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女子の再婚禁止期間

再婚禁止期間

現在の民法では、女性にのみ再婚禁止期間なるものがあります。
これは離婚したあと、6ヶ月のあいだは他の男性と
再婚することができない、というものです。

「再婚禁止期間」は、子どもの父親がだれかを
はっきりさせる「父性の推定」のために設けられたものです。
母親は出産の事実で、確実に親がだれかわかりますが、
父親は、前の夫と現在の夫と、どちらの子か
わからなくなることがあります。
それで女性にだけ、一定期間結婚させないことにするものです。

再婚禁止期間は、適用されない場合がいくつかあります。
同一人物と再婚するとき、および、高齢で出産の可能性がないときです。
これらは「父性の推定」の必要が起きないので、
離婚したあとでも、すぐに結婚することができるわけです。

後者の場合、出産できない年齢かどうかは、個人差があります。
規定の適用からはずすかどうか、はっきり決めようとすると、
これも立ち入ったプライバシーに関わることになります。


離婚の直前は、結婚生活は破綻していることが多いでしょう。
性交渉の可能性はほとんどなく、父性の推定が困難ではないでしょう。
実際、男性が離婚届けを出すことに応じないので、
結婚生活が破綻しているのに、法律婚の状態が続いている、
というケースが多くなっています。

父性の推定が問題になるのは、前夫がなかなか別れてくれないので、
やむをえず新しいパートナーとの生活を始めて、
子どもを作った、というケースが多くなっています。
したがって、前夫の子である可能性はきわめてすくなく、
ほぼ確実に新しいパートナーの子とわかるのが通常です。

そもそも、再婚禁止期間の規定は、結婚している男女しか、
性交渉をしないことが、前提になっています。
婚前交渉なんて、きょうびはめずらしくないでしょう。
この意味でも、非現実的な規定であると言えます。

再婚禁止期間は、まったく現実に合わず、無駄と言えるでしょう。
それにもかかわらず、男性は離婚したつぎの日から、
べつの女性と法律婚できますが、女性は再婚禁止期間のうちは、
べつの男性と法律婚できないのですから、
差別的な規定と言えることになります。


婚姻外の妊娠の場合、父性の推定は、
もっぱらDNA鑑定などの親子鑑定によります。
となれば、婚姻の内外を問わず、推定が必要であれば、
親子鑑定で一本化して、再婚禁止期間は廃止したほうが望ましい、
というのが、わたしの考えるところです。

親子鑑定による一本化ができないのでしたら、
男性にもおなじ長さの再婚禁止期間を設けてしかるべきでしょう。
そうでないと、男女平等が確保できないと思います。


提出が予定されている民法改正法案では、
再婚禁止期間を「100日に短縮する」となっています。
これは、婚姻後200日以降に産まれた子を、
現在の夫の子と推定することが、民法772条で決められているからで、
6か月(180日)は長過ぎで、差し引き100日でよいということです。

200日と100日を合わせた300日は、妊娠の期間のつもりです。
民法772条に、「離婚後300日以内に産まれた子は前夫の子」と、
推定する規定があり、同じ考えだと思います。
これは医学が未発達な明治時代に決められたものを、
戦後の民法もそのまま引き継いでいるものです。

再婚禁止期間を短くするのは、一定の評価ができるのですが、
実際の妊娠期間は300日よりもっと短いです。
しかも現代は医学の発達で、もっと早産もありえます。
したがって、医学的にも現実に合わないと言えます。

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