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比例復活当選のしくみ

比例復活当選

衆議院総選挙の「比例復活当選」のしくみがよくわからない、
小選挙区で落選しても、得票率が高いと
「比例復活」することがあるけれど、なんでそうなるんだ?
そういう候補者は、比例の順位がみんな同じだけど、どういうことなの?
と、疑問をお持ちのかたもいらっしゃるかもしれないです。

いまさら人に聞けないのでだまっていた、というかた、
きょうは、ぜひぜひこのコンテンツを読んで、お帰りくださいね。
そんなの知っているよというかたも、あまり知られていなさそうなことも、
すこし書いたので、読むと得をする(かもしれない)ので、
ためしに読んでやってください。

日本の衆議院選挙の議席には、小選挙区と比例区があります。
もともとはべつの議席なので、どちらかだけ立候補でもよいのですが、
おなじ候補者が、両方に重複して立候補することもできます。

「重複立候補」すると、小選挙区で落選しても、
「惜敗率」(当選者の得票に対する得票数の割合)が高いほうから順に、
比例で取った議席を使って当選できるようになっています。
これが「比例復活当選」と言われるものです。


小選挙区は勝者皆取りですから、次点の候補が競っていると、
死票が多くなって、反映されない民意も多くなります。
惜敗率の高い候補者から、比例の議席で「復活当選」させれば、
死票を減らせて、そのぶんの民意を拾えることになります。

比例区は名簿の順位が上のほうから当選します。
この順位は政党が決めるので、有権者が直接候補者を選べません。
したがって、当選してほしくない候補者が名簿の上位にあると、
不本意な選択を迫られることになります。

候補者が重複立候補をしていれば、政党が決めた順位ではなく、
惜敗率という有権者の選択にしたがって当選するので、
有権者にとって不本意な選択が避けられることになります。


候補者にとっても、比例区は名簿の上位の候補者が楽に当選するので、
選挙区を苦労して当選した候補者と比べて不公平があります。
重複立候補にすれば、比例の順位は全員おなじになるので、
このような不公平がなくなることになります。

また、比例復活当選は、惜敗率の高いほうから当選しますから、
選挙区で支持基盤を堅めたほうが有利になり、
選挙に強い候補者が残りやすくなる、という特徴もあります。

さらに比例区は、候補者の順位付けという、
政党や候補者にとって、おおよそ楽しくない作業があります。
(組織が未熟であれば、順位をめぐって争いも起きるでしょう。)
そこで全員が、小選挙区と重複立候補すれば、
比例区はおなじ順位で届け出るので、順位付けをしないですみます。


このように、重複立候補と比例復活当選を使うことで、
比例区と小選挙区の欠点を補い合える、ということです。

はじめに、小選挙区と比例区の重複立候補を
効果的に使ったのは旧民主党で、1996年の総選挙でした。
結党したばかりで、選挙基盤が弱い候補者が多かったので、
なんとか救済させるための、苦肉の策でもあったようです。

取れた議席は52で、改選前と同数で伸びなかったのですが、
自民と新進の2大政党のはざまに埋もれず、第3極の地位を保ちました。
とくに、93年の選挙で初当選した議員を、かなりの人数、
復活当選で救い上げられたのが、大きかったようです。

失敗したのは新進党で、比例区を組織力のある
公明党出身の候補者にゆずって、重複立候補をさせなかったのでした。
そのため、小選挙区で立候補した、前職議員の多くが惜敗して、
ばたばた消えるというダメージを受けた上、
議席も減って過半数にはるか届かず、政権が取れなかったのでした。


重複立候補による復活当選の利用はうまくいったというので、
現在の民主党になってからも、さかんに使うことになります。
復活当選の議席は、支持基盤の弱い新人候補のために使い、
前職は自前の支持基盤を堅めて、自力で選挙区当選する
努力をしてもらうことで、選挙に強い候補者を育てるとともに、
党のリソースを新人候補に集中させて、効率をあげようということです。

この方法の悩みは、自前で支持基盤を堅める努力をおこたり、
いつも復活当選に頼る候補者が出てくることです。
郵政選挙の大敗で、「選挙は風まかせで、票堅めをおこたるからだ」と
考えたのか、復活当選が連続3回になったら、
もう公認を出さないという、いささか過酷なルールを決めました。

(このあたりは、『民主党10年史』の197-200ページにくわしい。)


民主党は、比例区の定数180のうち80だけ減らして、
100にすることを、選挙公約で決めています。
この思惑はいろいろありそうですが、わたしが想像するに、
比例区を復活当選専用にしたいのもあるのでは?と思います。

民主党は、内規で原則として、比例単独の立候補はさせず、
比例の議席は、復活当選にしか使わないことにしています。
公平のために、比例区の名簿の上位で楽に当選させず、
すべての候補者に等しく、選挙区で苦労してもらうためです。

ところが、小選挙区300に対して、比例区の定数が180あると、
取れた議席を全部復活当選に使っても、まだあまりがちなようで、
やむをえず、比例の名簿の下位を埋めておくみたいです。
定数が100ならそんなに余らず、ちょうどよいということなのでしょう。

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