トップページ民法改正運動の展開

民法改正運動の展開 - 2006年
無規範なシニシズム

無規範なシニシズム 無規範なシニシズム(2) 無規範なシニシズム(3)

とつぜんですが、選択別姓の市民団体の、
体質について書いている、こんなブログ記事があります。
「夫婦別姓を選ぶ権利『だけ』を求める団体の無規範なシニシズム」
http://macska.org/article/123

あるメーリングリストで、その市民団体のメンバーと、
婚外子問題をどう扱うかについて、議論になったのですが、
その対応が、とても不誠実だったようで、
そのときのようすについて書かれています。

この市民団体は、民法改正から、婚外子差別撤廃を切り離して、
選択別姓の実現だけめざしているそうです。
ウェブサイトがあるのですが、無断リンクと、
内容の無断転載を、おことわりしているという、
なんとも奇妙なサイト運営をしている、とあります。

これらから察するに、かかる団体は、
「夫婦別姓選択制実現協議会」と思われます。
ちがったら、「まことに失礼しました」だけど、
ほかに、あてはまる団体があるのかどうか、わからないです。
べつの団体だったとしても、エントリで言われていることは、
「実現協議会」にも、そっくりあてはまるし、
おなじ事態になったら、おなじような反応をするでしょう。


このウェブログの作者は、『バックラッシュ!』という本の、
著者のひとり(5章1節を担当)で、
フェミニズムやジェンダー論に、くわしいかたです。
(林道義センセイと、議論もしていました。)

民法改正運動には、かかわっていなくて、外部のかただと思います。
(「わたしは婚外子差別の問題についてよく知らなかった」と、
本文の中で書いている。)
しかし、市民運動は、直接あるいは間接に、
かかわったことが多いらしく、たくさん見ているようで、
かなりくわしい様子です。

日本の民法改正運動には、あまり関係したことがないせいか
エントリ作者のかたも、保守政党の政治家(別姓反対派)も、
話せばわかるはずだと、思っていらっしゃるようです。
残念ながら、反対論者たちの、攻撃性や頑迷さを、
過小評価しているもののようです。

わたしのサイトを、ご覧になるかたでしたら、
おわかりだと思いますが、保守政党の政治家、
(というより、正確には「選択別姓反対派は」ですが)
常人の想像を絶するほど、頑迷きわまりない、
頭の固い人たちがほとんどです。

彼ら反対論者たちが、話してわかる人たちなら、
法制審議会から、10年近くも経っているのに、
民法改正実現の見込みがまったくない、なんてことはないでしょう。
このあたりは、たとえば、「自民党法務部会の実態」や、
「反対派と議論すると...」などを、ご覧になってみてください。

 
じつは、はじめから話し合う気はなく、
「2ちゃんねる」のような匿名性の高いサイトから、
反対派をたくさん呼び寄せて、掲示板を荒らすだけのこともあるし、
それで、閉鎖になったサイトもあります。
反対派とインタラクティブになると、生産性の低い対話で、
膨大な労力を使わされ、本来なすべきことができなくなるので、
これを避けたいと思うのは、無理もないことだと思います。

また、政治活動にかかわるため、
反対派たちに、知られたくない情報もあります。
パブリックコメントや、モニタのような意見募集があると、
組織力にものを言わせて、大挙して反対意見をポストして、
あたかも世論が、民法改正反対に偏っているかのように
見せかけることも、実際にやることがあったりします。

わりあい小規模なことですが、公明党のサイトの、
夫婦別姓の意見募集のコーナーには、
賛否を問うアンケートが、以前あったのでした。
ところが、反対派たちが大挙して、「組織票」を入れて
狂わせたので、閉鎖になってしまったのでした。

民法改正反対派というのは、とても攻撃的で、
推進派議員に、大量のFAXを送りつけたり、
さらには、署名の数の偽称さえして、示威行為を働くくらいです。
なまじっか情報を知ったら、どんな妨害に出るかわからないので、
反対論者たちに対して、自衛的になるのは、
ある程度はやむを得ないのだと思います。


だからと言って、無断リンク、無断転載おことわりと、
サイトに書けばいいのかというと、そんなことはぜんぜんなくて、
遠慮のない人には、なんら役に立たない対処です。
(たとえば、こんなふうに。)
ことわり書きに効果があるかどうかは、
見た人の配慮に頼ることなのは、言うまでもないでしょう。

それに、このエントリ作者のかたも、そう思ったようですが、
引用やリンクを制限することで、閉鎖的で非民主的だと、
思ってしまうかたが出てくることもあります。
そこまでいかなくても、無断リンクや無断転載をことわることは、
ウェブの世界では、一般的ではないので、
おかしな人たちだという印象を、与えかねないでしょう。

それでも良心的な(?)かたは、事情を理解して、
リンクや転載を遠慮するでしょうし、それだけでも、
素性の怪しい人たちに見つかる可能性は、だいぶ減ると思います。
ことわり書きだけでも、結構効果があるのだと、わたしは思います。

「無規範なシニシズム」は、反対論者たちの攻撃性を、
過小評価していますが、ゆえに事情を知らない部外者の、
的外れな言いぶんかというと、そんなことはまったくないです。

市民団体の体質について、核心を突いていて、
これを見て、「やはりそう思うか」と、わたしは思いました。
ごく短いやりとりと思われるのに、よくぞここまで、
市民活動家たちの本質を、えぐり出したという感じです。


