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民法改正運動の展開 - 2000年
水島広子議員の代表質問

総選挙が終わって、約1ヶ月の7月31日、衆議院本会議で、
森首相の所信表明演説に対する、各党の代表質問がありました。
民主党からは、鳩山由紀夫代表と、
さきの総選挙で当選したばかりの、水島広子衆院議員が立ちました。
http://www.dpj.or.jp/news/200007/20000725_mizusima.html
http://www.dpj.or.jp/news/200007/20000731_situmon2.html

水島議員の質議内容は、いじめや小児医療など、
子どもの福祉に関することが中心でした。
また、選択別姓の実現と、婚外子差別の撤廃という、
民法改正のふたつの問題についても、言及されています。
くわしい内容については、こちらのページを、
ご覧になるとよいでしょう。
http://www.mizu.cx/sitsumon/sonota/daihyo00731.html

水島氏は、婚前の苗字を維持しつつ、
法律婚の保証をある程度確保するために、
書類だけで離婚と再婚を繰り返す、
ペーパー離再婚を3回くりかえしています。
それをメディアに誤解されて、本来の意味での離婚歴が
3回あると報じられて、騒がれたことがありました。
こうした、理不尽さをふまえながら、現行民法の
同姓強制の不備を主張しています。

ひとつおもしろいのは、国会運営の項目で、
「しかし、最近の国会運営を見て、民主主義とは話し合いよりも
多数決で押し切ることだという誤った理解をしている人たちが
増えているように思います。」
というくだりがあって、数の力で押し切る、
現在の与党の国会運営を、批判していることになっています。

ところで、民主党が、代表質問で水島氏を起用したというのが、
マスコミのあいだで、いささか物議をかもしたのです。
なにしろ、さきの選挙で初当選して、
1ヶ月ほどしか経っていない新人ですし、
しかも、若い女性議員を、起用するというのですから、
注目を浴びないはずもないです。

自民党には、「当選回数序列」といって、
当選した回数が多い議員ほど、重要なポストに就きやすく、
党内での発言力が大きくなるような、しくみを作っています。
このような「政治の常識」に慣れてしまうと、
初当選の議員が、これくらい目立つ役割を演ずるのは、
異例中の異例として映るにちがいないでしょう。


鳩山氏が、あえて新人を投入してきたのは、
「わが民主党は、実力があれば、初当選の議員でも、
重要な役割をになってもらうことがある。」ということを、
訴えたかったのでしょう。
「わが党は、当選回数序列などという、前時代的な習慣からは、
決別している。」という印象づけだったのだと思います。

民主党は、民法改正の実現を選挙公約にするなど、
家族や教育の政策を、重視しています。
代表質問で、これらを、あらためて取り上げることで、
民主党は、自民党があまり積極的でない、これらの政策を
たいせつにしている、という主張でもあったのかもしれないです。

水島議員の起用は、さまざまな意味で、
自民党政治のアンチテーゼを、意識したものであり、
その対立勢力としての民主党を、強調するという
戦略があったのではないかと、わたしは、見ています。
水島氏は、選挙前から「生活者として、とても暮らしにくい
社会を作った、自民党が嫌いだ。」と、公言しているくらいです。
まさに、この目的に、うってつけの人材だったのでしょう。

鳩山氏は、「若さあふれる党をアピールしたい」と、
電話をかけて直接に依頼したのでした。
また、水島氏も、「はい、わかりました。」と、
淡々と返事をして引き受けたのでした。

2000年8月1月の、日本経済新聞の社説欄では、
「言論の府に一石投じた新人議員質問」というタイトルで、
水島議員の代表質問のようすを、伝えています。
それが、こんなに書いてもらっちゃっていいのと、
思うくらいの「べた誉め」だから、すごいのなんの、です。

のっけから「言葉がうつろに響くことの多い国会で
久しぶりに言いたいことがきちんと伝わってくる演説を聴いた。」で、
はじまっていて、「演説に内容があれば、主義主張や
党派を越えて人は耳を傾ける」と、閣僚席や与党席からも、
じっと聞き入る姿があったと書いていて、
まさにこんな演説が聴きたかったと、言わんばかりの礼讃ぶりです。

内容についても「主張がはっきりしていた。
その上で何よりもわかりやすく自分の言葉で語ったことが
演説に強い説得力を持たせた。」と、積極的に肯定していますし、
「他の質問者の演説にも聴くべき点はあったが、
首相答弁も含めて水島氏に主役の座を奪われた。」と、
全面的に評価です。


森首相の答弁は、どうだったかというと、
予想外のレベルと内容だったからでしょう、
「初めて当選をされて、率直な御意見を発せられたわけでありますが、
感銘深く拝聴いたしました。」と、最初に答えたものの、
自分のことばはそれだけでした。

あとは、毎年恒例とはいえ、
「(いじめについては)国民各層の意見を聞き適切に対処したい」、
「(民法改正については)国民的合意が必要で幅広く議論を」など、
あらかじめ準備していた原稿棒読みの、官僚答弁でした。
(いや、予期しない質議にも動揺せず、
いつも通りの答弁ができた、なのかもしれないけど...)

日経の社説も、森氏のことは、ぜんぜん評価していないし、
水島議員も、首相の答弁には「誠意が全く感じられないので0点」と、
きびしく評価していました。
そして、「どう質問すればより具体的に答えてもらえるか、
もっと勉強しなければ」と、つぎの目標を述べていました。

日経の社説のおしまいは、
========
ベテラン政治家諸氏、しょせん、素人の演説さ、
などとあざけるべきではない。国民の多くが「聴いてみたい」と
思えるような演説をあなたは本会議場でできますか?
あなた自身の体からほとばしる言葉で国民の心をとらえられますか?
========
と、しめくくっています。
鳩山民主党の戦略は、的中したでしょうか?

参考文献、資料
  • 水島広子のコミュニケーション正常化作戦(公式サイト) 国会質問
  • 日本経済新聞 2000年8月1日
    • 社説『言論の府に一石投じた新人議員質問』
      (同じ日に、代表質問とその答弁全体についての記事もある。)

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