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多重債務と改姓 改姓で借金が消えるお話 |
「多重債務」とは、いくつもの借り入れさきから借金して、 返すことが非常に難しくなった状態のことです。 個人でいちばんありそうなのは、クレジットカードでしょう。 カードでお買い物をしすぎて、借金が大きくなる、 それで返しきれなくなって、べつのカードを作る、 これをくり返して、カードローン地獄になるパターンです。 このほか、消費者金融(サラ金)から、お金を借りたとか、 借金の連帯保証人になっていたが、借金した本人が、 お金を返せなくなった、などがあるでしょう。 多重債務におちいって、どうしても借金を返せないとき、 解決する方法のひとつに、「自己破産手続き」があります。 これは、「借金が返せなくなった」ことを、 裁判所から認めてもらうものです。 自己破産が認定されると、不動産など財産として、 貸し主のあいだで、わけられるものがあれば、 精算のとき処分することになります。 家財道具など、生活に必要なものは、差し押さえられないです。 これによって、借り主は、借金の取り立てから、 とりあえずは、解放されることになります。 もともとは、すべての貸し主が、借り主に対して、 公平に権利を主張できるようにするためなので、 特定の貸し主が、個別に借金返済を請求できなくなるからです。 自己破産が確定すると、あとでお話するような 「免責」が決まるまで、会計士、税理士、弁護士、司法書士など、 いくつかの職業に就くことができなくなり、 会社の取り締まり役にも、なれなくなります。 一般の会社員に制限はないので、破産を理由に解雇はされないです。 また長距離の引っ越しや旅行にも、制限がかかることがあります。 戸籍や住民票には、なにも記録されないですが、 役所の「破産者名簿」に記載され、官報にも載ってしまいます。 法的なデメリットではないですが、ヤミ金融業者が、 官報をたどって名前を住所を調べ、ふたたび多重債務者にするべく、 DMを使っておさそいすることもあるようですよ。 |
個人で破産したときは、たいてい精算できるものがないので、 そのまま「免責手続き」に進むのが、一般的です。 というより、個人が自己破産手続きを取るのは、 この「免責」のためであることが通常です。 「免責手続き」は、「借金を返さなくてよい」ことを、 裁判所に認めてもらうものです。 借金をした理由はなにかなどを、裁判所に訪ねられ、 免責が決まると、借金から免除されることになります。 ギャンブルで使いこむなど、遊興で浪費したときは、 認められない(「免責不許可事由」)と、いちおうされています。 免責が取れると、金融機関が利用する、個人信用情報機関に、 「事故情報」として、登録されることになります。 これによって、今後7年間、新しくクレジットカードを作ったり、 住宅ローンなど、銀行の融資を受けたりができなくなります。 また、ふたたび借金をかかえても、免責を取ることもできなくなります。 ところで(ここでやっと本題なのですが)、 免責が取れたあと、結婚や離婚によって改姓することで、 こうした借金(をしていた事実)を、消してしまえるのです。 多重債務者の相談を受けているかたから、 実際に聞いたのですが、これだけのために、 結婚や離婚をなさる人も、本当にいるそうです。 くわしくはわからないですが、戸籍や住民票といった、 身分登録には、破産や免責の記録はつきません。 役所の破産者名簿や、個人信用情報機関の記載が、 改姓しても身分登録の記載と、追随しないからだろうと思います。 いずれにしても、改姓によって、自己破産や免責の事実が、 なかったことになるので、クレジットカードも ふたたび作り放題になるし、銀行からローンを受けることもできます。 それで、ふたたび多重債務を抱えても、 おなじように、免責手続きの申請ができます。 結婚や離婚で、借金の事実を消すのは、 もちろん、社会生活の中で、立ち直る機会を作るためであり、 ふたたびローン地獄になることを、すすめるものではまったくないです。 (だから、これをご覧になっている、そこのあなた、 いいことを聞いたとばかりに、実際にやってはだめですよ。) しかし理論的には、免責と改姓をくりかえすことで、 (脱法性はありそうですが)違法ではなく、 いくらでも借金を踏み倒せてしまうことになります。 |
謝辞 改姓で多重債務の事実を抹消できることを 教えてくださった、れんげさま、ありがとうございます。 追記 結婚改姓で自己破産の記録を消すことは、 いまではかなり難しくなっているようです。 審査が厳しくなって、結婚改姓の前も 極力調査するようになっているらしいです。 なのでここでお話している 「改姓によって自己破産の記録を消す」ことは、 すでにできないと思ったほうがいいと思います。 この件について情報提供してくださったかた、 まことにありがとうございます。 |
参考文献、資料
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