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あまりに保身的な
身内に対する攻撃的態度

あまりに保身的な(3)

自己保身的な人というのは、敵対者に対しては、
筋を曲げてでも妥協や譲歩をして、こびていくものです。
これとは逆に、自分の保身のためなら、
「身内」に対しては、無遠慮に攻撃的になります。
菅政権の場合、小沢一郎氏に対する扱いで、
それがとてもよく現れています。

小沢一郎氏とそのもと秘書たちには、政治資金に関して、
虚偽記載があるという、政治資金規正法違反の疑いが
かけられていて、検察から起訴されています。
ところが、この規制法違反は証拠がふじゅうぶんで、
小沢氏たちは、無実を主張しています。

実際、検察側の証拠が相当数使えないとして、
却下されるなど、規制法違反は根拠薄弱だという
状況証拠はいくつもあるのでした。
となれば、菅政権としては、小沢氏やもと秘書たちの潔癖を、
世論に対してしめすところだと思います。


ところが、菅政権や民主党の執行部には、
小沢氏ともと秘書たちの潔癖をしめそう、
という動きはまったくないのでした。
それどころか、小沢氏は「政治とカネ」の問題を
解決していないとして、党員資格停止処分にするのでした。

これは、世論が「小沢はカネに汚い」と思っているから、
という理由であり、結局筋を通そうとしないで、
世論に迎合したことになります。
党執行部としては、「小沢を切れば支持率が回復するだろう」
という判断もあったのだろうと思います。

こうした場合は「疑わしきは罰せず」が大原則です。
この大原則を、法律を作る立場である国会議員たちが、
無視したのですから、じつにのっぴきならないと言えます。

民主党の規則では、党員資格停止処分は最高半年、
という期限がついているのでした。
ところが今回の小沢氏の処分は、無期限としたのでした。
(のちに裁判が終わるまで、となる。)
目先の都合のために党則にない処分を下したわけで、
これは法治主義の観点から大問題だと思います。


小沢氏を排除するやりかたが、あまりにえげつないので、
党内や政権内からも批判が相次ぎました。
たとえば、鳩山由紀夫氏は、党内融和、挙党一致が大切だ、
「身内」をもっと大切にしなければならないと、
くりかえし主張をしてきたのでした。

亀井静香氏も、「仲間内」で争っているのに、
「こっちと仲良くしよう」と野党相手に誘っても、
うまくいくはずがないと、菅政権の姿勢を批判しています。
そればかりでなく、菅政権が小沢氏を排除する様子を、
「連合赤軍の総括のようだ」とまで言ったりもしています。

とうとうここまで言われたか、という感じですが、
保身のために「身内」を排除していくのは、
実際に「サヨク」にありがちなことだったりします。
この点にかぎっては、「無駄にサヨクらしい」と言えるでしょう。

この「政治とカネ」に関することで、
小沢一郎氏が、政治倫理審査会に出席する問題があります。
小沢一郎氏は、ずっとこの政倫審への出席を
拒否してきたのですが、その理由が2010年の暮れに出された
回答書で述べられています。

「岡田幹事長の要請に対するご回答」(PDF)
「小沢氏、政倫審拒否の回答書全文」

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なぜなら政治倫理審査会の審査や調査は、
立法府の自律的な機能であり、司法府への介入を避けるなど
慎重なものでなければならないからです。
しかも既に指定弁護士が起訴状の作成に入っており、
間もなく始まる刑事裁判の中で、
私は清々粛々と検察審査会の起訴議決の可否も含めて闘い、
事実を明らかにし、潔白を証明して参ります。
========

この回答書はとてもクリアでわかりやすいですから、
わたしが解説する必要はないと思います。
政倫審はもともと立法府の自立的機能なので、
すでに司法で解決をはかると決まっていることに対して、
使う必要はない、ということです。


のちに小沢氏は、政倫審を出席することにしますが、
これは野党各党が国会審議に応じないからです。
法案の審議をするという、国民のための仕事を
滞らせてはならないので、そのためなら
妥協してもいい、ということなのでしょう。
小沢氏らしい判断だと、わたしは思いますよ。

これには、仙谷官房長官の辞任も要請しています。
問責決議が出ている仙谷氏も官房長官をやめないと、
野党は国会の審議に応じないというので、
理不尽でも仙谷氏も妥協しろ、そうしないと意味がない、
ということなのでしょう。
菅政権はしかし、仙谷氏の辞任を拒否したのでした。

小沢一郎氏は、菅直人氏と違って、世論や政敵にたたかれても、
不利な情勢になっても、安易に保身に走らず筋を通す、
ある意味あたりまえのタイプなのだと思います。
そうとなれば、菅氏の自己保身を共有するはずもなく、
膠着状態になるのも無理もないことだと思います。


いずれにしても、小沢氏には、政倫審に出席しない
明確な理由があるのですから、民主党としては、
小沢氏が政倫審に出るいわれがないことをしめし、
国民や野党に対して、筋を通すところだろうと思います。

ところが、菅政権は、「小沢氏は政倫審に
出席するべき」の一点張りを続けるのでした。
「世論が言うから」というだけで、具体的な理由はありません。
説明責任を果たさず、世論に流されるまま
筋を曲げる保身的体質が、やはり出ていると思います。

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