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世界経済フォーラム〜男女平等指数

男女平等指数 男女平等指数

「世界経済フォーラム」という、国際経済団体があります。
毎年1月に、スイスのダボスというところで、
年次総会を開くので、「ダボス会議」とも言われます。
政財界をはじめ、各界の指導者たちを通じて、
世界の経済、社会状況の改善を取り組むことが目的です。

この世界経済フォーラムは、2005年から毎年、
「男女平等指数(ジェンダー・ギャップ指数)」という、
男女格差の国際比較調査を行なっています。
「経済」「教育」「健康」「政治」の、4つの分野について、
国ごとにスコアを算出したもので、毎年11月に発表されます。

「ジェンダー・エンパワメント指数」という指標が、
女性の社会進出の達成度を、しめしているのに対し、
「男女平等指数」は、男女間の「格差」に注目しています。
スコアが1に近いほど、性別間のギャップが小さく、
0に近いほど、ギャップが大きいことになります。


2007年と2008年の結果は、以下の公式サイトにあります。
リンクされたPDFファイルに、さらにくわしいデータがあります。
「The Global Gender Gap Report 2007」
「The Global Gender Gap Index 2007 Rankings」(PDF)
「The Global Gender Gap Report 2008」
「The Global Gender Gap Index 2008 Rankings」(PDF)
Country Highlights and Profiles(2008年)

「ヒューライツ大阪」のサイトにも、解説記事があります。
「「ジェンダー・ギャップ指数」で日本は世界の79位」(2006年)
「日本のジェンダーギャップ指数、2007年は後退」

05年から08年までの、日本の総合成績を並べてみます。
(2005年のスコアは、算出のしかたが異なるので入れてないです。)
国際的な舞台で、日本の男女格差を調査すると、
かならずといっていいほど悲惨になるのが相場ですが、
世界経済フォーラムも例外でないのでした。

年次日本の順位スコア調査国の数順位/国の数
200538 580.6555
2006790.64471150.6957
2007910.64551280.7109
2008980.64341300.7538
調査対象国がだんだん増えるので、順位を国の数で割り算して、 上から何パーセントのところかを示しています。 もともと下から数えたほうが、早いところにいるのですが、 毎年すこしづつ下がってきて、05年は3分の1より上だったのに、 08年は4分1より下にまでなっています。 スコアの絶対値を見ると、2006-2008年のあいだで、 変動は0.02程度で、ほぼ一定と見てよさそうです。 ほかの国は、格差の改善に努力して、その効果があったけれど、 日本はほとんど改善がなかったので、相対的に順位が下がったのでしょう。 07年11月8日の日経新聞が、この世界経済フォーラムの、 ジェンダー・ギャップ指数の調査のことを、取り上げています。 本文中にある、「調査対象を昨年の115カ国から 128カ国に広げたことが響いた」という言いわけ(?)が、 なさけなさに輪をかけていると、わたしは思いました。 「2007年の「男女平等指数」、日本は91位に後退」 06年から07年にかけては、調査国が13カ国増えて、 日本の順位は12ランク下がったのですから、 新しく加わった国は、ことどとく日本より上になります。 それくらい日本は低水準だということです。 2005年から2008年ごろは、日本はどうだったのかというと、 「家族の価値」を標榜する、安倍晋三氏が活躍していました。 「3500の事例アンケート」のような、偏った調査をして、 そのバックラッシュ的主張を、正当化したりしていました。 安部晋三が政権を取ったのは、2006年9月からですが、 「正しい家族」幻想をもとに、夫婦別姓や家族の多様性に反対し、 女性の自己決定権に反した、ジェンダー政策を進めています。 ほかの閣僚も、性教育の副読本を回収した、山谷えり子氏や、 「女性の貞操義務」と称して、「300日規定」改正に反対した、 長勢甚遠氏など、バックラッシュ議員がそろっていました。 こうした政権が、「国民的人気」とたたえられるようでは、 男女格差が縮まらず、国際的な水準とくらべて、 遅れをとっても、無理もないことだと思います。 顕著に後退しなかっただけでも、ましと言えるかもしれないです。

2008年は、「国ごとの詳細(contry profile)」に、
それぞれの国の、よりくわしいデータがあります。
(リンクさきは、全部PDF形式なので、ダウンロードに注意してください。)

2008年の日本のデータ(PDF)を見ると、政治分野の立ち遅れが、
とりわけいちじるしいことがわかります。
ついで遅れているのが、経済分野(雇用の機会均等)です。
このあたりは、納得のいくかたも多いのではと思います。

