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国際条約と民法改正
民法改正の不履行は条約違反

民法改正(選択別姓の導入、女子の待婚期間の廃止、
婚外子差別の廃止)は、日本が批准している国際条約、
「女子差別撤廃条約」「子どもの権利条約」にもとづいて、
すみやかに行なわなければならないものです。


女子差別撤廃条約の、16条1項の(g)では、
結婚や家族生活に関して、夫と妻の「同一の個人的権利」を
保証することが、定められています。
とくに、苗字については、別途はっきりと、

「(g) 夫及び妻の同一の個人的権利(姓及び職業を選択する権利を含む)」と、
記されていることが特徴的です。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/josi/3b_004.html

「同一の個人的権利」とありますから、
結婚する男女の両方が、苗字を変えたくないときも、
その婚姻は、認められる必要があります。
いまの日本の民法では、男女の双方が非改姓結婚をしたいとき、
それが認められないので、条約に違反していることになります。

同一の個人的権利という句は、日本の反対派がしばしば持ち出す、
「いまの日本の法律は、男女どちらの苗字でも選べるから、
すでに平等であり改正の必要はない。」という、
言い逃れを防ぐために、入れられているのでしょう。

また、子どもの権利条約の2条1項と、
国連人権規約B規約(自由権規約)の、24条と26条では、
子ども本人やその父母の、社会的出身や出生にかかわらず、
あらゆる差別をなくすことが、うたわれています。
日本の婚外子差別は、あきらかに出生による差別であり、
これらの条約に違反しています。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jido/zenbun.html#1-2
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kiyaku/2c_001.html

選択別姓を導入しないことについては、
いままでは、世論調査で反対意見のほうが多いことから、
国民の同意が得られず時期尚早である、
ということを、理由としてきました。
ところが、2001年の世論調査では、選択別姓については、
賛成が反対を上回り、改正しない理由をなくしたことになります。
2004年には、日本は、条約不履行で、
ついに5回めの勧告を、国際連合から受けています。

婚外子差別についても、くりかえしの国連の勧告があります。
1998年には、「婚外子の相続権は嫡出子の半分と規定した
民法900条4号のような法律の規定が差別を明示的に容認していること、
および公的書類において婚外子としての出生が記載されることを、
とりわけ懸念」と、かなりはっきりと非難されています。
http://www.geocities.co.jp/NatureLand/2255/page019.html


ほかの条約批准国は、つぎつぎと、選択別姓の導入や、
婚外子差別の廃止を実現して、国際連合に成果を報告しています。
そんな中で、日本だけ、なにもしない状況が続くなら、
条約を守らない国、人権水準の低い国として、
国際社会から信用をなくすことにも、なりかねないでしょう。

「女子差別撤廃条約」と「子どもの権利条約」は、
どちらもはっきりした罰則規定はないので、
民法改正を、いつまでも先送りにすることも、できなくもないです。
しかし、国際連合からの直接の罰則はなくても、
特定の国(ぐに)や国際機間から、なんらかの不利な扱いを
受けることは、じゅうぶん考えられることです。

たとえば、日本では、死刑が採用されていますが、
欧州連合(EU)は、これを強く批判していて、
今後も死刑を廃止しない国に対しては、
具体的な措置に出ることも、検討しているようです。
民法改正も、いつまでも進展がないままでいると、
外交上、不利な扱いを受けることも、あるかもしれないです。

参考文献、資料
  • 「女子差別撤廃条約」 第4部
    • http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/josi/3b_004.html
      第十六条
      1 締約国は、婚姻及び家族関係に係るすべての事項について
      女子に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとるものとし、
      特に、男女の平等を基礎として次のことを確保する。
      (g) 夫及び妻の同一の個人的権利(姓及び職業を選択する権利を含む。)

  • 「子どもの権利条約」 第2条
    • http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jido/zenbun.html#1-2
      第2条
      1 締約国は、その管轄の下にある児童に対し、
      児童又はその父母若しくは法定保護者の人種、皮膚の色、性、
      言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的、種族的若しくは
      社会的出身、財産、心身障害、出生又は他の地位にかかわらず、
      いかなる差別もなしにこの条約に定める権利を尊重し、及び確保する。

  • 「国連人権規約」 B規約(自由権規約) 第3部
    • http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kiyaku/2c_004.html
      第二十四条
      1 すべての児童は、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、国民的若しくは社会的出身、
      財産又は出生によるいかなる差別もなしに、
      未成年者としての地位に必要とされる保護の措置であって家族、
      社会及び国による措置について権利を有する。

      第二十六条
      すべての者は、法律の前に平等であり、
      いかなる差別もなしに法律による平等の保護を受ける権利を有する。
      このため、法律は、あらゆる差別を禁止し及び
      人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、
      国民的若しくは社会的出身、財産、出生又は他の地位等の
      いかなる理由による差別に対しても平等のかつ効果的な保護をすべての者に保障する。

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