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世界の夫婦別姓

日本だけで生活していると、ほかの国でも、
かならず夫婦同姓と定められている気がしてきます。
実際にはそんなことはなく、じつは世界のほとんどの国で
別姓を選択することが認められています。
苗字の選択の狭い日本は特例なくらいです。

欧米の民主主義国では1970〜1990年代に
家族法の改正が進んで、夫婦別姓が選択できるようになりました。
これらの国では、選択別姓の導入なんて、もう終わったお話でしょう。
2000年代に入ると、アジアでも改正される国が出て来ました。
日本はいよいよ世界から取り残されることになります。


『よくわかる民法改正』という本の11ページのリストを
引用したいと思います。

1. 男女平等と個人の尊厳の見地から、同氏・別氏
(国によっては複合氏も含めて)の選択を可能にする国
東欧や北欧の諸国、オランダ、ギリシャなど。

2. 呼称の自由として、同氏・別氏の選択が可能である国
イギリス、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドなど。

3. (a) 氏不変の原則の下、夫も妻も不変の国
韓国、中国、カナダ・ケベック州、イタリア、スペイン、
中南米スペイン語圏(名+父の氏+母の氏)など。
(b) 夫は不変だが、妻が夫の氏を称したり、
妻の氏に夫の氏を付加することを認める例として、
フランス、ベルギーなど

4. (a) 夫婦の共通の氏として婚氏を定めるが、
定めなかった場合には、それぞれの自己の氏を称する国
ドイツ、オーストリアなど(実質的に1.と同じ)。
(b)スイスでは、夫の氏が夫婦の氏となりますが、
妻は自己の氏を付加することができます。
(c)タイでは、夫の氏による夫婦同氏を強制していましたが、
違憲判決を受けて、実質的に選択が可能な1.に移行しました。


1.、2.、4.(a)、4.(c)は、同氏、別氏が選べる選択的夫婦別姓です。
3.(a)のように、夫婦別氏が強制される国もあります。
3.(b)と4.(b)は、完全に平等ではないですが、
妻が自分の生来の苗字を付加するかたちで、
結婚後の名前に残すことができるので、
まったく残せない日本よりは、進んでいることになります。

アメリカ合衆国の名前闘争

アメリカ合衆国では1970年代に、名前闘争と言われる
選択別姓を求める運動が起こりました。
1970年代の末に認められています。
アメリカ経済が不況に陥って、女性も外で働き続けることが要求され、
ウーマンリブが盛んになったころです。
名前闘争もその一環としてなされたのでしょう。


中国・韓国・東南アジア

東アジアや東南アジアでは、苗字はだれの子かという
出自を表わしていて、ロジア人の父称に近いものです。
したがって、結婚改正という発想がないので、
伝統的に夫婦別姓の国が多くなっています。

中国や韓国の夫婦別姓は、女性は家に入れないという
封建的な儒教思想がもともとはあったのでした。
現在では法律や戸籍制度が改められ、
男女平等的なものに意味付けが変えられていますカナダ・ケベック州

カナダのケベックも夫婦同姓の国でしたが、
1982年12月から、個人主義と男女平等の見地にもとづき、
夫婦別姓が強制されるようになりました。
家族法改正以降に結婚したカップルは、
かならず夫婦別姓となっています。
子どもの苗字は、父母のいずれかから選ぶようになっています。


スペイン・ラテンアメリカのスペイン語圏

スペインは伝統的に夫婦別姓の国です。
子どもの苗字は、父親と母親から、それぞれひとつずつ採ります。
ラテンアメリカのスペイン語圏は、植民地統治時代の
影響であることは、言うまでもないでしょう。


タイ

タイでは、ヨーロッパ近代の家族法の影響で、
夫の姓で夫婦同姓が強制されていました。
21世紀になって、違憲判決を受け、2005年1月から
夫婦別姓も選択できるようになりました。
また夫婦同姓のときも、夫と妻のいずれの苗字でも
選べるようにもなっています。


トルコ

トルコも、ヨーロッパ近代の家族法の影響で、
夫の姓で夫婦同姓が強制されていました。
2001年に家族法が改正され、妻の苗字を
結婚後も残せるようになり、3.(b)型と同様になっています。

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