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9.11同時テロ自作自演説
平和活動に広がる陰謀論(1)

リチャード・コシミズ(3) 護憲派哀歌 護憲派と陰謀論
9.11真相究明会議

リチャード・コシミズという陰謀論者がいます。
9.11同時テロはユダヤの陰謀で、WTCはユダヤが作った
「純粋水爆」で破壊された、などと主張しています。
信者はネットを中心に、そこそこいるようで、
「独立党」という政治団体まで作っています。

コシミズ氏は、ときどき講演会や勉強会を開くのですが、
天木直人氏がゲストとして、招かれたことがありました。
つぎのビデオは、そのときの講演を録画したものです。
「2007年6月9日リチャード・コシミズ京都講演会」


天木直人氏というのは、レバノン大使をしていましたが、
コイズミ政権が、自衛隊をイラクに派遣したので、
これに反対して、外務省をやめたかたです。
『さらば外務省!』という本も書いていますし、
07年7月の参院選では、「9条ネット」という
憲法9条護憲を公約とする政党から出馬もしていました。

リチャード・コシミズ氏は、この講演の中で、
「きょうの私のお話を、ちゃんと理解できたかたは、
今度の参院選は、天木さん以外に投票したくなくなる」と言っていました。
コシミズも、陰謀論者歴は長いでしょうから、
「かも」をおだてる手練手管も、心得ているのかもしれないです。

天木氏とコシミズのふたりは、この講演が初体面だそうですが、
ビデオのようすだと、天木氏は、コシミズを信頼しているようです。
思い込み強いところがある、という印象はあったのですが、
外務省に長く勤めていましたし、もっとまともなのかと思っていました。


天木直人氏のブログに、自分が客演したようすが書かれています。
コシミズの考えはくわしく知らないとか、ユダヤ陰謀論など、
全面的に吹聴しないとか、慎重に距離を開けようとはしています。
http://www.amakiblog.com/archives/2007/06/10/

ところが、コシミズの陰謀説を保留しつつも、
信じられないほど意外ことが、現実には起こっていると言ったり、
また、国際政治の真実に迫まり、国民を覚醒させようとする
コシミズの姿勢は自分と同じだと、持ち上げてもいます。

このあと天木氏は、自作自演説には傾倒したみたいです。
ずっとあとになって、アメリカやイスラエルの陰謀ということは、
おおいにありえるから、日本の政治家も同時多発テロの
調査をしろと、自分のブログに書いていたりします。
http://www.amakiblog.com/archives/2007/12/20/


わたしは、このビデオを見て、護憲派は終わっていると思いましたよ。
コシミズを信奉するのは、天木直人氏だけでないですし、
ユダヤや「純粋水爆」は、出て来ないにしても、
9.11は自作自演だと信じている人は、すくなくないからです。

護憲派や、反戦活動家、あるいは反米主義者の、
こうした状況は、最近にはじまったことではないのでした。
つぎの文章は1999年に書かれたものですが、
このころから、陰謀論やにせ科学、反ユダヤ主義などに、
どっぷりと浸っていたことがわかります。
「「目糞、鼻糞を笑う」本多勝一バッシング」

かかるていたらくの原因は、「自分たちは正義だ」という、
確信が強いからではないかと思います。
そこから、自分たちへの批判は一切不要、という態度になって、
個人的思い込みを、検証もせずに信用するので、
「陰謀論」にも傾きやすくもなるのだろうと思います。

2008年5月4-5日に幕張メッセで、「9条世界会議」が開かれました。
世界中から集まって、平和について討論する国際会議です。
日本国憲法24条の男女平等規定のもとを作った、
ベアテ・シロタ・ゴードン氏も、4日の全体会で講演をしていました。

この国際会議に、きくちゆみ氏が参加していたのです。
グローバルピース・キャンペーンなる平和団体を
主催しているかたですが、『ボーイングを捜せ』
『ルーズチェンジ』という、自作自演説のもとになったビデオを、
日本語訳して配付させた、日本の陰謀論の火付け役のようなかたです。

会議のプログラムを見たところ、5日の分科会で、
招待されたのではなく、お金を払っての講演だろうと思われます。
内容は『テロリストはだれ?』というビデオで、
さすがに自作自演説は、やらなかったようです。


反戦・平和活動に、9.11陰謀論が浸透するのを、
つねづね懸念している人たちは、かかる大規模な国際会議に、
きくちゆみのような陰謀論者が参加して、
露出度を上げているというので、ゆゆしく思ったのでした。
ネットでも、あちこちのブログで、話題になりました。

このころは、『SPA!』の4月1日号で、9.11テロ自作自演説の
特集が組まれて、きくちゆみが記事を寄せていたり『陰謀論の罠』の奥菜秀次氏が、陰謀論者たちとやりあった、
「9.11真相究明国際会議」の講演録が、本になったりして、
ちょうど注目されていたのもあったようです。

このような陰謀論が蔓延すると、なにがイカンのかですが、
ごく簡単に言えば、社会的信用をなくすことにあります。
おかしなことをしているのが、はた目にまるわかりですから、
外部の人たちから、「こんな人たちとは、かかわりたくない」と思われて、
運動全体の衰退もまねくことになります。


きくちゆみは、日本の「自作自演説」の、第一人者のようです。
陰謀論のビリーバーはもちろん、反戦・平和活動に
陰謀論がはびこることを、危険だと思わない人たちのあいだでは、
ネットを中心に、「カリスマ」のようにさえなっています。

