トップページ疑似科学の部屋9.11同時テロ自作自演説

9.11同時テロ自作自演説
陰謀論者たちのリテラシー

報告書を読まずに批判する陰謀論者
つぎに、陰謀論者たちの質をよくしめしている、
いわくつきの「疑惑」を、ご紹介したいと思います。
ユナイテッド93便(ホワイトハウスをめざしたが、
乗客の抵抗にあい途中で墜落した)の機内から、
飛行機の中のようすを伝える電話が、乗客からありました。

陰謀論者たちは、「上空では携帯電話はつながらないから、
電話があったのは捏造であり、陰謀の証拠だ」と言います。
実際に通話に使われたのは、「機内電話」であって、
「携帯電話」が使われたのではないです。
陰謀論者は、事実の一部を捏造していたことになります。


ときは、06年10月7日、ところは、東京の代々木で、
「911真相究明国際会議」なるものが行なわれました。
これは自作自演信者たちの主催なので、「真相究明」と称して、
なにを求めているかは、いわずもがなだと思います。

この会議でも、ユナイテッド93便の、電話のことが出てきました。
きくちゆみ氏、成沢宗男氏、ベンジャミン・フルフォード氏といった、
参加していた自作自演の信者たちは、「公式報告書に、
携帯電話と書いてある」などと言っていました。

前のページでご紹介した、『陰謀論の罠』の著者、
奥菜秀次氏も、この真相究明会議に参加していました。
このとき、「それは携帯電話でなくて、機内電話だ。
公式報告書でもそう書いてある」と指摘されたのでした。


ようするに、陰謀論者たちは、公式報告書をろくに読まないで、
「公式報告書にはこう書いてある」と言っていたのが、ばれたのです。
フルフォード氏にいたっては、全部で800ページほどの(注1)
公式報告書を、「1万ページにおよぶ」とさえ言っていました。

不審に思った奥菜秀次氏は、「みなさんは、公式報告書を
読んでいないのか?」と訊ねたのですが、「読んでいない」と、
3人ともあっさり答えたのですから世話ないです。

かかる陰謀論者たちの、無責任とていたらくが、
知られるようになると、3人を弁護したい自作自演の信者たちは、
「奥菜たちは、公式報告書に書いてあることが
正しいと言っている」などと言うようになりましたよ。
http://www.nbbk.sakura.ne.jp/911/okina2.html

陰謀論者たちが、言われたことは、「公式報告書を読まずに、
公式報告書にこう書いてあると、批判している」です。
これはあきらかに、「すりかえ」ていることになります。

文章の「トリミング」(1)
WTC第7ビルは、持ち主である、ラリー・シルバースタイン氏が、
みずからビルを壊せと言ったから、陰謀論者たちは、
火災で崩れたのではなく、爆破解体されたのだと言うことがあります。
http://www.nbbk.sakura.ne.jp/911/wtc7_1.html

これは、2002年9月の「PBSテレビ」という、
アメリカの公共放送の番組で、シルバースタイン氏が、
つぎのように、当日のようすを語ったからだそうです。
(しゃべったものを、あとから文章にしているので、
紹介しているサイトによって、若干文章が異なります。)
http://www.serendipity.li/wot/wtc7newspaper.htm

I remember getting a call from the fire department commander,
telling me that they were not sure they were going to be able to contain the fire,
and I said, "We've had such terrible loss of life,
maybe the smartest thing to do is pull it."
And they made that decision to pull and we watched the building collapse.

