トップページ民法改正運動の展開

民法改正運動の展開 - 2003年後半
公明党哀歌
自民党のたりない議席を埋める公明党

公明党が猪口大臣へ要望書

自民党と、連立政権を組んでいる公明党は、民法改正のために、
いったいなにをやっているのかと、いぶかしく思うかたも、
これをご覧になっている中には、いらっしゃると思います。

公明党は、民法改正を実現することを、
民主党よりも、はっきりと、マニフェストに書いています。
そして、政権与党に加わっているのですから、
本来なら、自党がはっきり示している政策を、
実現するために、積極的に働くのが本来でしょう。

ところが、民法改正は、自民党案に相乗りすると決めていて、
それ以上はなにもせず、丸投げ同然になっているのです。
公明党は、独自の法案もあるのですが、それを主張することもなく、
自民党が、党内合意にほど遠いというので、
「こちらから提案する状況ではない」と言っているくらいです。


自民党が、党内で合意にいたらないのは、
何度も書いているように、法務部会で、反対派議員たちが、
らんちき騒ぎを起こして、反対しているからですが、
それを公明党が、批判している気配もないみたいです。
また、与党の事前審査は、自民党の議員だけで行なわれ、
公明党の議員は、かかわっていないようです。

公明党のような、中小規模の政党が、
キャスチング・ボートとして、連立政権に加わっているのですから、
自民党の動きに、適時、軌道修正をすることが期待されます。
実際、公明党は、それをスローガンとしてかかげています。
ところが、民法改正に関しては、自民党に対して、
これといった働きかけなく、軌道修正はかけていないのでした。


この無力ぶりは、民法改正法案だけではないです。
たとえば、永住外国人に参政権を認める法案も、公明党は推進していて、
1999年の、自民、自由、公明の3党の、政権政策合意でも、
共同提案として成立させると、はっきり書いています。

そして、こちらも、非協力的な自民党を、どうすることもできず、
これといった進捗もなく、こんにちまで来ています。
永住外国人参政権の法案は、公明党は、過去に5回、
法案提出しているので、民法改正よりはましとは言えます。
しかし、まともに審議にされず、かたちだけの提出を、
くりかえしている感じです。

自民党のたりない議席を埋める公明党
ほかにも、まだあります。
山口二郎著の、『戦後政治の崩壊』によると、
密室の謀議でできたと言われている森政権にも、
政策面で森と正反対の、小泉政権が誕生したときにも、
公明党は、意義を唱えなかった、とあります。
このあたり、山口二郎氏は、「自民党のご都合主義にしたがって、
与党の地位を守っている」(73ページ)と、手厳しく批判をしています。

より重要性のある福祉政策では、公明党は、連立与党にいることで、
一定の成果を、自民党から引き出してはいるようです。
しかし、これも、自民党の推進する、自衛隊のイラク派遣を、
全面的に支持することが、引き換えだったのでした。
(たとえば、神崎代表(当時)はイラクを訪問して、
「現地が安全だから自衛隊は派遣できる」と、アピールした。)

「福祉と平和を取引の材料にするという政治手法は、
この党の本来の主張とかけ離れている」(73ページ)と、
これについても、山口二郎氏は、手厳しい評価をしています。


こうもうしてはなんですが、連立政権の中での公明党の役割は、
「自民党政権の維持にあたって、議席の不足分を補う」
(68ページ)ことなのだと、わたしも、率直に思います。

これによって、民法改正、選択別姓に関しては、
法務部会という、自民党の反対派議員たちが、
法案を握りつぶす場所を、確保し続けていることになります。
このように考えると、公明党は、むしろ、
民法改正法案の阻止に、貢献しているとも言えるでしょう。

そういうしだいなので、「民法改正実現にむけてがんばります」
のような声明を、公明党が発したとしても、
わたしは、「ああ、そう...」と思うだけで、
それ以上の期待を、持つ気になれないのでした。


インターネットの市民団体の人たちは、
こんな「冒涜的」評価は、もちろんするはずもないですよ。
それどころか、公明党は、連立与党にいるというので、
それだけで、選択別姓実現のために、大いに尽力していると、
手放しで礼讃するかたもいらっしゃるくらいです。

なんでも、彼女たちにとっては、野党はいくら熱心でも、
法案提出が妨害されるので、無意味な存在であり、
法案提出ができる与党だけが、意味のある存在になるのだそうです。

それなら、野党にいて法案が実現できないより、
与党にいて法案が実現できないほうが、ずっとていたらくで、
批判されるべきではないかと、思うところです。
しかし、インターネットの市民活動家たちは、
なぜかそういう具合には、考えないみたいですよ。

池田大作の保身のために
こうなると、なぜに公明党は、かくも情けない状況に、
甘んじ続けるのかと、思うところです。

インターネットの市民団体の人たちが集まる掲示板で、
わたしが、「公明党は期待できない」ということを、
投稿したのですが[847]、そうしたら、そのあたりの推測を、
レスしてくださったかたが、いらっしゃいました。
========
公明党はその母体である創価学会が
かつて自民党にひどくいじめられました。
政教一致糾弾キャンペーン、宗教法人法改正強行、
秋谷創価学会会長の国会招致、池田創価学会名誉会長に対する
証人喚問要求などなど自民党からすさまじい攻撃を受けました。

