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民法改正運動の展開 - 2002年後半 家裁認可制法案(1) 例外的に夫婦の別姓を実現させる会 |
2002年の前半の、推進派の活動は、これまでになくさかんでした。 反対派でさえ、こんどこそ可決するかもと、あせりを見せたくらいです。 しかし、反対派議員たちの抵抗は、やはり頑迷強固で、 譲歩する気配さえ見られず、選択別姓法案の提出は、 またしても法務部会で握りつぶされて、断念となりました。 02年7月ですが、反対派の譲歩を引き出すために、 自民党の推進派グループは、こんどは、 「例外的に夫婦の別姓を実現させる会」なるものを発足させました。 全部で44名の議員が賛同していて、つぎのページにリストがあります。 http://www.noda-seiko.gr.jp/old_data/hitokoto/140724.html この「例外的に夫婦の別姓を実現させる会」の最大の特徴は、 家庭裁判所の認可(!)があれば、別姓が選択できるようにすることです。私たちは、夫婦が特別の事情でそれぞれ旧姓を名乗りたいと希望する場合、 家庭裁判所の許可があれば例外的に夫婦別氏の結婚を 法律婚とする道を開きたいと思います。ここで推進派グループは、この家裁案を「例外制法案」と呼んでいます。 しかし、02年4月に出された、家裁の関与のない案とまぎらわしいので、 わたしのサイトでは区別のために、家裁の認可のない案を 「例外制案」と呼び、家裁の認可の必要な案を、 「家裁案」「家裁認可制案」のように呼ぶことにしておきます。 家裁の許可が降りうるケースも、「職業生活上の事情」 「祖先の祭祀(さいし)の主宰」「その他」の、3つとされています。 (「祖先の祭祀」とは、いわゆる家名の存続のことです。) かなり限定されているのですが、それでも野田議員に言わせると、 「党内でギリギリ認めてもらえる案」なのだそうです。法案骨子を簡単に取りまとめると、以下のようになります。 1、 夫婦の氏 (2)別氏夫婦となるためには、職業生活上の事情、 祖先の祭祀の主宰その他の理由により婚姻後も各自の婚姻前の氏を 称する必要がある場合において、家庭裁判所の許可を得ることができる。結婚とともに苗字が変わると、職業上の不利益があることは、 おおかたの反対派もしぶしぶ認めているところです。 これと祖先の祭祀は、反対派でも受け入れられると考えたのでしょう。 3つめの「その他」は、予期できない事態も、とうぜん起こりうるとして、 それに対処するため、柔軟さを持たせたのだと思います。 それにしても、結婚するのに裁判所の許可がいるなんて、 なにやらすさまじい事態になってきたようですよ。 |
「例外的に実現させる会」の会長、笹川尭議員のウェブサイトには、 法案全文などの資料もあって、くわしい概要が書かれています。 ふたつ目の「笹川代議士と夫婦別姓」の項目に、 例外性導入の背景と、家裁認可を必要とする主旨が書かれています。 http://www.e-sasagawa.com/policy/11-3.html『男女共同参画社会』の考え方への急激な反発が強まっている昨今、 婚姻制度や家族観に直接触れる『夫婦別姓』は、 とりわけ強烈な拒否反応にさらされる問題であると思います。 『家族崩壊が進む』『家族の一体感を失う』という反対論は根強いですが しかし、現在のそしてこれからの『家族』とは何なのか。 今あらためて『家族』の在り方を 見つめ直す必要があるのではないでしょうか。 そして、私の考える『男女共同参画社会の創造』には 『夫婦別姓』も必要な制度であろうと考えています。 しかしながら、だれにでも『夫婦別姓』を許してしまう 内容の法案であれば、意図するところとは別の方向に 向かってしまう可能性もあります。 そのため、私たちの提出した法案は、家庭裁判所の許可を受けた 夫婦にだけ『例外的』措置として認める内容になっております。 どうか国民の皆様のご理解、ご協力を賜りたくお願い申し上げます。「選択制」では、「意図するところとは別の方向」だそうですが、 これは具体的には、どういうことなのでしょうか? 家裁認可なんて、別姓選択にやたら不公平な制度のほうが、 男女共同参画社会の意図とは、ずっと「別の方向」だと思います。 夫婦別姓が必要でありながらも、反対派の抵抗がはげしいことは、 前の段落で述べられていて、これは正直だと思います。 ところがあとの、家裁認可制導入の動機と結び付けられてなくて、 じつは、反対派への譲歩のためだとまでは、言えなかったみたいです。 結局、はっきりした理由はまったく述べられず、 なんのための家裁認可か、読んでも「ご理解」できなくなっています。 やはり正当化できる根拠が、挙げられないのでしょう。 かなり苦し紛れに書いたのではないかと、わたしは想像します。 |
