ずっとむかし、インターネットの選択別姓の市民団体の
メンバーがよく集まって、情報交換をしている掲示板で、
つぎのような相談が投稿されたことがありました。
これをご覧になって、あなたは、相談されたかたの
置かれている状況はどのようだと、お考えになるでしょうか？
また彼女たちに、どのような助言をなさるでしょうか？

[1] 「・・なかなか難しいものです。」

[2] 「どうしたらいいのかなあ・・・」


ひとり目のかたは、かなりのっぴきならい状況のようです。
子どもができたというので、婚姻届けを出したいのですが、
なぜかお相手のカレシは、届けを出すのをしぶるのでした。
出したとうそを言って、じつは出さないことを繰り返すしまつです。

しかも、そのカレシ、自分がどこで働いているのかも言わないし、
相談されたかたを含めて、まわりの人たちから、
お財布を失敬することもあるようです。
そのせいか、カレシのご家族のかたがたも、
ときどきうそをつくことは、わかっているようです。

ふたり目のかたは、同棲しているお相手の男性が、
浮気を繰り返すので、心身ともにめいっているようです。
出合い系で会った女性と長く続いていて、関係もオープンになっているのに、
自分のことは、あちこちで秘密にさせられているのでした。
相談されたかたは、お相手の男性の会社の社員のあつかいで、
給料をもらってはいますが、経済的には依存していると言えるでしょう。


この市民団体のかたたちの掲示板ですが、
ふだんは、夫婦別姓を実践したいけれど、必要な手続きや、
法的扱いはどうなっている？とか、家族や職場の人たちを
説得したいとか、そういう相談が寄せられるのが相場です。
上でご紹介したような投稿がなされるのは、かなりめずらしいことで、
わたしの知るかぎり、前例はなかったと思います。

最初のかたは、カレシが婚姻届けを出さないので、
事実婚でいたいのだろうと考えたようです。
たぶん、検索で見つけたのだと思いますが、
事実婚の掲示板だというので、それで投稿したのでしょう。

ふたりめのかたは、最初のかたの相談を見て、
掲示板の雰囲気が変わったと見て、投稿したのかもしれないです。
それでも「このHPの趣旨とは少し違うかもしれませんが」と、
前置きしているので、普段はこんな相談はないと思って、
用心深く切り出したのでしょう。

ひとり目のかたのカレシですが、お相手の女性に、
「仕事場も教えてくれない」のは、じつは失職している
（あるいは、最近ずっとお仕事が入らない）のではないかと思います。
彼女に仕事場まで、押しかけられてはかなわないのも、
あるかもしれないですが、「産まれる前までに仕事を変える」と、
言っているので、職がないのをごまかしているのでしょう。

ご家族のかたや、彼女（相談者）から、お財布を失敬するのも、
職がないゆえに、ときどきお金に困るからだと思います。
なんでも、今年に入って4回財布をなくした、などと言うのですが、
4月の中ごろでこの回数は、さすがに多すぎでしょうから、
やはりお金がないのを、ごまかしていると思います。


ようするに、職がなくてお金がないので、
妊娠させてしまった彼女（相談者）を、養えるだけの経済力がない、
だから、責任を放棄して、どこかへ逃げたいのだと思います。
もちろん結婚する気などなく、事実婚にしたいのでもないし、
おそらくは認知もぜんぜんしたくないのでしょう。

それでも、彼女（相談者）からは、結婚を迫られるし、
断わる理由が見つからないので、「婚姻届けを出した」と、
うそをつくことを、繰り返さざるをえないのだと思います。
自分と、彼女（相談者）と、産まれてくる子どもと、
３人で暮らすと約束したようですが、これもしぶしぶで、
守るつもりもないし、お金もないと思います。

カレシの親御さんたちは、事情は把握しているものと思います。
（さすがに自分の財布が盗まれるのは、閉口しているようですが。）
「母親がいろいろカバッテいた」ので、息子さんの不始末の責任を、
自分たちが取らされては、たまらないとでも思ったのか、
こちらも、ごまかそうとしているのかもしれないです。


具体的にどうしたらよいのかは、わたしには、わからないです。
このままずるずると、引き延ばしてよいことではないですし、
カレシとカレシの親御さんのところへ、直接押しかけて、
洗いざらいをはっきりさせてもらうより、ないように思います。

