民法改正運動の展開
2001年の世論調査



内閣府(旧総理府)では、毎年世論調査を行なっているのですが、
民法改正、選択別姓についても、何年かに一度、なされています。
2001年5月にも調査が行なわれ、8月に発表になりました。
(お役所なので、西暦ではなく年号を使ってます。)
http://www8.cao.go.jp/survey/h13/fuufu/index.html

全部の質問の書かれている調査票はこちらです。
http://www8.cao.go.jp/survey/h13/fuufu/3.html

それから、「別姓が選択できるよう民法を改正してよいか?」
という設問(2001年の調査では、Q9 [回答票15])の回答について、
1回目から全部の推移をまとめてグラフにしたものが、ここに出ています。
(世代ごとに区分したデータもあります。)
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji36-03.html

このほか、世代別、および、男女別でわけたグラフが、
2001年8月5日付けの朝日新聞の1面に出ています。


01年の調査では、民法改正に「賛成」が42.1%、
「反対」が29.9%、「通称使用を認める」が23.0%でした。
賛成が反対を上回ったのは、今回の調査ではじめてのことです。
前回の調査(96年)では、賛成が32.5%、反対が39.8%だったので、
ほぼ逆転していることになります。

ほかにも、今回の調査では、特徴的なことがいくつかあります。
結婚当事者の世代である、20代と30代では、
半数以上のかたが、「賛成」と答えるようになっています。
また、当事者の親世代にあたる、50代でも、
賛成が42%、反対が32%で、賛成のほうが多く、
子どもたちの結婚に対して、別姓が容認できるように
なってきたと言えるでしょう。

60代になると、賛成が35%、反対が46%で、反対が多いのですが、
それでも賛成の数が、目立つようになってきています。
若年ほど賛成が多く、年輩ほど反対が多いという世代差は、
今回もはっきりしているのですが、
それでも高齢層にも、受け入れられつつあると言えそうです。


5年のあいだで、民法改正、夫婦別姓に対する理解が、
きゅうに進んでいったことがはっきりしたようです。
これは民法改正の必要性の理解を得るべく、
各方面の関係者が、努力を続けていったからにほかならないでしょう。

この世論調査の結果は、8月5日に、各新聞が記事にしています。
「夫婦別姓制42%賛成」「初めて反対超す」(朝日新聞1面)、
「『夫婦別姓』賛否逆転」「法改正 容認42% 反対30%」(毎日新聞2面)
「夫婦別姓、容認42%」「法改正反対30%を逆転」(読売新聞1面)
という見出しで取り上げてられています。

別姓反対派はいままで、この内閣府の世論調査で反対のほうが多いことを、
審議拒否の理由のひとつにしてきていました。
01の調査で、反対する大きな理由(口実)が、
なくなってしまったことになるでしょう。


しかしこれくらいのことで、おのれの頑迷きわまりない考えを
あらためる選択別姓反対派であるはずもないのでした。

『諸君!』という雑誌の02年3月号に、
『クタバレ「夫婦別姓」』という過激なタイトルのつけられた、
選択別姓に反対する国会議員たちの座談会があります。
この2001年の世論調査のことも、語られているのですが、
なにやらとても不満げです。

なんでも、「通称使用」の23.0%と、「反対」の29.9%を合わせた、
52.9%が別姓に反対とするべきであり、
まだまだ世論は賛成のほうが少ないのだ、というのです。
というのも、自分たちは選択別姓には反対だけれど、
通称を使うことは認めているし、実際に自分たちがこの調査を受けたら、
「通称使用」を選びそうだからだそうです。

94年までの5回の調査では、選択肢は「賛成」「反対」の、
ふたつだけだったのですが、最後の2回、96年と01年では、
「通称使用」が加わって、3つになっています。
それで、選択肢を増やしたのは、自分たちのような反対派が、
カウントされないようにする小細工だ、などと言っています。


選択肢に「通称使用」を入れたのは、生来の苗字を通称として使うのが、
社会にだいぶ認知されてきたからだと思います。
通称がよいと考えているかたが、賛成、反対のどちらとしたらいいのか
わからなくなると気がついて、
調査を精密にするために、新しく設けたのでしょう。
実際、96年の調査から「わからない」が、かなり減っています。

それから、「通称使用」を選んだかたたちの中には、
通称を使うのがいちばんいいと思ってはいるけれど、
次善の手段として、別姓を認めてもいいと考えているかたも、
すくなからずいるだろうと思います。
みんながみんな、選択別姓に絶対に反対だから、
通称使用がよいと思っているとは、決まっていないでしょうね。

こうした可能性をすっかり無視して、
「通称使用」を選んだかたは、みんな自分たちの同類だとして、
無条件に「反対」に加えてしまう、西川氏や山谷氏のほうが、
恣意的で偏った調査結果の取り扱いをしていると、言えるでしょう。


この調査の公平で安全な読みかたは、
「通称使用」はどちらにもカウントしないで、
「賛成」の42.1%と「反対」の29.9%で議論することだと思います。
よって、8月5日の各新聞の見出しは、西川議員などが言うように、
偏ってはいなし、「誤報」ということもないでしょうね。


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