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07年都知事選の議論について 国民健康保険証の取り上げ 国保証取り上げ |
県ではなく市町村の業務
「国保証取り上げ」とは、保険料の不払いが1年以上続いた場合、 保険証のかわりに「資格証明証」が交付されるものです。 保険が効かなくなるので、医療費が実費となり、 負担がきわめて大きくなります。 もともとは、一部の自営業者のように、 保険料が払えるのに払えない人への催促のためですが、 生活が苦しいゆえに保険料が払えない人からも、 取り上げることも起きていて、社会問題になっています。 07年3月2日の「赤旗」では、浅野県政によって、 宮城県における国民健康保険証の取り上げが急増したと言う、 志位委員長のコメントが載せられています。 ======== 志位氏は、前県政と比べ浅野県政の福祉切り捨てで際立ったものとして、 前県政では国保証取り上げがゼロだったが、 〇五年には二千三百三十世帯になったことを告発。 ======== 03年3月8日の「赤旗」東北版でも、浅野県政が市町村に 強制したという主旨のことが書かれています。 ======== それから国保証の取り上げも、ずいぶん冷たいやり方をやっています。 県は国の言いなりで、市町村に取り上げをさせてきたのです。 ======== これは、AMLの議論の中でも、指摘されているのですが、 じつは国民健康保険法9条で、市町村の業務と定められています。 都道府県には権限も業務も、法的に定められていないですから、 直接的には浅野氏のせいではないですよ。 これを「浅野県政の福祉切り捨て」とか、 「県は市町村に取り上げをさせた」などという、 「赤旗」の志位発言は、わい曲されていることになります。 |
国の法律にもとづいた全国的なこと
東本氏の反論では、他の年度や他県のことを調べています。 「資格証明書」の交付数が、国保証取り上げの数に当たるので、 そのデータを探し出しています。 「被保険者資格証明書交付世帯数(市町村国保)」(PDF) 東北6県だけグラフにすると、つぎのようになります。 どの県も2002年のあたりから増えはじめていて、 宮城県だけの特種事情でないことがわかるでしょう。 赤丸で囲ったのは、「05年の宮城県で2330世帯」という 「赤旗」の志位のコメントに出てくる数字です。 他県や他の年度のことには触れず、このデータだけ出して、 宮城県だけが、とくにひどいかのような印象を 「赤旗」は与えているというわけです。 国保証取り上げが増えてきたのは、全国的なことです。 これは、国民健康保険法が2000年に改正されて(参照)、 資格証明書の交付が、市町村に対して義務付けられたからです。 もちろん国で定めた法律ですから、県政のせいではないです。 それから、「前県政では国保証取り上げがゼロだった」 などと「赤旗」は言っていますが、 法律が改正される前ですから、当たり前のことです。 これを浅野氏のせいで、取り上げがひどくなったかのように 言うのですから、悪質と言わざるをえないです。 |
滞納者に対する取り上げの比率
AMLの議論では、滞納者数に対する、 資格証明書の交付数の比率が指摘されます。 この比率が大きいほど、保険料不払いの人から 容赦なく保険証を取り上げていると言えるからです。 「「都道府県別滞納世帯数」(平成18年6月1日)」を、 参照したとありますが、おそらくつぎのページの 「(参考7)」の表の、C/Bを計算したものと思います。 (以下の表は平成19年度なので、若干数字が異なる。) http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/01/h0116-1.html つぎにしめすように、宮城県(宮城県下の市町村)は、 全国的に見ても、資格証明書交付の比率は低くなっています。 (平成19年6月1日で4.17%、すくないほうから8位) 宮城県(下の市町村)は、他県とくらべて 保険証の取り上げを遠慮していることになりそうです。 このデータを見ると、東京都が4.50%で、 11位となっていて、宮城県とあまり変わらない、 すくない数値であることにお気付きかと思います。 つまり、国保証取り上げにかぎって言えば、 福祉を目のカタキにしているはずの、 石原都政でさえ「慈悲的」となってしまいます。 すくなくとも、石原と比較できる尺度ではないわけで、 国保証取り上げの数で、宮城県の福祉を批判した「赤旗」が、 そもそもおかしかったのではないかと思います。 |
最後に
国保証の取り上げが増えたのは、国民健康保険法が改正されて、 保険料滞納者への資格証明書を交付が、 市町村に義務付けられるようになったからです。 共産党は、国保証の問題には、長いあいだ取り組んできたと、 言うのですから、県政と直接関係ないことも、 宮城県だけの事情でないことも、当然知っているでしょう。 その上で、「浅野県政のせいで国保証の取り上げが増えた」 などと言ったことになります。 国保証に関する業務が、県ではなく市町村であることは、 ちょっと調べればわかることなのですが、 ご存知ないかたも、たくさんいらっしゃると思います。 それで「赤旗」であのように言われると、 「そうか浅野県政は、そんなに福祉に冷たかったのか」と 信じこまされることになります。 |
参考文献、資料
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