この家裁認可制案は、推進派のオリジナルではなく、 反対派のほうから、言い出したものらしいのです。 その反対派は、西川京子議員で、『諸君!』の02年3月号で、 「クタバレ夫婦別姓」という、座談会記事を書いたひとりです。 http://www.lalalaw.com/contents/news/news020701a.htm政府が今国会提出を目指した改正案に関しては 「家裁が関与するなら賛成できるが、政府案は名称だけ『例外的夫婦別姓』で、 実際は歯止めがない」(西川京子衆院議員)などの指摘もあった。野田聖子議員のサイトに、書かれている内容と比べてみると、 4月に開かれた法務部会で、家裁の許可があれば賛成すると、 西川京子議員は、おそらく発言したものと思われます。 http://www.noda-seiko.gr.jp/old_data/hitokoto/140724.html第二に、法務部会で、夫婦別氏制度反対の議員から 「婚姻において夫婦が同氏であるとの原則は崩さない。 別氏はあくまでも例外であり、その例外性が明らかに判るように、 例えば家裁での許可を要件とするような法改正であれば賛成できる」 という発言があったからです。この家裁案に賛同した反対派が、ほかにどれだけいたのかはわからないです。 高市早苗議員のように、「『戸籍上、家族の姓は同一であるべきだ』 として同調する気配はみせていない」反対派も、あいかわらずいらしゃります。 それでも反対派のひとりが、はっきりした譲歩の条件を出したので、 野田聖子議員たち推進派は、それを受け入れることにしたのでしょう。 |
ところで、肝心の西川京子議員は、どういうわけか、 「例外的に実現させる会」の賛同議員に、加わっていないのです。 自分が言い出した考えにもとづいて、作られた案なのですし、 とうぜん賛成していいはずですが、いったいどうしたのでしょうか? さすがに、めだった反対活動はしなくなったみたいですが、 さりとて積極的に、賛成しているのでもないようです。 わたしの「邪推」ですが、まさか本当に推進派たちが家裁案なんて、 奇抜なものを受け入れるとは、思わなかったのかもしれないです。 あるいは、こんな突拍子もない条件でもつければ、 選択別姓をあきらめるのではないかと、思ったのかもしれないです。 うっかり口をすべらせて、言質を取られたのだと思います。 ところが、野田議員たち推進派は、家裁案で妥協してしまったのでした。 反対する理由がなくなったので、不本意だけど、 だまらざるをえなくなった、ということかもしれないです。 (願わくば、かかる不当すぎる条件でもくじけない、 苗字を変えたくない人たちの熱意を、感じ取ってほしいですが。) だいたい、家裁が審査すればだいじょうぶとか、 審査がなければ危険だといったことに、根拠はまったくないです。 西川議員も根拠を出して、家裁認可の安全性をしめしたのでもないようです。 場当たり的な、思いつきだけで言ったのだなと、わたしは思いましたよ。 今後は反対派たちも、もっと用心深くなるだろうと思います。 どんなにエキセントリックでも、「この条件なら賛成してもよい」と、 反対派の側から、不用意に言い出すことはしなくなるでしょう。 それから、もうひとつ、「例外的に実現させる会」の 賛同議員を見てみると、特筆するべききわだったことがあります。 それは、山中貞則議員が最高顧問として、加わっていることです(!)。 このかたは、「オレの眼の黒いうちは、絶対に認めない」と、 いきまいた、筋金入りの長老反対派だった議員ですよ。 いったいぜんたい、なにがあったのでしょうか? いくつか「転向」の理由を、想像できなくもないのですが、 根拠が見つけられないので、ここでわたしの「邪推」を 述べるのはやめておきますね。 |
参考文献、資料
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