消防士から電話がかかってきたのを覚えています。
火を消し止められるかわからないと言っていました。
「おびただしい数の人が亡くなったし、
もう撤退するのが、いちばんいいかもしれない」と、私は言いました。
それで、消防士たちにも、引き上げてもらうことに決めて、
それからビルが壊れていくのを見ました。
あとの日本語は、わたしのつたない訳です。 火を消すのは無理みたいだから、もうあきらめて、 消防士たちに危険なことをさせるのをやめよう、という、 ビルの持ち主として、ごく自然な判断をしたまでだと思います。 ところが、陰謀論者たちは、ここに出てくる、"pull it"は、 「(消防士の)撤退」ではなく、「(ビルの)解体」だと言うのです。 それで、ビルの持ち主は「ビルを壊せ」と言ったのだそうですが、 それなら、シルバースタイン氏は、テレビで堂々と、 「あれは陰謀でした」としゃべったという、 とてもありえないことをしたことになります。 消防署のかたと、電話でお話をしているのですが、 消防士たちも、陰謀に加担するために、消火活動にあらわれたのでしょうか? はじめから陰謀に加担していなかったとしたら、 シルバースタイン氏と、当日電話でやりとりしただけで、 全消防士たちが、陰謀の協力に同意したのでしょうか? ようするに、陰謀論者たちは、言葉尻をとらえて、 揚げ足を取っているだけの、いわば、文章の「トリミング」です。 「これはこういうふうに読める」と、手前勝手に文章を「解釈」して、 自説を正当化するのは、陰謀論者の得意なことです。 シルバースタイン氏は、「ビルを壊せ」と言ったのではないと、 何度も反論しているらしいですが、そんな本人の弁でさえ、 ぜんぜん聞こうとしないのも、陰謀論者にはよくあることです。

文章の「トリミング」(2)
ほかにも、ブッシュ大統領が、爆薬をしかけたと
自分で言ったから陰謀なのだ、などと主張する陰謀論者もいます。
これは、ホワイトハウスの公式ページにある、
06年9月15日の記者会見を載せた、つぎの記事のことだそうです。
「Press Conference of the President」

For example, Khalid Sheikh Mohammed described the design of planned attacks of buildings inside the U.S. and how operatives were directed to carry them out.
That is valuable information for those of us who have the responsibility to protect the American people.
He told us the operatives had been instructed to ensure that the explosives went off at a high -- a point that was high enough to prevent people trapped above from escaping.

たとえば、ハリド・シェイク・モハメドは、
テロリストたちが、合衆国内のビルを攻撃する計画の概要と、
それをいかにして実行するかの指令について、話しました。
これは、われわれの中で、アメリカの国民を守る
責任のある者にとって、価値のある情報です。
工作員たちは、爆弾をじゅうぶん高いところ---ビルの中の人たちが、
逃げだせないくらい---に仕掛けるよう、指示されたと話しています。
「爆弾をビルの高いところにしかけろ」と、 テロリストが指令を受けたというくだりがあります。 陰謀論者に言わせると、この部分が9.11同時多発テロで、 WTCビルを爆破解体したことを、意味するのだそうです。 前から見ていけばわかりますが、この記者会見は、 06年になっても、依然としてテロリストの警戒が必要なことや、 諜報機関を使って、さまざまな情報を入手し、 さらなるテロを未然に防ぐ努力をしていること、 証拠を集めて、テロリストを裁判にかけることなどを、語ったものです。 引用したところも、テロリストが、こういう計画を企てていると、 察知できたことを言っているのだと、わかると思います。 このテロ計画は、おそらく諜報活動によって、 未然に知れたものであり、実行されていないものでしょう。 どこのビルを破壊するかまでは、わからないのかもしれないです。 ブッシュ大統領の記者会見が、9.11同時多発テロのことを、 言っているとすれば、文脈からしておかしいことがわかります。 「国民を守る責任のある者にとって、価値のある情報」という、 直前の文章さえ、意味がわからなくなります。 そもそも、「じつは爆破解体したのだ」なんてことが 大統領によって、みずから明かされたなら、 世論はもっと大騒ぎになっているはずです。 陰謀論者が目のカタキにする「公式見解」と異なるのですし、 あらためて書き直す必要が出て来ます。 ところが、インタビューをしていた記者さえも、 まったくおどろいた様子はなく、会見を続けています。 となれば、「9.11の隠されたる事実」を、 明かしたのでないことくらい、すぐにわかりそうなものです。 文章の「トリミング」もさることながら、 この程度の「常識的判断」も、陰謀論者はできないようです。

(注1)
『陰謀論の罠』によると、「公式報告書」とされるものは、つぎの3冊。
これらのオリジナル版を、全部合わせると約800ページになる。

参考文献、資料
  • 『陰謀論の罠』
    • 11-16ページ:公式報告書を読まない、陰謀論者たちのことが出ている。
    • 51-53ページ:シルバースタイン氏の"pull it"。

「9.11同時テロ自作自演説」にもどる
「疑似科学の部屋」にもどる
トップにもどる


inserted by FC2 system