかでしょう。 2004年の4月に自民党で、選択別姓法案についての 法務部会がまたあったのですが、このときも、反対派議員は、 賛成派議員から、「対案があるなら出してほしい」と言われたのでした。 ところが、反対派議員のひとりは、なにを思ったのでしょうか、 「対案はボクの心の中にある」などと、言ったのだそうです。 http://www.cafeglobe.com/news/politics/po20040319.html これはあきらかに、対案などどこにもない、ということですね。 高市早苗氏は、03年11月の総選挙で落選して、議会からいなくなるのですが、 やはり法案を書かないまま、去ったのでしょうか? それとも書いたけれど、残った議員たちが、引き継がなかったのでしょうか?

高市早苗氏のサイトの、2004年9月23日の活動日誌(大和の国から)には、
「私は、通称使用を希望している人が便利になればいいなと思って
法案を書いただけで」と、書いているのです。
どうやら「書いた」そうですが、いつのまにでしょうか?
http://rep.sanae.gr.jp/yamato/yamato_contents.html?id=64

この日の日誌には、「書いた」という法案の内容についても、
アウトラインだけですが、述べられています。
戸籍上は夫婦親子が同姓であるという現行法を堅持。 家族のファミリーネームは残すべきである。 ただし、職場等での通称として旧姓使用を希望する届出をした場合には、 各行政機関は通称使用の利便性に配慮する努力義務を負う (現在、既にパスポートでは、戸籍名と通称名を併記できる。 同様に、免許証や健康保険証など、個人の同一性を示す書類は併記形式とする。 社会保険や税務事務でも同様の配慮をする)。
ところで、2006年3月14日の、読売新聞のスキャナを見ると、 高市早苗が、通称使用の法案を法務部会に出したと、書かれています。
高市早苗衆院議員は、以前、党の法務部会に、 公的な書類などへの旧姓併記を法律上認める案を出したが、 強硬な反対派から受け入れられず、「対応が硬直化していると感じた」という。
これまた「いつのまに?」ですが、これ以上のことは、 記事に書かれていないので、「案を出した」のがいつのことで、 どんな法案を提出したのかは、ぜんぜんわからないです。 2001年12月25日に、産経新聞で紹介されたときのような、 構想程度の内容だったのでしょうか? あるいはそうではなくて、本当に法案のかたちにしたのかもしれないです。 そうだとすると、03年3月の、『婦人公論』の特集よりあとのはずで、 03年11月に、高市氏が落選していなくなる前なのも、たしかでしょうから、 考えられるのは、03年6月の法務部会ということになります。 法案があったのだとしても、高市早苗氏の案に沿って改正すると、 併記の必要な書類すべてに対応するためには、 同時に改正が必要な法案が、400ほどあると言われています。 こうした状況に対応しているかどうかは、はななだこころもとないかぎりです。
田丸 すると、高市さんたちのアイディアは難しいですか? 佐々木 法案としてはまだできていません。 通称使用の法制化って難しいと思う。 やるとなったら、四百何十個もの法律を変えないといけないし。 (『婦人公論』03年2月号、井戸端会議)

反対論者の急先鋒で、通称使用の法制化をいちばん強く主張する、
高市早苗氏でさえ、あまり熱心ではなさそうな調子です。
ほかの反対派議員が、もっとなにも考えていないのは、
「ボクの心の中」発言だけでも、推して知るべしでしょう。

通称制法案なんて、あるのかないのかはっきりしないし、
かりにあったとしても、とても実用にならなさそうです。
それに、ほとんどの反対論者たちは、積極的に自分たちの対案を、
実現させようという気持ちもないようです。
苗字のことで直面している人たちにとって、
とても期待できるものでは、ないだろうと思います。

2004年3月13日の産経新聞は、社説欄で、
「夫婦別姓 法案は当然見送るべきだ」というタイトルで、
高市氏の通称案は、法務省の選択制案より「はるかに現実的である」
「今でも説得力を失っていない」などと書いています。
このような、実体のあやしげな法案の、いったいどこが、
現実的だったり、説得力があったりするのでしょうか?


一般にあちこちの反対論者たちの主張を見ていても、
通称制法案の詳細について、検討や考察をしている人を、
寡聞にして、わたしは、見かけたことはないです。
審議にかけられそうな法案は、なおさらですが、
具体性のある構想さえ、なにも出していないのがたいていです。

また、企業や省庁で、通称使用がどのくらいできるのか、
反対論者がその実態を調査した、ということもぜんぜんないようです。
彼ら反対論者たちは、実証的な考察も、現状の調査による裏付けも、
なんにもないのに、「通称使用でじゅうぶんだ」と、
力説だけしていると、言ってもいいくらいです。

おそらく反対派たちは、現実をまったく知らず、というか、
知りたいとは思わず、それでも、対案は出さなければならないので、
取ってつけたように、「通称でじゅうぶんだ」と、
言っているだけなのだろうと思います。
そして、ひとりよがりに、じゅうぶんな対案を出したのだと、
納得しているにすぎないのではないかと思います。

だんだんと範囲が拡大しているとはいえ、まだまだ通称使用は、
認められないことや、制限があることもすくなからずあり、
さまざまな場面で、苦労をすることがあります。
それにもかかわらず、「現に、日本の多くの職場では、
かなりの女性が結婚前の姓を通称として使い、
現行民法でも不自由は生じていない」などと平然と書ける、
産経新聞の社説に、そうした反対派の独善が、
あらわれているように、わたしは思います。

参考文献、資料
  • 産経新聞 ニュースウォッチ 2001年12月25日 
    「夫婦別姓 なぜ法制化されないのか」
  • 婦人公論 井戸端会議 2003年2月7日
    「夫婦別姓」議論はどこに行ったのか
    高市の通称使用法案の困難さについても、触れられています。
  • 産経新聞 主張 2004年3月13日
    「夫婦別姓 法案は当然見送るべきだ」
  • 読売新聞 スキャナー 2006年3月14日
    民法改正「答申」放置状態 夫婦別姓棚上げ10年
    いつかはまったくわからないですが、高市早苗氏が、
    法務部会で通称法案を出したことがあると、書いてあります。

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