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おたがいに、婚前の苗字を変えないまま、婚姻届けを出しても、 いまの日本では、残念ながら受け付けてくれないのです。 法律婚が認められないいまの状況で、 別姓結婚をするにはどうしたらよいか、ごく簡単にお話します。 どれも一長一短であり、こうすれば絶対にだいじょうぶ、 という手立ては残念ながらないです。 いま置かれている状況に応じて、いちばん好ましいと 思われる方法を選んでいくしかないでしょう。 本質的な解決は、民法が改正され、 別姓でも法律婚が認められるようにするほかないことになります。 |
事実婚
婚姻届けを出さず、結婚したとするスタイルです。 (これに対して、いまの日本で一般的になされているように、 婚姻届けを出して、法律の上でも夫婦となるのを「法律婚」と言います。) 戸籍の名前はそのままですから、 自分の苗字を守るための不都合は、まずないでしょう。 むかしは「内縁」と言われていたのですが、 このことばは、ネガティブなイメージがあるので、 積極的かつ肯定的に、届けを出さない結婚であることを しめすために、「事実婚」という言うようになりました。 いまの日本は、法律婚を重視する傾向が強く、 婚姻届けを出すのを「正式な結婚」とする社会通念があります。 事実婚というと、同棲と同じにみなす人もいるかもしれないです。 事実婚は、婚姻届けを出さないので、法律上は「内縁」と同じであり、 法律用語も「内縁」と書かれ、結婚していない扱いになります。 そのため法律婚によって得られる、さまざまな権利が持てないことになります。 しかし、まったく権利や義務がないのではなく、 たとえば、住民票で「未届け」の記載を受けることで、 夫婦の扱いを受けられることもあります。 事実婚の権利も、少しずつながら認められる傾向にはあるのですが、 法律婚よりは、どうしても制限されることになるでしょう。 |
通称使用
婚姻届けを出して、戸籍上は改姓しますが、 実生活では生来の苗字を使う、というスタイルです。 日常的には、生来の姓の書かれた身分証明書を用意しておくことで、 その苗字を名乗っていることを第三者にしめすことができます。 企業や官庁のような職場の場合、 旧姓を公式に名乗ることができることがあります。 ただし、あらゆる書類において、旧姓が使えるとは限らないです。 (ある程度限界があるのが、多くの場合だと思います。) また、認められている範囲は、その職場の中だけであり、 転職や部署、支社(支庁)の移動にともなって、 使えなくなることもあるでしょう。 旧姓を通称として使えない企業や官庁で、通称を使いたいときは、 職場を相手に交渉からはじめることになります。 そうしたところでは、上司や経営者側に 理解できない人が多いこともあり、交渉には時間がかかるなど、 かなりハードなことも多いでしょう。 日本では、戸籍に書かれた名前を「本名」とする社会通念があり、 公式なところでは、戸籍の名前を使わなければならない、 という感覚が、きわめて強くなっています。 通称が使える場面も、少しずつ増えてきていますが、 まだまだ戸籍の名前を使わされることも多く、 自分の名前を守るという点では、困難がたくさんあるでしょう。 |
ペーパー離再婚
基本的に「事実婚」と「通称使用」の組み合わせです。 必要に応じて、形式的に離婚届けや婚姻届けを出して 事実婚と法律婚&通称使用のあいだを切り替えるスタイルです。 これによって、法律婚でない不利益をいくらかさけられるし、 また通称使用よりは、ずっと自分の名前を守りやすくなります。 ふだんは事実婚で、必要なときだけ婚姻届けを出して、 法律婚になるケースと、ふだんが法律婚で、 必要なときにペーパー離婚しておくケースがあります。 この場合、おなじ相手と再婚するので、 父性の推定がおこらず、女子の再婚禁止期間は適用されないです。 したがって、ペーパー離婚したつぎの日に ふたたび婚姻届けを出して、法律婚にすることもできます。 そのかわり戸籍には、離婚や結婚をくりかえしたあとが、 たくさん記録されることになります。 戸籍に「傷が付く」ことを気にするかた、あるいはたとえ書類上でも、 離婚したくないかたには、とても抵抗があるかもしれないです。 また法律違反ではないにしても、脱法的になることがあります。 |
参考文献、資料
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