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07年都知事選の議論について 税金が高くて福祉費がすくない? |
ご都合主義的なデータの比較
都知事選の4年前、03年3月8日の「赤旗」東北版に出てくる、 住民税と福祉予算の関係のことも、議論になりました。 宮城県の福祉に関して、志位氏の演説が紹介されています。 ======== 総務省が出している『統計でみる県のすがた』 という行政水準の比較があります。 私は、東北六県の比較をしてみました。 そうしますと、宮城県は一人当たりの住民税は、六県中一位です。 みなさんは一番税金を払っていらっしゃる。 これは、ぜひ覚えておきたいことです。 ところが一人当たりの民生費、つまり福祉費は六位、最下位です。 教育費も六位、衛生費も六位、 つまり巨大開発病のしわ寄せがここにきているんです。 ======== 志位氏が参照したという、『統計でみる県のすがた』は、 浅野氏の前県政の、1990年からのデータが出ています。 東北6県をグラフにするとつぎのようになります。 順位が低いのがケシカランというなら、宮城県は前県政から、 東北6県で最下位に近い下から2位でしたよ。 こちらは住民税の比較です。 やはり前県政から宮城県は東北6県で1位です。 ようするに、住民税は東北一高いのに、 民生費は東北ですくないのは、前任の知事のころからであり、 浅野氏の代になってからのことではないのでした。 「赤旗」は、国保証取り上げのときは、 「前県政はゼロだった」(法律改正前だからあたりまえなのに)、 などと言って、前任者と比較しています。 ところが、こんどは前県政との比較はしていません。 これはもちろん、「浅野氏の政策はひどかった」という、 「既成の結論」を言うのに都合がいいように、 データを恣意的に取り出しているからでしょう。 じつにご都合主義的なことだと思います。 |
住民税は全国一律
「赤旗」の志位のコメントを見ていると、 住民税は自治体によって税率が異なり、 宮城県はとくに高いと言っているように見えます。 税金のことにちょっとくわしければ、住民税は全国一律で、 どこの自治体も同じ税率であることを、ご存知でしょう。 したがって、この意味では、宮城県の住民は 「一番税金を払っている」のではありませんよ。 東本氏は、この点を突いてきました。 これは説得力があったようで、共産党サイドの人たちも、 税率が一律というのは、しかたなく認めていきます。 ======== ご承知のとおり、住民税は均等割と所得割とからなっており、 そのうち均等割の税率は全国一律です。 宮城県が特別高いというものではありません。 また、所得割の標準税率も全国一律であり、 これも宮城県が特別高いということはできません。 ではどうして宮城県の住民税がダントツに高いのか? いうまでもなく、東北6県の中で宮城県の個人所得水準が一番高いからです。 所得割の税率が全国一律であるならば、 個人所得水準の高い県の住民税が高くなるのは道理です。 それを志位氏は、「みなさんは一番税金を払っていらっしゃる」と、 あたかも宮城県の税率が他の東北6県に比して一番高いかのように言う。 ======== |
所得と福祉は逆の相関
そのあと、共産党サイドの人たちは、つぎの反論をしてきました。 『さるのつぶやき』というウェブログで、AMLの議論の中で、 東本氏に対する反論として、msq氏が持ってきたものです。 「一番税金を払っている」を、つぎのように「解釈」しています。 ======== 住民税の話も、その税率が高い低いの話をしているのではありません。 住民税はたくさん取っておきながら、 福祉の費用には最低の支出しかしてないとは何事かということなのです。 ======== たくさん稼ぐくらいなら、福祉に頼らなくなって、 福祉予算はかえってすくなくなりそうだと、 察しのいいあなたは、お考えになるでしょう。 上記引用部分は、反論になっていないと思いますよ。 ======== 一般的に言えば、所得水準が低いほど福祉は必要であり、 それに応じて福祉関係の支出も多くなるということになりますね。 つまり、福祉の水準を同一とした場合、所得水準と福祉の必要性とは 理論的に言う限り反比例することになります。 ========(2009年11月06日 04:52) |
無意味な民生費比較
「赤旗」は、「ひとりあたり」にこだわっていますが、 人口が多ければ、サービスの重複が出てくるので、 ひとりあたりの費用がすくなくすみそうだとも、 これをご覧のあなたは、お考えになるでしょう。 宮城県は、東北6県の中では、人口がずっと多いので、 ひとりあたりの福祉予算が、すくなくすむのかもしれないです。 民生費比率(県の財政全体のうち、福祉予算のしめる割合)は、 さまざまな要因がかかわることだと思います。 結局、東北6県で比較をする「赤旗」が、 意味のないことをしていることになりそうです。 ======== 民生費比率について言うと、その自治体の様々な要因が絡むので (所得水準、高齢者比率、産業構造、経済状況…)、 比率が高ければそこの知事が福祉に手厚い善い知事だ、とは限らないですね。 人口規模や年齢構成、産業構造などが似通っている自治体同士で 民生費比率を比較するならまだしも、大都市・仙台のある宮城県と、 所得水準が全国的に下位に位置する県とを比べて 第○位だのと言ってもどれほどの意味があるのかと。 ========(2009年11月08日 16:52) |
最後に
他県との比較ではなく、同じ県の年次の推移でしたら、 もっと意味のありそうなデータになるでしょう。 さきの『統計でみる県のすがた』に、県財政全体のうちに 「民生費割合」が出ているので、つぎのグラフにしめします。 宮城県は、1990年に5.11%でしたが、2000年には7.13%に増えています。 浅野県政下(1993年10月〜)で、福祉に予算が たくさんまわされるようになったであろうことが、 見て取れるではありませんか。 |
参考文献、資料
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