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非改姓婚を望む人たちの数

選択別姓制が実現したとき、実際に非改姓結婚を
しようというかたは、どのくらいの数がいるでしょうか?
同姓でも別姓でも選べるという、選択制ですから、
希望する人数の大小は、導入の是非には関係ないのですが、
それでも、多いにこしたことはないでしょう。

2001年の世論調査によると、選択制導入の賛成が、42.1%で、
そのうちの18.2%が、別姓を希望すると答えています。
 http://www8.cao.go.jp/survey/h13/fuufu/2-9.html
42.1%の18.2%が、実際に、非改姓結婚をすると考えると、
全体のうちでは、7.7%になります。
よく引き合いに出される、「7.7%が別姓を希望している」
という数字は、こうして求められたものです。

この数字は、すべてのアンケート回答者を使っているので、
二度と結婚しないような世代のかたも、含まれることになります。
もっと結婚が目前に迫っている、20代と30代に限ると、
52.3%が賛成していて、そのうちの15.6%が、実際に希望するので、
全体のうちでは、8.2%になります。

実際に法律が改正されたとすると、
考えが変わるかたも、おそらくいると思います。
とくに、「別姓の希望」で「どちらとも言えない」と答えたかたから、
自分も選択するというかたも、出てくるでしょう。
そう考えると、この数字はひとまわり大きくなって、
10数パーセントになるのでは、と思います。


あなたの印象と比べて、いかがでしたでしょうか?
意外と多いですか、それとも、やはり少ない、でしょうか?

なんとしても選択制導入を否定したい、反対論者でしたら、
このくらいの数でも、別姓を希望する人たちを、
無視できるほど少ないと、決めつけるところだと思います。
しかし、あなたが、はじめに結論ありきの、反対論者でなければ、
1割程度という数字は、無視できる少数ではなく、
法律改正が必要な多数にはなっていると、
考えるのではないかと思います。

積極的に別姓を望む人の数は、このくらいですが、
もうすこし、モチベーションの弱いかたたちは、どうでしょうか?

たとえば、職業上の不利益について、
「改姓で不便を生ずることがあると思う」と、答えたかたは、
全体の41.9% になっています。
http://www8.cao.go.jp/survey/h13/fuufu/images/zu02.gif
また、アイデンティティの喪失については、
「苗字が変わったことに違和感を持つと思う」が24.7%、
「自分が失われてしまった感じを持つ思う」が7.6%となっています。
http://www8.cao.go.jp/survey/h13/fuufu/images/zu07.gif

不満や違和感があると言っても、
回答した人たちの中には、程度の差はあるでしょう。
わりとすぐに、あきらめた人もいれば、長いあいだかかったけれど、
いまはあきらめたという人も、いると思います。
あるいは、あきらめ切れないけれど、なんとか我慢できて、
現状に甘んじている人もいるでしょう。
どうやっても、あきらめも我慢もできないかたたちが、
労力を使ってでも、自分の名前を守ろうとするのでしょう。


モチベーションがやや弱い人たちは、とくに反対論者によって、
「同姓で満足していて、現状でなんら問題がない」と、
往々にして、見なされがちです。
また、別姓関係のウェブサイトにも、現れることがないし、
みずからサイトを作って発言することもないので、
(最近は、ウェブログに書くので、かならずしもそうでもないですが。)
民法改正の推進派にとっても、存在が把握しにくくなっています。

ところが、反対派や推進派が思っているよりも、
意外とたくさんの人たちが、いまの同姓強制に、
なんらかの不満があるようです。
そうした、あきらめや我慢の犠牲の上に、
現状が成り立っていることになりそうです。

(わたしのサイトは、民法改正と関係ない、
おともだちつながりの人たちに、紹介することが多いのですが、
改姓がいやだったけれど、結局あきらめたとか、
改姓してふつうに過ごせているけれど、法律が改正されたら、
旧姓にもどしたい、というかたも、ときどき見受けられます。
見えない犠牲が、案外多いというのも、あながち的外れでもなさそうです。)

「別姓の夫婦や、別姓を希望する人を、私は見たことがない。
まわりを見ても、みんなふつうに結婚改姓して、
不満がないようだし、別姓を望む人たちが、
そんなにたくさんいるとは思えない。」
といったことを言うかたを、見かけることがあります。

しかし、上にお話したことをかんがみると、
その人にとって、表面的にそのように見えるだけで、
かなりの数の、同姓強制に不満があるかたに、
そうとは気付かずに、接していることが考えられます。

なにしろ、別姓だというだけで、
「わがままで身勝手だ!」「子どものことを無視するのか!」
などと、攻撃的態度を出してくる、
心無い人が、どこにいるかわからない状況です。
苗字を変えたくない気持ちがあっても、おいそれとは語るはずもなく、
通常はそれを隠して、だれにも知られないようにするでしょう。
くだんの人が、見たことも聞いたこともなくても、
考えてみれば、あたりまえとも言えます。

別姓にかぎらず、一般に、社会的マイノリティに対して、
「これまでに、自分のまわりで見たことないから、
どこかよその世界のお話であって、実際には、ほとんどいないのだろう。」
のように判断することは、えてして危険なことがあるので、
注意がいると思います。

参考文献、資料

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