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婚姻届けの証人

日本の民法では、婚姻や離婚の際、証人をふたり必要とします。
それで、婚姻届け離婚届けには、証人欄というものがあります。
(このほか、養子縁組み、養子離縁の届けにも、証人がいります。)

この証人ですが、成人であれば、だれでもなることができます。
結婚(離婚)する人の血縁でなければならない、
みたいな制限はなく、おともだちでもかまいません。
極端な(?)お話、アカの他人でも、外国人でもOKです。
証人欄を、空白のまま役所に提出したら、
窓口の職員がその場でなってくれた、なんてこともあるくらいです。


それから、「保証人」ではなく、
「証人」であるということを、強調しておきましょう。
「保証人」ではないので、その場かぎりでおしまいで、
それからふたりがどうなろうと、証人には関係なくなります。

のちにふたりが仲が悪くなって、離婚したとか、
じつは保険金目当ての結婚で、法的に夫婦になったあと、
配偶者を殺害した、なんてことになっても、
証人が責任を問われることは、まったくないです。

婚姻届け、離婚届けの「証人」になることに、
法律的な意味合いはなにもないですので、
(あえて意味を探せば、役所の書類に自分の名前が残るくらい?)
これをご覧になっているかたで、これから結婚(離婚)するけど、
証人になってくれるかたが見つからないと困っている
おともだちがいらっしゃいましたら、
ぜひ証人になってあげるといいと思います。


このように、無意味としか思えない証人ですが、
いったいなんのため(立法主旨)に、あるのでしょうか?
つぎのページを見ると、結婚(離婚)するという、
本人たちの意志の証明だ、ということになりそうです。

http://www004.upp.so-net.ne.jp/hitosen/dare/dare.shou.html
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戸籍の届出で証人が必要なのは、
婚姻、離婚、養子縁組、養子離縁の4種類です。
この4つの届出に共通していることは、身分の変動を伴う重要な届出で、
しかも、当事者お互いの合意が何よりも重要と言うことです。
そんなわけで、届出の正確性を高めるために、
この4つの届出には当事者の意思を証明する人として、
2人以上の証人が必要とされているのだと思います。
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憲法24条の「両性の合意のみ」、13条の「自己決定権」に、
合致するように解釈すれば、このようになりそうです。
事実関係を証明する書類の添付がある届けには、証人がないことを
引き合いに出していて、なんとなく説得力がありそうな感じです。


ところが、本人の知らないうちに、勝手に婚姻届けを出されて、
いつのまにか、結婚していることになっていた、
という事件がときどき起きるのを、聞いたことはないでしょうか?
離婚届けを出せば、ふつうに結婚を解消できますが、
戸籍に離婚の記録は残るし、女性の側には、
180日間の再婚禁止期間が、適用されるおそれが出てきます。

最近になって、だんだんとこの手の事件が増えてきたので、
結婚する前の状態にまで、戸籍を戻せるようにしよう、
という意見も出てくるくらいです。
(実際そのように、戸籍法が改正されたそうです。)

婚姻届けの証人は、本人どうしの合意の証明には、
たいして役に立っていないというのが、実態のようです。
(その資格審査のずさんさを考えれば、当然とも言えますが。)
立法趣旨はともかく、現実にも届け出の正確さを高めるのには、
証人はたいして役立っていないと言えるでしょう。


このほかにも、証人が設けられている
ゆえんについては、諸説いろいろあるようです。
たとえば、結婚(離婚)する本人が、
現実にそこに存在することの証明だ、というのもあります。
しかし、本人の存在や、重婚していないかどうかは、
戸籍の照合で確認するので、重複することになります。

あるいは、ちょっと邪推をして、「親」「仲人」といった、
旧民法時代の外的婚姻要件を、なんとか残したいがための、
方便だったという、考えもあるようです。
それがだんだんと意義を失ない、意味が忘れられて、
盲腸的にいまも残っている、ということになるのでしょう。

結局、なんのための証人なのか、いまではわからなくなっています。
はっきり言えることは、証人が設けられているのは、
「民法にそう書いてあるから」に、なってしまいそうです。

参考文献、資料

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