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家事をしない日本の男性と家族思想信仰

日本人の男性は国際的に見て家事をしないです。
OECDが家事時間のジェンダー差について調査をしています。
これを見ると各国の夫婦の家事時間がわかります。

「Balancing paid work, unpaid work and leisure」

男性の家事時間を横軸、女性の家事時間を縦軸に取って、
2次元で表したのが次の図です。
女性の家事時間はほとんどの国において
200-300分程度であり、差はそれほど大きくないです。
男性の家事時間で大きく差がつくことになります。




女性の家事時間が男性の4倍以上あるのは、日本と韓国だけです。
これら2国は男性の家事時間が50分程度であり、
調査対象国の中ではもっとも短くなっています。
日本と韓国の両国の男性は、他国の男性に比べて
家事をしないことは、あからさまだと言えます。

夫婦間の家事時間の差がもっとも小さいのは、
北ヨーロッパの国ぐにで、右下の水色の破線の丸で囲まれています。
これらの国ぐには男性の家事時間は150分以上であり、
女性の家事時間は男性の1.5倍以下です。
ほかの欧米の民主主義国は、男性の家事時間は150分前後であり、
女性の家事時間は男性の1.5-2.0倍の領域に集まっています。


「小さな子どもがいる共働きの夫婦」に限っても同様です。
総務省の『社会生活基本調査』のデータによると、
日本の夫の家事時間が飛び抜けて短いことは一目瞭然です。
欧米の民主主義国においては、夫の家事分担率は
3分の1から4割程度ですが、日本はわずかに18.5%です。




「(日本の)男は家事をやらない」というのは、
日本社会でふつうに暮らしているかたでしたら、
だれもが思っていることだろうと思います。
「夫にいかにして家事をさせるか」という指南を書いた本なんて、
結構たくさん女性向けに出回っていると思います。

自分の夫が家事をやっているつもりでいるので、
夫婦で家事をどれだけ分担しているかを
示した図を作ったかたがいらっしゃります。
縦軸にタスクの頻度、横軸に夫婦のどちらが分担しているかですが、
多くの家事が妻に偏っていることがあきらかになったのでした。

「家事育児を「やっているつもり」の旦那へ見せた執念の分担図」

家事育児を「やっているつもり」の旦那へ見せた執念の分担図



日本人男性が家事をしないことは、
外国でもある程度常識的に知られるようになっています。
ダビ・ナタナエル氏というドイツの漫画家が描いた
『ボクは東京でリアル』という漫画には、
「日本人男性は家事をパートナーに丸投げするから、
同棲すると我慢と拷問の世界になる」と忠告する場面があります。

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近代以降はどこの国でも「女は家庭」という社会通念はあったし、
現在もそれがすっかりなくなったとは言えないです。
ジェンダー平等がもっとも進んだ国ぐにでも、
女性の家事時間のほうが男性のそれより長く、
男性の家事時間のほうが長い国はひとつもないです。

それでも日本の家事労働の女性への偏重は
他国に見られないきわだったものがあります。
「女は家庭」というジェンダーバイアスから
諸外国は抜け出しつつある中、日本は依然としてそれを維持させる
とりわけ強い要因があるということでしょう。


その日本特有の要因が「家族思想信仰」だろうと思います。
これはまさしく「夫が外で働き、妻は専業主婦」という
家族観を理想とする「信仰」にほかならないからです。
(韓国も家事労働が女性に偏重していますが、
日本とは違った固有の事情があるのでしょう。)

戦後の経済復興をもたらした成功体験が、
「家族思想信仰」を根深く浸透させることになったのでした。
かくして日本では「家事は女の仕事」という社会通念が、
他国から抜きん出て強いままなのだと思います。




「長時間労働」という日本特有の労働文化も、
男性の家事時間を短くする原因になっているでしょう。
長く残業してたくさん仕事をしたほうが、
昇進や手当ての面で有利になるという仕組みが
少なくない企業できあがっているということです。

そうでなくても、会社に遅くまで居残っていることが
えらいという企業風土が蔓延しています。
会社にいる時間が長ければ、家にいる時間が短くなって
必然的に家事時間が短くなることになります。

OECDの調査をもとにした、男性の家事時間と仕事時間についての
国際比較がこのあたりを示していると思います。
日本の男性の仕事時間は家事時間のほぼ6倍です。

北ヨーロッパの国ぐには、仕事時間は家事時間の1.5倍以下、
ほかの欧米の民主主義国も1.5-2.0倍程度です。
いかに日本の男性は「仕事人間」「会社人間」であり、
家事をしていないかがわかるというものです。

「仕事・家事時間の国際比較」

1日あたりの仕事・家事時間の国際比較(男性)



「長時間労働」が日本の企業に定着しているのは、
「家事は専業主婦の妻に任せて、男は会社の仕事に
専念できるようにしたほうが生産性がよくなる」と、
高度経済成長期の企業が考えたことによります。

「日本の女性活用の「不都合すぎる真実」」
「「長時間労働をやめれば、日本は変わる」小室淑恵さんに聞く衆院選の争点」
「「専業主婦つきの男」への止まらぬ嫉妬」

企業利益のために既婚男性に有利な労働習慣を
推進した結果ということになるので、ここまで含めて考えると
長時間労働のせいで男性は家事時間が短いのも、
「家族思想信仰」が原因ということになるでしょう。

関連エントリ

参考資料

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