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婚外子の数

婚外子(非嫡出子)は、日本にはどのくらいいるでしょうか?
つぎのグラフに、日本の婚外子の数について、
年ごとの推移が現わされています。



戦前の婚外子の割合は、7%以上あったのですが、
敗戦後、婚外子はきゅうに減って来て、
1980年ごろには、1%程度まで下がりました。
そのあとすこしずつですが、ふたたび増えてきて、
現在は2%近く、数の上では約2万人になっています。


戦前は、「正妻」のほかに「めかけ」がいる、という状況も
めずらしくなかったし、結婚したら、婚姻届けを
すぐに出す習慣も、定着していませんでした。
このあたりが、戦前の高い婚外子の割合に
現われていると、考えられるでしょう。

戦後は、自由恋愛による結婚が主流になってきて、
めかけがめずらしくなってきました。
また、婚姻届けを出さなければ、正式な結婚ではない
という意識も、強くなりました。

これに、婚姻の内でしか、子どもを産むべきでないという、
貞操観念が加わって、婚外子の割合を減らしたと考えられます。
1980年ごろから、ふたたび増え始めたのは、
シングルマザーや、事実婚のまま子どもを産む、
というケースが、多くなってきたためと考えられます。


年ごとの推移のグラフで、わたしが興味を惹いたのは、
「ひのえうま」の年(1966年)です。
この年は、こころない言い伝えを信じた人が、たくさん現われて、
出生率が前後の年の、約27%も下がったのでした。
(集団ヒステリーと言えるでしょうか?)

ところが、婚外子の数はさほど減っていなくて、
相対的に割合が高くなり、グラフが飛び上がっています。
つまり、婚外子を産んだ人たちには、ひのえうま伝説に、
こだわらない人たちも多いことになります。

おそらく、因襲にとらわれず、合理的な判断ができることが、
根拠のない言説を信じないことと、
婚外子を取り巻く社会通念にこだわらないことの、
両方に効いてきて、このようになったと考えられます。

外国の婚外子の割合は、どうなっているでしょうか?
欧米の民主主義諸国と比較したデータが、つぎのグラフに出ています。



これを見ると諸外国では、ずいぶん婚外子が多いとわかります。
イギリスやフランスでも、40%以上が婚外子です。
カトリックの影響が強いイタリアは、10%くらいで、
ほかのヨーロッパの国とくらべるとすくないですが、
それでも日本の2%よりは、はるかに多くなっています。

つまり日本は異常なまでに、婚外子が少ない国ということになります。
これはとりもなおさず、日本では、それだけ婚外子に対する
風当たりが強いことを示していると言えます。
法律婚主義の徹底による、届け出へのこだわりや、
強い貞操観念、あるいは、事実婚やシングルマザーに対する
社会的偏見や、社会制度の不備のあらわれと言えるでしょう。


婚外子差別の撤廃の、反対論者の中には、
日本の婚外子の割合の低さを、結婚に対する道徳観念が高く、
家族が乱れていないからだ、などと考える人もいるようです。

しかしこれは、まったくのあやまりで、
じっさいには、欧米の民主主義諸国では、
日本ほどには、婚外子が差別されないからにほかなりません。
つまり、婚外子を産んでも、不道徳という感覚が弱く、
社会的な保証も、日本よりずっと整っているので、
婚外子の割合を高いものにしているのでしょう。

参考文献、資料

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