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韓国の急速な少子化

韓国の少子化 韓国の少子化(2)

いろいろな国の合計特殊出生率の推移を見ていると、
韓国の少子化が、とりわけ急激なことが注目をひきます。
1970年は4.5と、開発途上国並みでしたが、2005年には1.08と、
日本やヨーロッパ諸国を抜いて、最低レベルの出生率となっています。

現代の社会における、いわゆる「先進国」の、
少子化の原因は、どこもおなじような理由になっています。
簡単に言うと、結婚をして、子どもを持っても
外で働き続ける女性が、増えてきたにもかかわらず、
社会の意識やしくみが、その対応に追い付かないことによります。
それで、出産にともなうキャリアの分断が、大きな不利となって、
子どもを持たない人が多くなってきているのでした。

韓国の少子化も同様なのですが、郡を抜いた急速さには、
独自の事情もなにかあるのではないかと、わたしは思っていました。
そうしたら、『現代韓国と女性』(新幹社、春木育美著)という本に、
このあたりのことが出ていると、わかりました。

この本を読むのが、本当なのだと思いますが、朝日新聞8月27日の
「読書」欄の、「少子化対策を韓国と母親から考える」という特集に、
小林良彰氏の書評があるので、これを参照しながらお話することにします。
(こちらにも、書評の一部が引用されています。)
少子化の原因は韓国でも同じ


韓国では、1970年代までの、朴正煕大統領の時代に強力な
出生率抑制政策が行なわれたのですが、これが大もとの原因でした。
少なくなった子どもひとりに、多くの教育費がかけられるようになり、
大学進学率が男女とも、80%を超すまでになりました。
これで、社会に出て働き続ける女性も、きゅうに増えてきたようです。

ところが、ご他聞にもれず、社会の制度や意識はむかしのままで、
こうした女性たちを受け入れられるよう、整備されていませんでした。
変化が急速すぎるゆえに、いまの20-30代の人たちの、
一世代前の時代は、とても考えられなかったでしょうから、
日本の団塊世代以上に、追い付けていないのではと思います。

子どもの数が減ったにもかかわらず、大学卒が増えたことで、
「買い手市場」の就職難となったのですが、
このしわよせは、やはり女子学生に多く来てしまうようです。
4年制大学を卒業した女子のうち、正規職に就けるのは、
40%くらいにすぎないようで、相当に就職が厳しいことが伺えます。

出産や育児のサポートも、多くの職場で守られてないようです。
子どもを産んで、職場をいったん離れてしまうと、
なんと、90%くらいの人が、もとの職場に戻れなくなってしまい、
再就職できたとしても、単純労働職となっています。
(日本でも、育児後の再就職は、パートしか就けないことが
多いのですが、これに相当する事情だと思われます。)
それで、子どもを産まないで、いまの仕事を続ける女性が多くなり、
これが急速な出生率の低下を、もたらしたと考えられています。

他国にも増して変化が急速だったがゆえに、女性の社会進出と、
受け入れる社会の対応が、ふじゅうぶんなこととの格差が、
きわだって大きいというのが、韓国の特殊な事情だったようです。
「少子化の国際比較報告書」「本文2」の資料でも、
韓国は、女性の労働力率が低くて、出生率が低いという、
C2タイプに入っていることがわかります。


それでも、教育のレベルが上がったことは、
民度の上昇も、もたらしたのかもしれないです。
改善を求める市民運動も、近年になって激しく展開されてきています。
たとえば、2005年に男権的な身分登録の、戸主制の廃止が決まっています。

また、大統領によるトップダウンによって、
2003年には、「両性平等採用目標制」が設けられました。
公務員へのポジティブアクションや、国会議員のクォータ制が導入され、
女性の政界官界への進出が進み、女性の首相も出てきています。

儒教思想の影響で、男子尊重の考えかたにもとづいて、
産まれてくる子どもが、女子だと堕胎するという、
開発途上国的な体質が、いまだにあるものの、
変革が急激に進んでいるのも、たしかなようです。
あと10年くらいしたら、日本と韓国とで、立場が入れかわるかもと、
21世紀のはじめくらいに、わたしは思っていたのですが、
本当に2010年ごろには、そうなるかもしれないです。

参考文献、資料
  • 朝日新聞 2006年8月27日 「読書」
    「少子化対策を韓国と母親から考える」
    小林良久氏による、『現代韓国と女性』(春木育美著)
    『子育ての変貌と次世代育成支援』(原田正文著)の書評。

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