自民党の、民法改正の推進派議員グループは、
21世紀に入ったあたりから、党内に根強い反対があるので、
民法改正から、婚外子問題を切り離して、
選択別姓の実現だけを目標にしました。
そうすれば、頑迷な反対派からも、
賛成が得られるかもしれないと、考えたのでしょう。

インターネットで活動する、民法改正の推進派も、
このころには、自民党議員を重点的に、
働きかけていたのですが、これにともなって、
自民党の方針を、全面的に支持するようになりました。
自民党は、前にお話たしたような、頑迷きわまりない
反対派議員がいるので、よく思われようとして、
彼らにこびたことばかり、言うようにもなってきました。

婚外子差別撤廃についても、はっきり賛成すると、
自民党から反発を買って、選択別姓まで反対されそうだ、 
という意識が、市民団体にはあるようです。
はっきり言うと、排他的と思われるので言えないですが、
内心では、選択別姓実現のために、婚外子を切り捨てたいのでしょう。

MLでは、別姓推進派の活動が、婚外子差別を助長すると、
婚外子問題にかかわっている人から、言われたとあります。
これはまさに、この「言いたくないこと」にかかわる、
批判だったにちがいありません。
それで、婚外子を差別していないと、口では言いながら、
現実には、差別を助長しかねないことをする、
ジレンマにおちいるのだと思います。

こうした言動の背景には、「自民党が与党である以上、
自民党が賛成しなければ、別姓実現はありえないからしかたない」
という、ドグマのような信念があります。

市民団体の、ウェブサイトを見ると、
「生き方の選択」、「個人の幸せの追求」といった
主旨のことが、ひとことも書かれていないとあります。
これらは、自民党の反対派は、「行き過ぎた個人シュギ」として、
忌み嫌うと思われていますから、市民団体の人たちも、
自分たちとこれらとは、無縁であるとするのでしょう。

エントリ作者が、「この団体を保守的と感じた」ゆえんは、
自民党にこびたところに、あるのでしょう。
そして、「彼女たちの戦略は成功している」と言うのですから、
市民団体の目的は、じゅうぶん達成しているようです。


保守からリベラルまで、幅広い人たちと協力すると、
市民団体のかたが、MLで言ったそうですが、
実際に協力するのは、彼女たちの信奉する方針を、
受け入れる人たちにかぎられることは、想像に難くないでしょう。
自民党の反対派に、嫌われそうだとか、
自分たちの方針に都合が悪いと思ったら、「戦略」を理由にして、
無関心や非協力、ときには排除を、正当化するのだと思います。

保守かリベラルかで、判断してはいないですから、
その意味で、「幅広い人たち」は、うそではないでしょう。
それは、ここで見たように、排他的なこともあるくらいで、
「幅広い人たち」というのは、多分に掛け値があることになります。

自分たちだけ、自民党から認められたいという気持ちと、
「多様性を認めて寛容」と、思われたいというはざまで、
往生するようすが、エントリ作者には、場当たり的な
言いつくろいと映り、「無規範なシニシズム」だと、
感じさせたもののようです。

実際には、この市民団体の「戦略」自体、
成功しているとは、とても言えない状況にあります。
いまの方針になってから、5年くらいになりますが、
選択別姓実現の見込みは、まったくありません。
彼女たちが、自民党に気に入られようとして、こびたところで、
反対派議員たちの頑迷きわまりなさは、どうにもならないようです。

それどころか、民主党政権に無関心になるなど、
現状維持に加担するもととなったり、
ここでお話した、婚外子差別撤廃の切り捨てのように、
運動内の反対意見を押さえ付けたりして、民法改正運動の中に、
分裂を招くといった、悪影響もおよぼしているくらいです。


MLの議論の最中、「批判のための引用をするな」と、
団体のかたが言ってきたとあります。
このMLの参加者の顔ぶれや、批判の内容から、
「反対論者からの自衛」でないことは、あきらかです。
(市民団体にとって、反対論者よりも、自分たちの運動に
批判的な賛成派のほうが、都合が悪いくらいなのだ!)

また、市民団体のかたは、「無規範なシニシズム」を、
「中傷」と決めつけたと、コメント欄にあります。
「評論家はいらない」とか、呪文のように唱えている、
出来合いのお答えでは、うまく返せなかったのでしょう。

このあたりには、「自分たちは、選択別姓実現のために
活動しているのだから、どんな失敗をしても、批判することは、
実現のマイナスにしかならないので、黙認せねばならない」
という選民意識もあるように、わたしは思います。

わたしは、このMLには参加していないので、
どんなやりとりだったのか、詳細まではわからないです。
それでも、わたしは、民法改正から、婚外子を切り捨てたことを、
婚外子問題にかかわっている人は、どう考えたのか、
間接的ながら、それを見ることができました。

また、民法改正運動に、かかわっていないと思われる、
外部のかたから、ネットの市民団体の活動に、
批判があったのを見たのも、はじめてでした。
エントリの作者も、たまたまMLで議論になったから、
知ったような感じで、そうでなければ、絶対に部外者には
知りようのない、「民法改正運動の内幕」だと思いますが。


さらに、つぎのページも、ご覧いただくとよいでしょう。
これらは、「実現協議会」とは、べつの団体である、
「氏名を大切にする市民の会」のことを書いていますが、
活動方針はまったくおなじで(やりかたはもっとえげつない)、
ここでのお話にも、ほとんどそっくりあてはまります。

「婚外子差別撤廃の切り捨て(1)」
「夫婦別姓の法律学-雑感 2001年11月14日」
「非嫡出子(婚外子)のハナシ5 民法改正と夫婦別姓」

「民法改正運動の展開」にもどる
トップにもどる


inserted by FC2 system