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航空自衛隊セクハラ訴訟

空自セクハラ訴訟 空自セクハラ訴訟のメモ

北海道の航空自衛隊で、「セクハラ訴訟」と呼ばれる事件がありました。
ことのはじめは、2006年9月9日の夜中、女性自衛官が
泥酔していた上司の男性自衛官から、部屋に呼び出されて、
性暴力にあったという、おそろしい事件です。

被害女性は自衛隊を相手に、国家賠償請求訴訟を起こします。
この裁判は、「セクハラ訴訟」と言われていますが、
実際の被害は「強制わいせつ」と「強姦未遂」です。

被害にあった女性が被害を訴えると、周囲の人たちは、
組織の保身のために、二次加害に走り出します。
いやがらせや暴言を吐くのはもとより、
被害女性が産科を受診することさえ、
男性上官の同行なしには許さないというありさまでした。
しかも被害にあった女性の任期が、09年3月に切れるとともに、
空自は採用を更新しないという、事実上の解雇にしています。


つぎの記事に、二次加害の様子が出ています。
たとえば、こんなことまであります。
「女性自衛官人権訴訟」
「強かん未遂被害者に退職強要」
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上司たちは、原告に対して
「お前は被害者だと思っているかもしれないが、お前は加害者だ」
「お前は問題を起こしたから外出させない」
「Aは男だ。お前は女だ、どっちを残すかといったら男だ」などと恫喝し、
退職を強要するまでにエスカレートしていった。
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「お前は女だからクビをきる」なんて、露骨に言っています。
自衛隊なんて、どうせ「男社会」だろうとは思っていましたが、
きょうびは、どこへいっても、ここまではっきりと
差別的なことは(思っていても)言わないと思っていたので、
このえげつなさにはびっくりしました。


空自の上司たちは、被害女性に対して、
「お前は被害者だと思っているかもしれないが、
お前は加害者だ」とまで言っています。
被害を訴えた女性を、「トラブルメーカ」とか、
「加害者」として扱うというのは、性犯罪の二次加害としては、
かなり典型的なことだと言えます。

しかも、航空自衛隊では「身内の恥は隠すべきもの
という意識を持たないと自衛隊の弱体化が加速する」
などと訓示をしたりもしていたそうです。
軍隊組織にありがちな体質でもあったと言えます。

さらに言えば、もともと組織に都合の悪い人物がいて、
それを訴えた人間が、組織の「和」を乱すものとして排除される
というのは、伝統的な「日本的組織」の典型でもあるでしょう。


私事になりますが、わたしがむかしかかわった
「水伝騒動」も、おなじような図式だったと言えます。
これはネットのトラブルのこじれが原因の大騒動です。

彼らは明確な組織ではなく、同胞意識のある「集団」ですが、
「お仲間」の保身のために、都合の悪い批判をするわたしを、
「トラブルメーカ」として、バッシングを続けたのでした。
このときもご多分にもれず、セクハラや
その二次加害にまで発展していきました。

彼らは政治的には、反戦・平和を主張していて、
自衛隊とは相性が悪そうな人たちです。
じつは空自の「セクハラ訴訟」とおなじようなことは、
わりとどこにでも起きうることで、社会の病理としては
根が深いのではないかと、わたしは、思ってしまうのでした。


空自セクハラ訴訟は、2010年7月29日に判決がくだされます。
札幌地方裁判所は、性暴力被害の事実を認定し、
原告女性の主張をほぼ全面的に認めるという、画期的なものでした。
国は控訴をしないことを決めたので、原告の全面的な勝訴です。
まずはよかったと言えるでしょう。

「女性自衛官の人権裁判を支援する会」のサイトを見ると、
弁護団のコメントが載せられています。
なかなか理解の得られない、性犯罪の二次加害に焦点が
当てられたことは、意義があることだと思います。

「女性自衛官の人権裁判 勝訴報告会&懇親会」
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「性暴力それ自体よりも、その後の部隊の対応について
多額の慰謝料を認めたことは、性被害の実態の捉え方
(その後の苦しみが大きいこと)、被害者の所属する組織の
責任の重大さを示した点で大変意義があり、
賠償水準の引き上げにも寄与する判決」(佐藤博文弁護士)
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参考文献

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