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リチャード・コシミズ

リチャード・コシミズ リチャード・コシミズ(2) リチャード・コシミズ(3)

「リチャード・コシミズ」という名前を、聞いたことはあるでしょうか?
日系の外国人みたいですがペンネームで、ご本人は日本人です。
中国や東南アジアで生活したことはあるらしく、
外国と縁がある人ではあるみたいです。

なにをしているのかというと、インターネットで、
「ユダヤ陰謀論」を繰り広げていらっしゃるのです。
この人に言わせると、現代の日本やアメリカの政治は、
ユダヤ(ロックフェラー)が、陰で動かしているのだそうです。
たとえば、「9.11同時テロ」も、ユダヤの陰謀であり、
世界貿易センタービル(WTC)は、「純粋水爆」なるものを
仕掛けられて、破壊されたのだそうです。


「ユダヤ(ロックフェラー)」と書きましたが、
ロックフェラーの一族は、実際にはユダヤ系ではありませんよ。
ときどき言われるのですが、一部に「ロックフェラーは
ユダヤ系ではないか?」と疑われることがあって、
コシミズはこれを信じているわけです。

「9.11同時テロ」は、もちろんアルカイダによるもので、
まちがいなく民間の飛行機が乗っ取られ、ビルに飛び込んでいます。
このあたりは、『陰謀論の罠』という本で検証されているので、
興味のあるかたはご覧になるとよいでしょう。

リチャード・コシミズ氏というのは、どんな人かと思って、
ウィキペディアを見ると、陰謀理論の総合商社のようです。
ご本人のウェブログにも、プロフィールがあります。
肩書きは「ネット・ジャーナリスト」となっていますが、
こうした場合にありがちな、「自称」のようです。


察するに、コシミズには、「在日」のかたをはじめ、
韓国や朝鮮、あるいは、統一教会や創価学会への強い不満があって、
これらがそもそもの発端のように思います。
コシミズの原点は、おそらく排外・国粋主義でしょう。

このような自分の不満をいっぺんに解消する
「陰謀の主体」として、「すべてはユダヤのしわざ」と
したのではないかと思われます。
そうだとしたら、とても奇抜な発想だと思います。

コシミズの活動は、在特会かネトウヨ同然になったと、
おっしゃるかたをときどき見かけます。
後述のような左翼的言説が印象にあるものと思いますが、
本来は排外主義者であり、ネトウヨ的なのでしょう。
むしろ原点に回帰しているのだと思います。


コシミズは、「自分は反ユダヤ主義ではなく、
ユダヤ金融支配を否定しているだけだ」と、述べています。
ところが、「ユダヤがお金の力で世界支配をくわだてている」
というもの言いこそ、古代ローマ以来脈々と続いた、
正統的な「反ユダヤ」の主張にほかならないです。

現在、世界でいちばんお金があるのは、アメリカ合衆国です。
それで「金融資本が世界を支配している」なると、
「黒幕」は「アメリカにいるユダヤ人」が、やりやすくなり、
ユダヤ系だと誤解されているロックフェラーが、
目のカタキにされることになります。

陰謀の主体がアメリカになると、反米主義になります。
そこで「郵政民営化反対」など、その線に沿った主張を
繰り広げるなどして、小泉政権や安倍政権などに
不満のある人たちから賛同されることになります。

かかる反米主義的な人たちは、もうすこし具体的には、
9条護憲や平和問題に関心のあるかたが多いです。
たとえば、後述の講演に出てくるように、
天木直人氏のようなかたも支持しています。

そして、反在日、反韓国・朝鮮が、もともとの根っこですから、
排外主義や国粋主義的な人たちにも、受けることになります。
こうして、平和活動家と、排外・国粋主義者という、
もともとは相容れない人たちのあいだで、
「反米イデオロギー」を軸に、「共闘」が見られることになります。

アンチ・セミティズムというと、極右的だと思うのですが、
現代日本のネット空間においては、信奉している人たちが、
ヒダリとミギの両翼にいるわけです。
(「佐藤優現象」の一種と考えることができます。)


ネットを見ると、コシミズに入れ込んでいるかたを、結構見かけます。
つぎのビデオのように、リチャード・コシミズの講演会も、
わりと頻繁に開かれるようで、影響力もそこそこあるようです。
(YouTubeで検索をかけると、ほかにもたくさん見つかりますよ。)

「2007年6月9日リチャード・コシミズ京都講演会」

そういうしだいなので、コシミズのことは、
結構長いこと批判が顕在化しなかったのですが、
つぎのエントリのように、民族問題や外国人問題に敏感であれば、
早くから危機感を持つかたもいらっしゃるのでした。

「『陰謀論』と平和運動、レイシズム」


ユダヤにしても、ロックフェラーにしても、
日本を支配するために、被差別マイノリティーや、
先行きどうなるかわからない新興宗教にてこ入れするのですから、
ずいぶんもの好きだと思います。
そんなのはさっくり無視して、日本に企業を興すとか、
日本の企業を買収するとか、財団らしくすなおに、
お金の力で勝負すればよさそうに思います。

そもそも、ユダヤ人が、もともと縁の薄い日本を、
手中におさめようとする動機が、わたしには、わからないです。
講演の中でコシミズの主張する、「大イスラエルの建設」とやらは、
日本はどうやっても関係なさそうですね。
世界全体を支配するにしても、中東とかヨーロッパとか、
彼らにとって、もっと重要な地域から、手をつけそうなものです。

ユダヤ陰謀論というと、第二次大戦までの遺物だと思います。
一般のあいだで信じる人たちは、いなくなったでしょう。
ところが極端な政治思想の持ち主のあいだでは、
戦後になっても、脈みゃくと受け継がれているのでした。
リチャード・コシミズも、そうした系譜の中に入るでしょう。

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