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民法改正運動の展開 - 2005年
TXNニュースアイ
次期首相候補にインタビュー

2月22日の院内集会は、案外注目されたようで、
マスコミの取材も入るという、盛り上がりを見せました。
テレビ東京では、3月4日の『TXNニュースアイ』という番組で、
取り上げられることにもなりました。
この番組は、2005年3月31日に終了するので、
ほとんど最終回に近いときだったことになります。

(番組内容のアウトラインをお話しますが、
記憶に頼るので、かならずしも正確ではないかもしれないです。
このあたりは、ご容赦いただきたいと思います。)


メインは野田聖子氏で、次期首相候補として焦点を当てたものです。
つぎのエントリによると、パーティのときに、
「自民党は優秀なマシン」などと言ったとありますよ。
http://fb-hint.tea-nifty.com/blog/2005/05/post_9b4e.html
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「自民党という組織はあくまで優秀なマシンであり、
それをうまく使いこなすことによってこの国をよくしていくのが
私たちの使命なのではないかと」
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「マシン」とはなんのことなのか、前後関係がわからないので、
わたしも、推測になりますが、政策決定システムのことでしょうか?
それでしたら、悪名高い「事前審査・承認制度」といい、
族議員と縦割り行政を育む土壌といい、官僚まかせの体質といい、
さんざん批判されていることですよ。

民法改正、選択別姓制度が実現しないのも、法案を議会に
提出させず握りつぶすためという本来とちがった目的で
使われているとはいえ、「事前審査・承認制度」のせいであり、
まさに自民党の政策決定システムのなせるわざです。


冷戦状態で膠着し、その中で経済成長が続いていて、
富みの生産と分配という、国家目標がはっきりしていた時代なら、
「効率」はよかったのかもしれないです。
そうした国内外の事情がすっかり変化した現在では、
時代に合わなくなり、一刻も早く改善がもとめられているものです。

しかも、国会が最高機関という、憲法41条の観点で大問題の
このシステムを、優秀なマシンと言っているのなら、
野田聖子氏の感覚は、いったいなんなのだろうと思ってしまいます。
これを見たとき、わたしは思わず引いてしまいましたよ。

続いて、自民党の総裁選は、派閥間の権力闘争から、
政策重視に変わってきている、なんて体裁のいい前置きがつきます。
そして、野田聖子氏が「つぎの総裁の最優先課題として
だいじなのは、郵政民営化ではなく、少子化対策だ」と、
重視している政策を、具体的にコメントします。

「初の女性首相の誕生になるか?」という主旨だけあって、
いかにも「女性の視点」を感じさせるものを、登場させたようです。
こういう演出には批判的なかたもいると思いますが、
郵政民営化よりは、少子化対策のほうが、ずっとだいじな
国家プロジェクトであることは、まちがいないでしょう。


この少子化対策に関連する法案として、野田聖子氏が、
長いあいだかかわってきた、選択制別姓制法案が紹介されます。
婚姻届けを出さない事実婚にしているので、
出産をためらっているかたたちが、選択別姓法案の実現で、
安心して子どもを持てるようになるから、
少子化対策になるという、よくある説明がなされます。

さらに、野田聖子氏ご自身も、非改姓結婚を守るために、
事実婚をされていることも紹介されます。
このあたりは、「公式どおり」という感じですね。

続いて、選択別姓の実現を待ち望む、一般の人たちが登場します。
自分の苗字を守るために、事実婚にしたかたとか、
事実婚にしようとしたら、夫の両親から猛反発されたとか、
これまた、よくあるパターンのかたが、出てきます。
おそらく、これらのかたたちが、院内集会に参加した、
「実現協議会」の会員で、番組の取材を受けたのでしょう。


続いて選択別姓実現をめざす、野田聖子氏たちの前をふさぐ、
大きな存在として、自民党内の反対派議員が出てくるのです。
ネットの市民団体をはじめ、自民党を支持している人たちは、
自民党に応援する人たちが減ることを懸念して、
このあたりを言いたがらないのは、何度もお話していることです。

ところがこの番組では、自民党議員の多くは、
選択別姓には消極的であることも言及され、自民党にお願いすれば、
実現が近いかのような印象を与えることも、なかった様子です。
(取材を受けた「実現協議会」は、文句を言わなかったのかな?)

それから、自民党の推進派の議連、「例外的に実現させる会」の
議員が何人か出て来て、「野田さんにやる気があるのか
わからない」と、懐疑的なことも言っていました。
このところずっと進捗がないので、投げたように見えるのでしょうか?

選択別姓法案を実現させたい気持ちは、とうぜんあるでしょう。
しかしここへ来て、さすがの野田聖子氏も、反対派の強烈な抵抗は、
もはやどうにもならないと、内心では思っているのかもしれないです。
そんなことは、むろん言えないので、表向きは体のよいことを、
言うようになっているのかもしれないです。

『ニュースアイ』は、反対派の議員にもインタビューしています。
平沼赳夫議員で、ほかの首相候補としての登場のようです。
野田聖子氏の対抗、という含みもあるのでしょう。
つぎのエントリに、平沼氏の発言が載せられています。
http://fb-hint.tea-nifty.com/blog/2005/05/post_09e9.html
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「基本的には反対です。
先祖を、たとえばお墓参りひとつとってもどういう形で持続するか、
それはやはり日本の習俗、伝統、文化、そしてアイデンティティですから。
いま私はあえて(民法を)変える必要はない(と頷く)
========

ものごころついたときから、日本に定着していたので、
きっと日本の「伝統」に違いない、という単純素朴な思い込みですね。
夫婦同姓が、日本の「伝統」でも、文化でもなんでもないことは、
わたしの拙コンテンツ、「歴史のわい曲」をご覧ください。
「伝統」うんぬんは、反対派の主張としてはとても典型的です。
こちらも教科書的なわかりやすいものを、持ってきたと言えるでしょう。

お墓を持ち出すのも、よくある反対派の主張のひとつです。
お墓の引き続ぎは、財産の相続に準じた扱いだそうです。
霊園のかたに聞いたところ、結婚して苗字が他家に変わった女性でも、
縁者であれば、引き継ぐことができます。
となれば、夫婦同姓にこだわる必要もないでしょう。

墓標に「なんとか家」と書くことについては、最近は別姓対応で、
苗字をふたつ書き込める墓石もあるので、それを利用すればよいでしょう。
その前に、死んだ人間を、生きている人間に優先させる発想が、
そもそものまちがいだと、わたしは思います。


選択別姓運動にかかわる人たちは、どういうわけか、
反対派の抵抗を過小評価するらしく、あまり眼中に入らない感じです。
それよりは、自分たちの必要性を伝えるほうがよいと信じていて、
メディアなどで特集を組んでも、あまり反対派のことを、
はっきり述べないことが多いのでした。

ところが、この『ニュースアイ』では、反対派の議員も登場させ、
反対派とはこういう人で、こんなことを言っていて、
法案成立を阻止している、ということが、紹介されたのでした。
(さすがに、法務部会でなにをやっているかまでは、出て来なかったけれど。)

全体的にも、教科書的と言えるくらいスタンダードで、
野党が出て来ないことを除けば、バランスが取れていると思います。
これに加えて、反対派の存在も、クローズアップされていて、
番組をご覧になったかたは、反対派とはどんな人なのか、
いくらかはその実態が、伝わったのではないかと思います。

「実現協議会」主催の、与党中心の集会を取材したものなので、
どんな内容かと思ったのですが、この『ニュースアイ』の特集は、
わたしは、結構評価できるものとなっています。

参考文献、資料

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