それで先方が、責任を取ってくれるとはかぎらないし、
そもそも生活費の工面が、できるわけでもないでしょう。
とはいえ状況から考えて、できそうなことは、
事実関係をはっきりさせるだけですし、それによって、
関係者一同の反応を見て、つぎを考えるよりないと思います。

というわけで、わたしは、こんなふうにお返事してみました。
「婚姻届けを出さない彼のこと．．．」

ふたり目のかたですが、同棲の男性にとって、
相談されたかたは、すでに「セカンド」「キープ」の扱いですね。
「２度婚約　１度結婚して　その都度私を捨て　そしてその都度戻って」きた、
というので、相談者の女性に不満は多く、確執もかなりあったのでしょう。

ほかによい女性がいたら、そちらといっしょになりたいと思っていて、
単身を装いたくて、それで、相談者の女性と同棲している
「事実を世間に知られるのを極端に嫌う」のだと思います。
彼の気持ちはすでに、出会い系で会った女性にあると思います。
交際期間も、1年2か月と長いですし、「かなりオープン」だというから、
友人知人にも知らせていて、公認のようになっているのでしょう。


相談された女性は、同棲の男性とは内縁関係だと思っていて、
法的に証明することも、考えているようです。
しかし、同棲の男性の心の中では、ただの同居人で、
内縁関係のつもりもないだろうと思います。

また、「前夫との間に男の子がいて　なんとか生活できる」
「彼に対する気持ちがあるから　苦しい」と書いていて、
相談された女性のかたは、経済的、精神的の両方で、
同棲相手の男性に依存しているようです。

同棲相手の男性は、こうした依存心につけこんで、
「どうせオレのもとは離れられない」と思っているのでしょう。
相談された女性のところへ、いつでも戻ってこられる、
という安心感があるがゆえに、やりたい放題になるのだと思います。


「一瞬にして全てを消去する方法、そうして　彼が私に対して
取り返しのつかないことをしたと思い知らせる方法」ですが、
これは、「このまま　黙って消える」ことだと思います。
「失なって始めてわかるなんとやら」で、相談された女性のかたを、
永久に失ってみてはじめて、取りかえしのつかないことをした、
という気持ちに、なってくるのだと思います。

相談された女性のかたは、「今月からは　経済的自立を目指し　
毎日働くようにしていたのですが　１週間にして
ショックなことを彼から受けて　とうとう仕事に出られない
事態となりました」とも述べています。
相談者の女性が、きゅうに自立しようとしたので、
同棲の男性はやばいと思って、あわてて妨害したのでしょう。

もう一度、経済的自立を目差して働くだけの
力量と勇気がおありなら、そうすることを、わたしは強く勧めたいです。
一度は、そうしたのですから、力量はじゅうぶんあるだろうと思います。
同棲の男性は、また邪魔立てすると思いますが、
それに抗するだけの勇気があるかどうかが、問題でしょう。
ここで精神的依存心から脱却することが、大事になってきます。

というわけで、わたしは、こんなふうにお返事してみました。
（4月13日(土)19時04分16秒）

わたしが、びっくりして、あっけに取られたのは、
掲示板のほかの参加者（選択別姓の市民団体のメンバー）たちの回答が、
ぜんぜん要領を得ない、ということです。
一見して、紋切り型で、一般論に終始していることがわかります。

最初に相談されたかたは、カレシの考えがわからないし、
そもそもどうして、婚姻届けを出したがらないか、わからないので、
それをいっしょに考えてほしい、くらいのことは、わかりそうに思います。
ところが、肝心のことにはお答えせず、相談者はどうしたいのかとか、
そんなことばっかり訊いてくるのです。

カレシが話しあいに応じないから、困っているというのに、
「もう一度きちんと話し合ってみてはいかがでしょうか？」と言っても、
（4月10日(水)14時20分）意味がないことくらい、わかりそうなものです。
せめてどうやって、話し合いをさせるかを言わないと、
役に立たない回答だと思います。


婚姻届けを出さないのは、つぎのようではないかと考えています。
「妊娠させたけれど、責任が取れないので逃げている」
という可能性は、まったく思い付かない（！）もののようです。
========
婚姻届については、全くの推測ですが、
　１）単に出し忘れたのを言い出しにくくて、思わず嘘をついた
　２）結婚によって法的に責任が生じるのを避けたかった（大人になりたくない？）
　３）実は既に他の人ととの間に届けを出しているなど、出せない事情があった
のいずれかが考えられると思います。
========（4月11日(木)17時10分）