そういう過去の経験がありますから、識者が指摘するよう彼らは
自民党とくっついていたほうが、組織防衛上の見地より
得策だとの教訓を得たのかもしれません。
========[856]


ときは1994年、細川・羽田内閣がうたたかのうちに倒れると、
自民、社会、さきがけの3党による、連立政権ができました。
そのあとは、政界再編がいちじるしい状態が続き、
新政党ができたり、分裂や合併が、くり返されてきました。
そして、1999年、自民、自由、公明の3党による、
連立政権が誕生することになります。

ようするに、社会党をはじめ、他党が分裂していたので、
そこに自民党がつけこんで、利用してきた時代です。
こうやって、他勢力の一部を、連立政権に加えることで、
たりない議席をうめて、自民党は政権を維持してきたのでした。

ところで、労働組合や業界団体などの組織力が、
だんだん下がってくる中、公明党の支持基盤である、
創価学会の基盤の堅さは、このころになっても健在でした。
とくに、1980年代以降、多くの地方自治体において、
公明党は、与党となっています。
創価学会の組織票は、多くの候補者にとって、
魅力のあるものとなっていました。

自民党としては、過半数にたりない議席をおぎなうだけでなく、
自分たちの組織票が確保できるという観点でも、
公明党を連立政権の中に、加えたくなったのでしょう。
そこで、公明党の支持基盤の攻撃に、かかったのかもしれないです。

公明党を、自民党との連立から切り離して、
民主党と組ませることはできないのかと、
これをご覧になっている、自民党政治を終焉させたいと
思っているかたの中には、いらっしゃるかもしれないです。
公明党や創価学会の組織力を、民主党のために使えれば、
政権交代が、ずっと実現に近付くことは、たしかでしょう。

しかし、さきの掲示板の投稿にあるような、事情から察するに、
公明党から主体的に動いて、自民との連立政権から離れることは、
おそらくないだろうと、わたしは、思います。
連立が解消されるとしたら、自民党の側から、
用がなくなったとして、公明党を切り捨てるときでしょう。
そのときは、自民党が単独で、過半数を維持できる、
議席と支持基盤を、確保するようになっているはずです。


また、公明党が、連立政権に居座り続けるのは、
自民党を利用し、これを操作することで、やがてはみずからが、
権力を掌握するためだと、お考えのかたもいらっしゃるようです。
(自民党が、集票マシンとして、創価学会に頼っていることや、
池田大作氏の野心的なことが、そう思わせるのでしょうか?)

これも、政策の実現の状況をかんがみれば、
そうなっていないのはあきらかで、どうひいき目に見ても、
自民党が公明党を利用しているのが、実態だと思います。


公明党は、本質的には、中産下層階級を支持層とする、
「平和と福祉」が、基本イデオロギーの党なのだと思います。
創価学会や党組織(あるいは池田大作氏)の、
保身のために、自民党政権に忠実になっていて、
それゆえ、党の方針と、おおよそ相容れない政策にも、
賛同しているのだろうと、わたしは思います。

これについても、「池田大作が、平和と福祉をかかげるのは、
表向きの姿にすぎず、内心は腹黒い野心をかかえている、
だから自民党の悪政にも、賛同しているのだ」のように、
お考えのかたも、いらっしゃるようです。

どうも、「社会正義をめざす者は、きれいで公正な手段しか、
使わないはずである。 不当な手段を使うというのは、
目的が腹黒いからにちがいない」のように、考えられがちみたいです。
いや、むしろ、こう考えるかたばかりのようで、
わたしのように考えるかたは、ほとんどいない感じです。

「正しい目的を持っていても、保身のために汚いことをする人」
あるいは、「目的や理念にそぐわない、汚い手段をさかんに使う人」
なんて、めずらしくもないと思っていた、わたしとしては、
軽いカルチャーショックを、感じてしまいましたよ。
(やはり、たんぽぽは、ひねくれものですね。)

謝辞
  • 12月24日エントリの、「創価学会の昭和史」で、コメントをくださった、
    kojitakenさま、どうもありがとうございます。
    このコンテンツを書くのに、すごく参考になりました。

参考文献・資料
  • 読売新聞 スキャナー 2006年3月14日
    民法改正「答申」放置状態 夫婦別姓棚上げ10年
    自民党が、党内合意にほど遠いので、「こちらから提案する状況ではない」と、
    言っている、公明党の中堅議員の発言が、紹介されています。
  • 日本経済新聞 永田町インサイド 2006年5月18日
    あの法案はいま
    永住外国人参政権を認める法案についての、
    公明党のなしてきたことが、簡単に触れられています。
    (この記事には、民法改正法案が、暗礁に乗り上げていることも出ている。)

「民法改正運動の展開」にもどる
トップにもどる


inserted by FC2 system