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9.11同時テロ自作自演説
本国アメリカの陰謀論

9.11テロ陰謀論

同時テロ自作自演説は、本国アメリカのほうが深刻と言われています。
発端となったビデオも、2本とも作った人はアメリカ人です。
スティーブ・ジョーンズという、物理学者もアメリカ人です。

きくちゆみや、田中宇のような、外国の陰謀論者は、
反米感情や、反戦・平和イデオロギーで、動機は理解できます。
本国アメリカの陰謀論者は、なぜに自作自演を主張するのでしょうか?
反ユダヤ主義のような、特殊な動機の人もいますが、
すべての陰謀論者がそうだというのではないです。


ひとつの理由として、アメリカ人の中には、連邦政府ではなく、
州に帰属意識のある人たちがいることがありそうです。
建国初期のころの合衆国は、企業の利益に制限がかかるというので、
連邦政府の力が強くなることを、嫌う人たちがいました。

その名残りで、連邦政府に対する反発感情は、
アメリカ合衆国の市民の一部には、いまでもあるようです。
アポロ計画に対して、「じつは月に行かなかったのだ」という
陰謀論が、本国アメリカで流布するのも、
連邦政府に対する不信感があるからだと言われています。

「9.11同時多発テロ自作自演説」も、おなじ理由で、
反連邦政府感情にもとづくことは考えられそうです。
これである程度は納得できるのですが、「自作自演説」が信じられるには、
モチベーションがじゅうぶんでないようにも思います。

ところが、つぎのエントリに、もっと大きな理由が挙げられています。
アメリカ人が、「自作自演説」のビデオを作るのは、
「イスラム原理主義に、アメリカさまがやられるはずない」
という、プライドによるのだそうです。
「「9.11陰謀論」の生態学的考察」
http://blogs.yahoo.co.jp/satsuki_327/4466588.html


確かなことは、彼らの多くにとって、
9.11事件の公式発表による説明、つまりアルカイダ主犯説は
耐え難く受け入れ難いものであったということだ。
イスラム教徒がそんな残酷なことをする筈がないと思ったのではなく、
イスラム原理主義者のような下等な連中にこのアメリカ様が
まんまとしてやられる訳がないと、そう考えたかったのだろう。

訓練不足のイスラムの素人がジェット旅客機を操縦して
WTCビルに見事に命中するなんてことは不可能で、
実はアメリカ様のハイテク自動操縦か遠隔操縦で
衝突したのだと主張したり、ビン・ラディンの犯行声明映像に
イチャモンをつけたりするのも、そう考えると腑に落ちる。

9.11事件によって、いろんな意味で
アメリカ人のプライドはずたずたにされた。
彼らの一部に、自らのプライドを取り戻すために、
こともあろうに同胞の中に極悪な裏切り者の存在を
仮定しなければならないほどの屈折を余儀なくされた者らが居た。
この「「9.11陰謀論」の生態学的考察」を読んで、 わたしは、「なるほど」と感心しましたよ。 同時テロ自作自演説が、アメリカ発なのは知っていましたが、 陰謀論を作る動機までは、考えたことがなかったです。 世の中には、詐欺めいたことが好きな人は、たくさんいます。 また「反米的」な人も、アメリカにだって探せばたくさんいるでしょう。 両方の特徴(反米的+詐欺好き)を合わせ持った人がいても、 おかしくないだろうくらいに思って、立ち入って考えなかったのでした。

合衆国が本土の主要部分を、外部勢力に攻撃されたのは、
同時テロの前は、いつだったかというと、1812年の米英戦争です。
このとき、イギリス軍にワシントンを攻撃され、
大統領官邸も焼き討ちにあうのでした。
同時多発テロは、以来2世紀ぶりの大惨事だったのでした。

多くのアメリカ人は、自国の領土は攻撃されないという
感覚が染み込んでいるので、攻撃されるとまずあわてるようです。
離れ島のハワイを攻撃された、1941年の真珠湾奇襲でさえ、
不意打ちを受けたかたちになったのでした。

2001年の同時多発テロは、動揺しただけでなく、
プライドを大きく傷つけられた人も、たくさんいるというお話です。
「9.11は国家安全保障上の危機であったのみならず、
国家アイデンティティの危機でもあった」と、語る人もいます。

そうした、プライドを傷つけられた人たちの中には、
「イスラムごときにやられたのではない」と
思いたくて、「自作自演説」をでっちあげる人や、
それに飛びつく人も、たしかにいることも考えられそうです。


たとえば、リン・マーギュリス氏という、
自作自演説の信奉者は、つぎのように語っています。
(あとの日本語訳は、「バルセロナより愛を込めて」というハンドルの、
阿修羅でおなじみの陰謀論者、童子丸開氏によります。)

ここに、「アラブ人ごときに、あんな大掛かりなテロなど
できるはずがない」という、見下した感覚がなかったとは、
言えないのではないかと思います。

http://www.patriotsquestion911.com/professors.html#Margulis
http://www.asyura2.com/07/war95/msg/342.html

Certainly, 19 young Arab men and a man in a cave 7,000 miles away,
no matter the level of their anger,
could not have masterminded and carried out 9/11:
the most effective television commercial in the history of Western civilization.
確かに、19名の若いアラブ人と
7千マイル離れた場所にいた一人のアラブ人が、
その米国に対する怒りがどれほどのものであったとしても、
9・11を計画し実行できたはずはありません。
それは西側文明の歴史の中で最も効果的なTVコマーシャルだったのです。

「9.11同時テロ自作自演説」という、アメリカ人の、
セントリズム(中心主義)の産物が、日本の反戦平和活動家たちや、
反米主義者たちの反米感情にマッチしてまい、
「これが悪のアメリカ帝国の真実だ」と思われて、
飛びつかれたのなら、なんとも皮肉なことです。

日本の平和運動の人たちは、往々にして、
反米にして、反イスラエルであり、その反動のせいか、
アラブ・イスラムに同情的なことが多いです。
(天木直人氏は、元レバノンの大使でした。)

そんな彼らが、「同時テロ自作自演説」になびくことで、
たとえば「イスラムにとっての9.11はなにか?」といったような、
イスラムからの視点を無視することになるなら、
輪にかけて皮肉と言えるでしょう。

http://blogs.yahoo.co.jp/satsuki_327/4466588.html


そうして生み出された粗悪なSFに一部の日本人が飛びついた。
皮肉にもこのSFは、浮ついた反米思想の持ち主の心をくすぐり、
酔わせ、結果、陰謀=事実と思いこませてしまうことになったようだ。
だが彼らは、この説を支持することによって、逆に、長い間アメリカに
痛めつけられてきたイスラム教徒の視点を丸ごと放棄する、
そうした立場に自らが立っていることに気づかない。
確信犯を除いて!

謝辞
マーギュリス博士のメッセージを、コメント欄で教えてくださった
さつきさま、まことにありがとうございます。

参考文献、資料
  • 『アメリカ外交』-「苦悩と希望」
    講談社現代新書、村田 晃嗣著
    おもに1-2章:「9.11は国家アイデンティティの危機」という、
    ジョン・ギャディスのコメントを、56ページから孫引きした。

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