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ニュルンベルク血統保護法

ニュルンベルク法 ニュルンベルク法(2)

ニュルンベルク血統保護法。
ドイツ民族の血統を守るためと称して、ユダヤ人との結婚の
禁止を定めた、反ユダヤ主義の象徴とでもいうべき法律です。
ナチス党によって、1935年に制定されました。

第1条は、つぎのようになっています。
(1) ユダヤ人と、ドイツ人の血もしくはこれと同族の血を引く ドイツ国民との婚姻は、これを禁止する。 この禁止に反して行なわれた婚姻は、 同法を避けるために外国で行なわれた場合でも、無効となる。
こんなおどろおどろしたものを、唐突に出して恐縮ですが、 いまは、ヒトラー・ナチスの、アンチセミティズムの狂気について、 お話しようというのではないです。   注目したいのは、「同法を避けるために外国で行なわれた 場合でも無効となる」という、断わりがあることです。 こうした、「法の抜け穴」を防ぐということは、 当時のヨーロッパでは、外国で得た婚姻証明を、 自国のものに振り替えることは、めずらしくなかったのでしょう。 ヨーロッパは、せまい土地に、たくさんの国がひしめいていますから、 国境を超えた人の移動も多いでしょうし、 国際結婚も、たくさんあったのかもしれないです。 第一次世界大戦のあと、大幅に国境線が引き直されたので、 それで国籍が変わった人も、たくさんいるものと思います。 日本では、結婚しているかどうか(マリッジ・ステート)は、 戸籍に書くので、ぴんと来ないかたも多いと思いますが、 諸外国では、結婚の証明書を発行することが一般的です。 現在でも、外国人であっても、婚姻証明を発行する国はあります。 これを利用して、外国で結婚式を挙げて、そのままそこで、 婚姻届けを出すという、「リーガル・ウェディング」を なさるかたも、いらっしゃると思います。 観光ビザで入国している旅行者を含めた、外国籍のかたにも、 婚姻証明を発行して、その国での法的効力を認めることは、 このころからヨーロッパでは、一般的だったのかもしれないです。 わたしのサイトを、ご覧になるくらいのあなたでしたら、 ユダヤ人との事実婚はどうだったのかと、 お思いになるかたも、いらっしゃることでしょう。 ヒトラー・ナチスは、このあたりにも抜け目はなく、 事実婚(内縁)も、はっきりと禁止しているのでした。 現実問題として、内縁関係にあるかどうかを、 どうやって確かめるのかは、わからないですが、 おそらく実態の調査によるものと思われます。
第2条 ユダヤ人と、ドイツ人もしくはこれと同族の血を引く ドイツ国民との間で内縁関係を結ぶことはこれを禁止する。
  ヒトラー・ナチスは、もっと念の入ったこともしています。 お金のために、ドイツ人がユダヤ人に雇われることへの、 感情的反発もあったのだとも思いますが、こんな規定もあるのでした。
第3条 ユダヤ人は、ドイツ人もしくはこれと同族の血を引く、 45歳以下のドイツ女性を女中として雇ってはならない。
ユダヤ人の富豪が、ドイツ人の女性を、 女中として雇うというのは、当時一般的にあったことでした。 そして、雇い主と女中とのあいだで、 「できちゃった」ことも、ご他聞にもれず多かったのでしょう。 わざわざ独立の1か条として、法律に書く必要があるくらい、 おさかんだったことが予想されます。 しかし、女中と関係を持ってはいけない、ではないので、 やっちゃうほうは防げないと、考えていたのかもしれないですね。

参考文献、資料
  • 『水晶の夜』 H.-J. デッシャー著、小岸昭訳、人文書院
    (55-59ページに、ニュルンベルク法の全文(日本語訳したもの)がある。)

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