きくちゆみは、『戦争中毒』というコミックも訳しています。
これは、アメリカ合衆国が、戦争を続ける理由のひとつとして、
軍産複合体の存在や、利権確保があることを解説したものです。
この内容は、とくに日本で、戦争原因を単純化して
わかりたがる人に、受けるものだと思われます。

ほかにも、エコロジーにも関心があり(注1)、
ご家族ともども、房総半島でエコライフをしています。
平和活動に関心のある人は、環境問題にも興味があることが多いので、
このあたりにも、惹かれるかたも多いのかもしれないです。


もともと、きくちゆみは無名の人で(金融機関に勤める、
平凡な会社員だったそうです)自作自演説のビデオを訳して、
日本に紹介してから、平和活動業界で有名になったのでした。
名もない平凡な一市民でも、このくらいやれるとしめしているのが、
なにより魅力的なのかもしれないです。

ようするに、きくちゆみは、さまざまな点で、
反戦・平和問題に関心のある人たちの、心や知性にひびくのしょう。
このあたりが、きくちゆみ人気を支える、ゆえんではないかと思います。

藤田幸久氏という、民主党の参議院議員がいます。
このかたも、同時多発テロの自作自演説を信じていて、
しかも国会で質議までしているのです。
08年1月10日と4月24日の参議院の外交防衛委員会です。
つぎのリンクは、そのときの議事録です。
「第168回国会 外交防衛委員会 第18号」
「第169回国会 外交防衛委員会 第8号」

藤田幸久議員が、「疑惑」として挙げたことは、
いままでにも、陰謀論者たちが言ってきたことがほとんどです。
つぎのリンクさきで、議事録を参照しながら、
ていねいに検証しているので、ご覧になるといいでしょう。
「参議院外交防衛委員会 2008年1月10日」
「藤田議員の指摘の問題点」
「2008年4月24日 参議院外交防衛委員会」

08年1月24日には、質問主意書を提出してもいます。
その内容を、ご自分のサイトで公開もしています。
合衆国政府やCIAは、テロを知っていたのではないか?とか、
ペンタゴンに飛び込んだ飛行機の残骸がないとか、
WTC第7ビルは、じつは爆破解体ではないのかとか、
こちらもよく言われている内容です。
「米国同時多発テロに関する質問主意書」

後半に福田康夫首相(当時)からの答弁書があります。
いまひとつ答え切れていないフシもありますが、
自作自演などあるはずないという、あたりまえの認識をしめしています。
福田首相の答弁書をご覧にならず、藤田議員の質問書に
ご自分で回答してみると、この問題に関する習熟度を、
ためすことができるでしょう。(そんなことしたくないって?)


このように国会の場で、「活躍」している議員がいるとなれば、
陰謀論者たちが、放っておくはずもないことです。
『週刊金曜日』の成沢宗男氏が、さっそく近付いています。
藤田議員にインタビューを取り、それを08年9月12日号の
『週刊金曜日』に載せているのでした。
「国会で追及した「9.11」の謎」
「『金曜日』- 藤田幸久参議院議員に聞く」

WTCの崩壊を「「あれ、爆破解体じゃないの」と言った、
理工系出身で技術分野に詳しい議員」が、
民主党には、本当にいるのでしょうか?
インタビュー記事を信用するなら、断片的に知っていたり、
陰謀論者が作ったビデオを見た議員も、結構いるようです。
どうかそういった、いかがわしい情報にはまどわされず、
『陰謀論の罠』を読むなどしていただきたいものです。

さらに藤田幸久議員は、きくちゆみ氏たちと、
勉強会までするようになっていきます。
08年11月3日に行なわれた、「第2回 9.11真相究明会議」には、
パネリストとして出演もしています。
この会議は、自作自演信者たちが主催するもので、
きくちゆみや、成沢宗男、フルフォードも参加しています。

どうやら陰謀論者たちは、国政にくり出す足場を築いたようです。
まだ、それほど目立っていはいないですが、
これからどうなるかは、わからないです。
サイバー空間の片隅で、とんでもを振り回すだけだったり、
お仲間どうしで講演会をやっているならまだしも、
そろそろ警戒が必要かもしれないです。


ところで、「太平洋戦争の開戦は、コミンテルンの陰謀」
などと主張し、日中・大平洋戦争の日本の侵略を正当化する、
『日本は侵略国家であったのか』というタイトルされた、
「田母神論文」が発覚し、08年10月から大騒ぎになりました。(注2)

藤田幸久議員は、このとんでもない「田母神論文」について、
08年12月16日の参議院外交防衛委員会で、質議しています。
防衛省内の歴史教育に関する、講師の選びかたを問題視して、
歴史認識や歴史教育の体質を問うものです。
「第170回国会 外交防衛委員会 第10号」

9.11同時テロでは、あっさりと陰謀説になびくのに、
日本の歴史については、根拠と論理にもとづいた、
きわめて適切な判断をし、陰謀説に対してもとても潔癖という、
対照的な態度を取るのは、ときどき見られることです。

(注1)
きくちゆみは、水道水で走る自動車のような、「永久機関詐欺」を信奉するなど、
エコロジーの分野でも「とんでも」を発揮しています。
「水道水で走る夢の自動車」

(注2)
「田母神論文」は論文と言えない、「とんでも」だっただけでなく、
論文を書いた田母神氏は、防衛省の幕僚だったこと、懸賞論文で最優秀賞を取ったこと、
背後に産経新聞や、右翼系の識者や政治家の陰があり、
審査がデキレースらしいことなどで、大問題となりました。
たとえば、つぎのエントリをご覧になるといいでしょう。

参考文献、資料

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