分野日本の順位日本のスコア世界平均
雇用の機会均等1020.5440.587
教育水準820.9850.929
健康と生命380.9790.958
政治参加1070.0650.163
経済と政治だけ、項目別のデータも見てみることにします。
分野(経済)日本の順位日本のスコア世界平均
労働力率760.720.69
同一労働の賃金930.590.64
収入格差960.450.51
意志決定、管理職、経営1010.110.28
専門職、技術職690.850.72
経済分野では、「労働力率」と「専門職、技術職」の ふたつの項目が、世界平均より高くなっています。 「労働力率」は、日本の場合、結婚や出産でお仕事をやめる 女性が多いと、格差が大きくなると思われます。 ようするに「M字カーブ」の、くぼみを作るもとです。 ほかの3つは世界平均以下で、全体のスコアも引き下げています。 おそらく、女性はパートや一般職につくかたが多いため、 「同一労働の賃金」に格差が出てくるものと思います。 「収入格差」があるのは、賃金の高い職種につく機会が、 女性は男性よりすくない、ということです。 また、管理職や企業経営など、意志決定の場において、 登用される女性が、とりわけすくなくなっています。 まだまだ圧倒的に、社会のありかたは男性が決めていて、 女性はその下で働いている、ということのようです。
分野(政治)日本の順位日本のスコア世界平均
女性議員1000.100.21
女性閣僚830.130.17
国の代表者(最近の50人中)400.000.13
政治分野は、経済分野以上に、男女格差が大きくなっています。 3項目とも世界平均以下で、スコアの絶対値も非常に小さいです。 国の代表者が、女性はゼロというのが、とくにきわだっています。

世界全体で、上位の国はどこでしょうか?
つぎに上から5位までの国を、並べてみました。
上位4位までは、ノルウエー、スウェーデン、フィンランド、
アイスランドという北ヨーロッパの4カ国で独占という、
これをご覧のみなさんも、きっと予想通りと思われる
「お約束」の結果になっています。

これらの国ぐには、単に独占しているだけでなく、
スコアも2007年にくらべて、2008年は軒並み高くなっています。
上位に「安住」することなく、つねに男女格差を縮めるべく、
努力を続けていることが、とてもよく予想されます。
それでも、スコアは0.8代なので、まだまだ格差があって、
差をなくす余地があるのだなと、思ったりもします。

2008年2007年
順位国名スコア国名スコア
1ノルウエー0.8239スウェーデン0.8146
2フィンランド0.8195ノルウエー0.8059
3スウェーデン0.8139フィンランド0.8044
4アイスランド0.7999アイスランド0.7836
5ニュージーランド0.7859ニュージーランド0.7649
ヨーロッパで特筆する国として、フランスがあると思います。 2007年は、スコアが0.6824で、51位でしたが、 2008年は急激に上がって、スコアが0.7341で15位です。 いったいなにがあったのかと思って、詳細データを見たら、 女性閣僚の数が増えたのが、大きな原因でした。 2007年は18%でしたが、2008年は47%で、同数に近くなっています。 アジア地域で、もっともスコアが高いのはフィリピンで、 これにスリランカが続いています。 フィリピンは全体で6位ですから、上でリストした、 北ヨーロッパ4カ国と、ニュージーランドに続いています。 これらは意外で、予想外だったかたも、多いかもしれないです。 そのつぎは、旧共産圏の国が、3つ続いています。
2008年2007年
国名順位スコア順位スコア
フィリピン60.756860.7629
スリランカ120.7371150.7230
モンゴル400.7049620.6731
キルギス410.7045700.6731
カザフスタン450.6976320.6983
「国ごとの注目するべき事項(country highlights)」にある、 日本に言及されているところを、抜粋したいと思います。 ここでも経済分野と政治分野の男女間のギャップが、 全体の順位を引き下げていると、特筆されています。
Asia and Oceania
South Asia, after Sri Lanka, and is the highest ranking Muslim-majority country in the index, followed closely by Indonesia (93).
Cambodia (94), Malaysia (96), Japan (98) appear next in the rankings.
Japan has among the widest gaps on economic participation (102) and political empowerment (107), contributing to its low ranking.
Brunei Darussalam (99) is one of two new countries added to the Index in 2008.

アジア・大平洋地域
南アジア、スリランカは前述。
インドネシア(93位)は、イスラム教徒が多い国で、もっとも順位が高い。
カンボジア(94位)、マレーシア(96位)、日本(98位)がこれに続いている。
日本は、雇用の機会均等(102位)と、政治参加(107位)が
とりわけ低く、全体の順位を引き下げている。
ブルネイ(99位)は、2008年から新たに参加した、2カ国のうちのひとつ。

参考文献、資料
  • 日本経済新聞 2008年1月24日
    ダボス会議とは何か?
    「世界経済フォーラム(ダボス会議)」について、簡単に解説。

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