このあと相談されたかたは、「カレシが婚姻届けを出した」と
うれしそうに報告してくるのですが、（4月12日(金)14時16分）
これをご覧のあなたは、「またうそをついた」と察しがつくでしょうね。

これは、わたしの回答のあとなのですが（4月11日(木)20時55分）、
それでも、掲示板のほかの参加者たちは、まだぴんと来ないみたいです。
「う〜ん．．．どういう事情なのでしょうね。
もしかして、後で誤記が分かった？？？」（4月12日(金)15時56分）とか、
「あなた自身がなっとくのいく結果が得られたのであれば、よかったですね」
などと言っているから、びっくりです。（4月13日(土)01時20分）

それだけではなく、「不安をあおってばかりで、非建設的なアドバイスだ」と、
わたしは、掲示板参加者たちに、噛み付かれもします。
彼女たちは、わたしの回答こそ見当違いだと、本気で思っているのでしょう。

もっと深刻なのは、不誠実なカレシの本心こそ問題なのに、
それをさけて、相談されたかたの責任を、追求していることでしょう。
なにやら相談者が、自分の考えを決められないのが悪いと言いたげです。
========
今、一番の問題は、彼の不実さではなく、あなたご自身が
「自分はどうしたいのか」をはっきりさせることなく、
彼や周囲にご自分の人生を委ねてしまっていることだと思います。
========（4月11日(木)10時48分）
========
あなたが一番に考えなければならないのは、彼の本心がどうなのかより、
あなたがどうしたいのか、子供をどうしたいのかです。
========（4月12日(金)00時19分）

直接会話しているので、言いやすいのかもしれないです。
だからと言って、相手の男性に非があるのに、
被害にあっている女性を責めるのは、状況いかんによっては、
「セカンドレイプ」にもなりかねず、危険でさえあるでしょう。


この掲示板の参加者たちは、「自分がどうしたらいいのかわからない」
というかたを、「自分で自分のことを決められないのは、
自分にたいして責任の持てない人」とか決めつけて、
見下す傾向もあるので、対処しないのもあるのでしょう。
それで、相談者に対する批判に転嫁するのも、あるのだと思います。

（もしかして、恋愛相談が「くだらない」とされるゆえんは、
こんな「カチカン」が、原因のひとつでもあるのかも。　
恋愛相談は「自分がどうしたらいいかわからない」という相談が大部分です。）

ふたり目のかたなんて、自分がどうしたらよいかわからないから、
相談しているということを、もっと直接的にお話しています。
ところが、掲示板の常連は、開口一番「あなたは、一体、彼との関係を
どうしたいのでしょうか？」と来たものです。（4月12日(金)21時39分）
自分の事情が伝わっていないと思ったのか、相談されたかたは、
さらにくわしくお話するのですが、おそらく掲示板参加者たちには、
どうやっても理解されないものと思います。

掲示板の参加者で回答をしているのは、全員女性だと思いますが、
おそらくは、一流大学の理工系あたりを、卒業していたりして、
まわりはわりあい素性のいい男性ばかりだったのでしょう。
実際、直接会ったことのあるかたには、男性で苦労した経験が、
すくなそうな人たちばかりだと、おっしゃるかたもいらっしゃりました。

高校を出て、大学や専門学校に入るなどして、
住んでいる社会が広くなると、さまざまな男性と触れあうことになるので、
男性で苦労したりもするのですが（そうではないだろうか．．．？）、
彼女たちは、そういったことも、あまりなかったのかもしれないです。

それで、掲示板の参加者たちは、「悪い男性」の思考パターンや、
行動パターンというものが、よくわからないのだろうと思います。
そのため、あのような相談を持ちかけられても、
お相手の男性がどういうつもりなのか、皆目見当がつかず、
通り一遍のことしか、言えないのでしょう。


彼女たちは、「事実婚にするには、どんな法的手続きが必要？」
といったようなことに、お答えするのは得意なのでしょう。
ところが、「人の気持ちがわからない」という、マニュアルや教科書に、
答えが書いていない質問には、うまく答えらないようです。
このあたり、自分の知識や経験を超えられない、
という限界が露呈しているとも、わたしは思いましたよ。

選択別姓のような、ジェンダー問題に関心のある女性というのは、
「悪い男性」に対する感覚はとぎすまされていると、
わたしはずっと思っていたので、この鈍感さがものすごく意外でしたよ。
（わたし？　わたしは、恋愛相談を読みふけったおかげで、
男性の心理をケンキュウしたから、こういうの、わかるんです。）

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