権力による情報操作というと、ヒトラー・ナチスの焚書や、
ネットに触れるのが、政府首脳の数人だけという北朝鮮のように(参照)、
都合の悪い言論の「封鎖」を、思い浮かべるかたが多いと思います。
それもひとつの型ですが、もうひとつやりかたがあります。
それは、都合のよい情報を徹底的に流して、「氾濫」させることです。
現在広く行なわれている、権力によるメディア戦略は、
この「情報の氾濫」が主体となっています。
大企業のコマーシャルも、「情報の氾濫」の一例と言えるでしょう。
メディアの数が少なく、それほど大規模でない時代でしたら、
都合の悪い情報を抹殺することが、権力にとって効率的でしょう。
ところが、現在のように、メディアが多種多様で、
しかも規模が大きくなると、強大な権力を持ってしても、
都合の悪い情報をすっかり封じることは、むずかしくなってきます。
そうなると、お金や権力にものを言わせるなら、
メディアを積極的に利用して、自分たちに都合のいい情報を、
どんどん流すほうが、かえって効率がよいことになります。
政治でしたら、過半数の支持を得ればいいのですし、
企業でしたら、利潤が回収できるだけ、売れればいいと言えます。
それならば、反対意見を、すべて抹殺する必要はなく、
自分たちが多数派にさえなれれば、じゅうぶんです。
批判したい人たちには、自由に批判させておいても、
それが目立たないくらい、相対的に小さくすればよいということです。
なまじ圧力をかけて、批判を封じようとすると、
「言論の自由の侵害だ!」と神経質に反応されて、
やりにくいですから、この点でも好ましいと言えます。
(ついでですが、「情報の氾濫」は、「彼らにも言論の自由がある」と、
容認されがちで、これもやりやすくしている感じです。)
07年1月に、捏造が発覚した「あるある」は、
どうだったかと言うと、5年以上前から、インターネットでは、
その非科学性が批判され、本まで出版したかたもいたのでした。
しかしそれで、番組のでたらめぶりが知れわたり、
視聴者が減っていく気配は、まったくなかったのでした。
「血液型性格診断」や、「にがりダイエット」のときは、
専門家も危険視して動き、彼らは正確な情報を発信したのでした。
これらの「あるある」批判に、圧力がかかったというお話はなく、
彼らは自由に情報を、発信できていました。
それで目先の騒ぎくらいは、おさまったようですが、
「あるある」の番組自体が、信用を失なうことはありませんでした。
「正確な情報」は、大企業の莫大なお金を使ったメディア戦略の前に、
いともたやすく埋没させられ、無視されたのでした。
21世紀の情報操作は、「都合の悪い情報の封鎖」ではなく、
「都合のよい情報の氾濫」が、主体となると思われます。
NHKの「従軍慰安婦」番組への政治的介入のように、
「封鎖」を使うこともありますが、あくまで補助的になると思います。
コイズミと竹中の、郵政民営化に関するメディア戦略に
代表されるように、メインは「氾濫」になるでしょう。
こうしたことを、こちらの掲示板で、聞かせていただいて、
「なるほど...」と、わたしは関心してしまったのでした。
http://otd11.jbbs.livedoor.jp/1105014/bbs_plain?base=13478&range=1
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