トップページ別館疑似科学(にせ科学)の部屋アポロ計画陰謀論

アポロ計画陰謀論(5)
対費用効果を考えない陰謀論
[1] [2] [3] [4] [5] [6]

映画『月のひつじ』より
アポロ11号のミッションが、オーストラリアで中継されたのを、
ご存知のかたは、いらっしゃるでしょうか?
同国ニューサウスウェールズ州のパークスという町で、
電波望遠鏡を建てて、生中継で映し出したのでした。
パラボラ・アンテナの位置が、電波を捕らえるのに理想的だというので、
ときの大統領ニクソンから、依頼を受けることになります。

「ひつじばっかりの田舎で、宇宙事業などできるはずない」と、
NASA(航空宇宙局)の人たちは、おもわずさけんだし、
また事業を誘致したパークスの市長さんは、
夢想家、ほら吹きと、人びとから嘲笑されていました。

それでも、市長をはじめ誘致した市の職員たちや、
天文台の建設にあたった業者、そして実際にアンテナを操作した
科学技術者たちの情熱は、この歴史的瞬間の映像を
捕らえることに成功するのでした。
この中継は、アポロ計画の、もうひとつのドラマだったようで、
『月のひつじ』という映画にもなっています。
http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=1828


陰謀論者の言うように、アポロがでっちあげだとすると、
中継にかかわった、パークスの人たちもだますか、
あるいは、陰謀に協力してもらうことになります。
NASAやアメリカ政府と、なんら利害の関係ない外国人を大勢だますか、
アメリカの利益のために、協力させたりできるのでしょうか?

さらに言えば、アポロの中継は、はじめはカリフォルニアの
ゴールドストーンで行なうことを、NASAは考えたのですが、
あとから、パークスの天文台に依頼することに、変更しています。
でっちあげなら、国内で中継したほうがやりやすいのに、
隠したり協力させたりに、都合の悪い外国に、
わざわざ頼むことなど、ありえるのでしょうか?


パークスのグループは、中継の途中で、アポロからの電波を
見失なうというハプニングに見舞われます。
(訪れたNASAの技術者とのトラブルが原因らしい。)
宇宙船がどこへ行ったのか、一生懸命軌道を計算するのですが、
どうしても見つからないのでした。

そうこうしているうちに、お空にお月さまが出ているのを見て、
とにかくあの方向に違いないと考えます。
そして、アンテナをお月さまのほうに向けて、手動で探しはじめたら、
宇宙船からの電波を、ふたたび捕らえることができたのでした。

宇宙船からの電波は、つねにお月さまの方向から来ているから、
このようなことができたことになります。
陰謀論者の言うように、宇宙船が月へは向かわず、
地球のまわりをまわっているだけなら、いつも月の方角から
電波を飛ばすことができないですし、パークスの望遠鏡も、
宇宙船を捕らえることはできなかったでしょう。

気の遠くなる「だますべき人の数」
アポロの宇宙船からの電波は、オーストラリアのパークスの
天文台だけでなく、世界中のたくさんの人たちが、受信していました。
公式の追跡ステーションだけでも、ハワイ、グアム、スペインの
マドリードやカナリア諸島など、アメリカの国内外に14箇所です。

電波は宇宙空間を垂れ流しで、だれでも傍受できますから、
非公式に受信したかたたちまで入れると、もっとたくさんになります。
宇宙開発のライバル国のソビエト連邦の人たちもいます。
ところがなぜか、彼らが受信した電波から、
「アポロはでっちあげだ」と摘発したお話はないようです。

また、フロリダの大学の天文学科のように、
アマチュアが個人的に傍受した人たちもいます。
このフロリダの人たちは、やはりお月さまのほうに、
パラボラ・アンテナを向けて、アポロの電波を捕らえたのでした。


電波を受信した人たちだけでも、相当な数ですが、
これに加えて、アメリカ本国には、アポロ計画を推進した
政治家や官僚たち、そして研究開発にあたった技術者たちがいます。
アポロ計画が「でっちあげ」なら、これらの人たちが、
そろいもそろって、良心の呵責にさいなまれることがいっさいない、
なんてことはありえず、どこかしらから秘密がもれるはずです。

アポロ1号が火災を起こして、乗組員3人が死亡するという
事故がありましたが、陰謀論者は、これを「秘密を守るために、
口封じをされたのだ」などと、人聞きの悪いことを言ったりします。
http://moon.jaxa.jp/ja/popular/story03/murder.html

ところが、上述のように、かかわったスタッフの数を考えれば、
「口封じ」が必要になる人たちは、ほかにもたくさんいるはずです。
なぜか政治家、官僚、技術者といった、宇宙飛行士以外の関係者を、
陰謀論者たちは、問題にすることがないようです。


実際にお月さまへ行かないで、これだけ不特定でたくさんの人たちを、
いっせいにだますのは、まずまちがいなく不可能です。
気の遠くなるようなコストがかかり、絶望的でしょう。
いくらアポロ計画が「予算の無駄遣い」と言われたとはいえ、
でっちあげるよりは、本当にお月さまへ行ったほうが、
ずっと簡単で、かつすくないコストで実現できるというものです。

アポロ計画陰謀論にかぎらず、一般的な「陰謀論」の
最大の難点として、対費用効果を考えないことがあります。
かけるコストや労力に見合うだけの、利益が得られないというものです。
対費用効果が見合わないと思ったら、根拠のない「陰謀論」だと、
見当をつけてよいだろう、とも言えると思います。

謝辞
わたしのウェブログのコメント欄で、映画『月のひつじ』を、
教えてくださったgalleryさまに感謝します。


参考文献、資料

「アポロ計画陰謀論」にもどる
「疑似科学(にせ科学)の部屋」にもどる
「別館」にもどる
トップにもどる


inserted by FC2 system