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ツタンカーメンの呪いの思い出

「ツタンカーメンの呪い」という、にせ科学があります。
エジプト18王朝の王さま、ツタンカーメンの墓の
発掘作業に当たった人たちが、つぎつぎと謎の死を遂げたが、
これは墓にかけられた呪いのせいだ、というものです。

これは「ファラオの呪い」ということもあります。
「ファラオ」は古代エジプトの王さまのこと(称号)で普通名詞です。
「ツタンカーメン」は、そのファラオのひとりで固有名詞です。

例外的に呪いを受けずに長生きした人が、ひとりだけいて、
発掘作業の最高責任者だったハワード・カーターというのも、
ミステリーをよりいっそう神秘的にしています。


わたしは、この「呪い」のお話を、小学生のころ、
子ども向けの科学の本で読んで、複雑な気持ちになりました。
呪いなんて信じ難いですが、さりとて発掘関係者たちの
原因不明の死を説明する理屈が見当たりません。

「呪い」で死んでいったのは、盗難よけのために、
ピラミッドの壁や宝物に塗られた毒のせいだという、
「科学的」な説明も、わたしが読んだ本にはあったと思います。
結局「よくわからない」と結論されて、判断保留でした。


「ツタンカーメンの呪い」のお話は、
当時のマスコミが作ったデマであることがわかっています。
発掘作業のスポンサーだったカーナボン卿は、
独占契約していたロンドンタイムズ紙以外に、
情報を教えなかったので、なにか情報がこぼれてこないかと、
世界のマスコミは鵜の目鷹の目にしていました。

そこへカーナボン卿が、蚊に刺された傷から感染した
伝染病がもとで亡くなるという、センセーションが起きたので、
「呪い」のお話が作られることになります。
これは、当時の人たちのエジプトに対する
無知と好奇心も手伝って、もっともらしく聞こえたようです。

「ホープ・ダイヤモンド」もそうですが、
「呪い」で人がつぎつぎと死んだり、不幸になったりするお話は、
受け入れられやすいのでしょうか?
「ツタンカーメンの呪い」は、コナン・ドイルのような有名人が
蔓延に一役買っていることも大きいと思います。


よりくわしくは、こちらをご覧になるとよいでしょう。
「ファラオの呪い」
「「ツタンカーメンの呪い」とは?」

ついでに、『ハインズ博士 「超科学」をきる』の
251ページの文章を、ここに引用しておきましょう。
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1922年に初めて発見されたツタンカーメン王の墓をあばいた人間は、
発掘直後それぞれが謎めいた状況で死んでいるのだそうだ。
墓を冒涜した者にかけられた呪いのために、
そうした死がもたらされたのだという。
呪いの言葉は棺の部屋の石の扉に書かれていた。

ランディーは呪いによって死んだといわれる事件を分析し、
その死亡率が世間一般のものと大差がないことを明らかにした。
発掘調査に参加した学者の大半が高齢だったことと、
近代衛生設備が整っておらず、健康管理のいきとどいていない
砂漠の国にいたことを考え合わせると、
その死亡者数は予期しうるものだったという。
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謎解きはこれくらいでじゅうぶんと思います。
それにしても、ケシカランのは、子ども向けの科学の本に、
こんな「とんでも」を載せていることですよ。
よくわからないじゃないだろう、感受性の豊かな子どもに、
いらぬ恐怖心を植えつけやがって、ですよ、まったく...

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