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非婚、晩婚が「改善」したM字カーブ

これをご覧のあなたは、「M字カーブ」なるものをご存知でしょう。
横軸に世代、縦軸に女性の労働力率を取ると、
20-30代のところでくぼんだ、山がふたつのグラフとなりがちで、
「M」のようなかたちになる、というものですね。

20-30代は、結婚や出産、育児の適齢期ですが、
これにともなって、お仕事をやめる女の人が多いと、
労働力率が下がって、くぼみができることになります。
したがってこのくぼみは、女性が、結婚や出産をしても、
お仕事を続けやすいかどうかを、示すことになります。

くぼみが深いということは、結婚や出産、育児で、
お仕事をやめることを余儀無くされる、女の人が多いと言えます。
したがって、そうした社会では、女性の社会進出が、
遅れているとも、見ることができるでしょう。


2006年7月13日の日経新聞に、簡単な解説があります。
これを全部書き写しておくことにします。
M字カーブ 女性の労働力率(有業者と失業者の合計が人口に占める比率)が 出産・育児期に一時的に落ち込む現象。 学卒後の20代前半でいったん上昇し、 30代で低下し、40代で再び上向くため、 グラフ上で各年齢層の数字をつなげると「M」に見える。 出産・育児を機に仕事を辞め、育児が終わってから 再び仕事に就く女性が多いことを示す。 欧米の主要国ではM字カーブ現象はほとんど解消され、 経済協力開発機構(OECD)加盟国で今もM字カーブが 確認できるのは日本と韓国だけとされる。
それにしても、欧米のいわゆる「先進国」では、 M字カーブは、過去のものとなりつつあり、 OECD加盟国では、日本と韓国だけの現象となっている、 というのも、立ち後れを感じてしまいます。

ところで、この日経新聞によると、1987年と2002年とで比較すると、
日本でもM字カーブ現象が、だいぶ改善されたというのです。
内閣府の調査によるもので、下の図でしめしたグラフが
載せられているのですが、見てのとおり、25-29歳と、30-34歳で、
労働力率が上がっていて、M字のくぼみが小さくなっています。

1987年というと、雇用均等法の施行が、つぎの年です。
さすがの日本も、15年でそれなりに労働環境が改善されて、
女性が結婚や出産をしても、まがりなりにも、
お仕事を続けやすくなったのでしょうか?




そんなことはないというのが、内閣府の調査結果です。
M字カーブ解消の原因は、結婚しない「非婚」のかたや、
晩婚のかたが増えたり、あるいは早くに結婚しても、
子どもを作らないケースが、多くなったことによるとしています。

日経の記事には、つぎの図でしめした、25-29歳の女性の家族構成を、
1987年と2002年とでくらべたグラフを載せています。
これを見ると独身者が、約4割から約6割へと増えています。
これに対して、結婚していていちばん下の子が
3歳未満のかたは、約3割から約2割に減っています。




「子どものいない既婚者」は、ほとんど割合が変化していないですが、
これらの人たちは、15年間でもっとも労働力率が上がったとあります。
また、日経の記事には、「結婚しても仕事を理由に
早期の出産に慎重な女性が増えたり、当面は子を作らずに
夫婦共働きの生活を楽しむ女性が増えたようだ」ともあります。
これは、思い当たるかたも、たくさんいるだろうと思います。

ようするに、出産、育児とお仕事の両立は、
相変わらず難しいままで、結婚や出産のほうが敬遠され、
お仕事にいそしむようになったので、労働力率が上がって、
M字カーブが解消されることになったのが実態のようです。
この内閣府の調査結果は、これをご覧のかたも、
納得できるのではないかと思います。

参考資料
  • 日経新聞 2006年7月13日
    20代後半女性の労働力率 晩婚・晩産化で上昇
    副見出し:M字カーブ見かけは改善 仕事・育児両立進まず
    囲み記事で、お仕事と家庭の両立支援が手厚い企業は、
    社員ひとり当たりの経常利益が、高いことが紹介されています。

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