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民法改正運動の展開 - 2002年前半(2)
山谷えり子議員の反対声明

民主党は、民法改正に賛成の党議拘束をかけていました。
これを00年の衆議院総選挙、01年の参議院選挙で、
それぞれ選挙公約にしていました。
ところが、東海ブロックの比例1位で当選した、
山谷えり子議員が、雑誌『諸君!』(2002年3月号)に
選択別姓反対を表明する記事を載せたのでした。

著者は、高市早苗、西川京子、山谷えり子の3人で、対話形式になっています。
『クタバレ「夫婦別姓」、ネコ撫で声の「男女平等」に騙されるナ!』という、
なんともぶっそうな、タイトルです。
リードも、「野田聖子のフェロモンと福島瑞穂のフェミニズムに
幻惑される国家観喪失の男性議員に言う!」ときたものです。
 
 
記事では、福島瑞穂氏の「家族解散式」を槍玉にあげて、
別姓導入は家族の解体がねらいだという、
毎度おなじみの陰謀論からはじまっています。
「家族解散式」というのは、18歳になったら親元を離れて
ひとりで暮らす「親離れ、子離れ」を、徹底させようということですから、
これは「相手の主張を曲解した上で否定する」という、
疑似科学的な態度とも言えるでしょう。

ほかは、男性議員の賛成は日和見的でいい加減だとか、
2001年の世論調査は、小細工されているといちゃもんをつけて、
反対派のほうがじつは多い、などと主張しています。

山谷氏自身も、別姓が認められると、
同棲と区別がつかなくなって家庭が崩壊するとか、
人が国家や家庭のために捧げるのは尊いとか、
苗字がかわったくらいで失われるアイデンティティはちっぽけだ、
などと語っているのでした。

内容は、とくに真新しいことはなく、
すでにどこかで言われていることの、くりかえしの感じです。
「クタバレ」というほど、バッシング性の強いものでもなくて、
タイトルやリードは、たぶん編集者側で、つけたのだと思います。

さて、いま問題にしたいのは、記事の内容自体ではなく、
山谷えり子議員があからさまに、別姓反対を唱えたことです。
山谷氏の公式サイトには、選択別姓について、
書かれたところも、当時はありました。
しかし、それだけ見ていると、反対には思えないようになっていました。

ほかのふたりの共著者、高市早苗議員と、
西川京子議員は、もともと反対していたし、
「どうせ、こういう人たちだから...」で、すむこととも言えます。
(え? すむことではないって...?
でも、すくなくとも、公約に違反したのではないし、
正直という意味でなら、問題はないはずですよ。)
 
 
なにしろ、山谷氏は、『サンケイリビング』という
生活情報雑誌の記事を書いていた記者であり、
職場では長年、生来の苗字を、通称として使い続けています。
それも通称を使うことが、まだ一般的でない時代のことだし、
仕事での不便さの解消のため、通称が使いやすくできるよう、
あちこちの雑誌を通して彼女は訴えてもいたのでした。
(『クタバレ「夫婦別姓」』で、こう語っている。)

そうした人物が、別姓賛成の党議拘束がある政党から出馬ですから、
夫婦別姓には理解があり、とうぜん民法改正に賛成だろうと、
なんの疑惑を持たずに思ってしまうでしょう。
しかし、公式サイトのコンテンツを、あとからよく読むと、
賛成、反対のどちらとも取れる内容と気がつく、
巧妙な書きかただったのです。

ようするに、選挙前からはっきり別姓に反対すると、
民主党は、自分を候補にしてくれない
(候補にしてくれても、比例の名簿のもっと下位にされる)と考えて、
本心では反対なのをごまかしたと、推測するのは容易だろうと思います。

そして、守備よく当選したからでしょう、
ここへ来て、隠していた正体を、現わしたのだと思います。
『諸君!』の記事は、党の公約に違反して
別姓に反対しようという、声明にほかならないのだと思います。

『諸君!』に、「クタバレ」の記事が載ると、
山谷えり子氏が、著者に入っているというので、
これはいったいどういうことだ!?という、
問い合わせのメールが、民主党のほうにたくさん送られたのでした。

選択別姓の実現に期待して、民主党に投票した有権者としては、
いっぱい食わされた気分だろうと思います。
比例区で名簿1位での当選ですから、
「党の公約=候補者の公約」とも言えるでしょう。
そうやって集めた票で当選した議員が、公約違反では、
有権者はどのように投票行為を決めたらいいのか、判断できなくなります。
 
 
わたし自身、この反対声明には不穏のものを感じて、
興味を持ちそうなかた何人かに、教えてあげたのでした。
(これで数通のメールが、民主党に行ったのではないかな...?)

民主党は、まがりなりにも野党第1党ですし、
別姓賛成を党議拘束にしている、いちばん大きな勢力です。
その民主党の党議拘束がはずされてるとなると、
最悪の場合、国会で賛成議員の議席が過半数に達しなくなるなど、
深刻な影響をおよぼすかもしれないです。
 
民主党としても、見事にだまされた、といったところなのでしょう。
山谷氏は、初当選ですから、よもや1年生議員が、
こんな大胆なことなどするはずないとも、思ったかもしれないです。
どうも、「ネコ撫で声の男女平等」でだましたのは、
山谷代議士のほうだ、ということになりそうです。

参考文献、資料
  • 『諸君!』02年3月
    ネコ撫で声の「男女平等」に騙されるナ! クタバレ「夫婦別姓」

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