文章の「トリミング」(1)
WTC第7ビルは、持ち主である、ラリー・シルバースタイン氏が、
みずからビルを壊せと言ったから、陰謀論者たちは、
火災で崩れたのではなく、爆破解体されたのだと言うことがあります。
http://www.nbbk.sakura.ne.jp/911/wtc7_1.html
これは、2002年9月の「PBSテレビ」という、
アメリカの公共放送の番組で、シルバースタイン氏が、
つぎのように、当日のようすを語ったからだそうです。
(しゃべったものを、あとから文章にしているので、
紹介しているサイトによって、若干文章が異なります。)
http://www.serendipity.li/wot/wtc7newspaper.htm
I remember getting a call from the fire department commander,
telling me that they were not sure they were going to be able to contain the fire,
and I said, "We've had such terrible loss of life,
maybe the smartest thing to do is pull it."
And they made that decision to pull and we watched the building collapse.
消防士から電話がかかってきたのを覚えています。
火を消し止められるかわからないと言っていました。
「おびただしい数の人が亡くなったし、
もう撤退するのが、いちばんいいかもしれない」と、私は言いました。
それで、消防士たちにも、引き上げてもらうことに決めて、
それからビルが壊れていくのを見ました。
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あとの日本語は、わたしのつたない訳です。
火を消すのは無理みたいだから、もうあきらめて、
消防士たちに危険なことをさせるのをやめよう、という、
ビルの持ち主として、ごく自然な判断をしたまでだと思います。
ところが、陰謀論者たちは、ここに出てくる、"pull it"は、
「(消防士の)撤退」ではなく、「(ビルの)解体」だと言うのです。
それで、ビルの持ち主は「ビルを壊せ」と言ったのだそうですが、
それなら、シルバースタイン氏は、テレビで堂々と、
「あれは陰謀でした」としゃべったという、
とてもありえないことをしたことになります。
消防署のかたと、電話でお話をしているのですが、
消防士たちも、陰謀に加担するために、消火活動にあらわれたのでしょうか?
はじめから陰謀に加担していなかったとしたら、
シルバースタイン氏と、当日電話でやりとりしただけで、
全消防士たちが、陰謀の協力に同意したのでしょうか?
ようするに、陰謀論者たちは、言葉尻をとらえて、
揚げ足を取っているだけの、いわば、文章の「トリミング」です。
「これはこういうふうに読める」と、手前勝手に文章を「解釈」して、
自説を正当化するのは、陰謀論者の得意なことです。
シルバースタイン氏は、「ビルを壊せ」と言ったのではないと、
何度も反論しているらしいですが、そんな本人の弁でさえ、
ぜんぜん聞こうとしないのも、陰謀論者にはよくあることです。
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