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太田誠一議員の「レイプは元気」発言

03年6月、早稲田大学のサークル、「スーパーフリー」の
男子学生が、集団レイプをしていた事件が、発覚しました。
加害者の学生は全員、強姦罪か準強姦罪で起訴され、退学処分となりました。

そのすぐあとの、6月26日に、鹿児島市で、
少子化問題に関する討論会がありました。
(「少子化問題や青少年の犯罪」を議論する、
全国私立幼稚園連合会の公開討論会)
そのとき参加していた、太田誠一自民党議員が、この早稲田の事件を指して、
「レイプする人は、まだ正常に近いんじゃないか。」
などという発言をしたのです。

この討論会は、少子化対策に関するものです。
しかも太田議員は、プロポーズする元気のない、若い男性が、
最近は多くなっている、という持論を展開していたあとでした。
そこで、司会の田原総一郎氏が
「プロポーズできないから、レイプするのか!?」と訊きかえしたのですが、
太田議員はさらに「元気があるからいい。」などと答えていました。


かなりあきれたことに、太田誠一議員は、レイプする「勇気」と、
結婚相手を求めてプロポーズする勇気を、
同種の「強く異性を求めている」感情と、考えているもののようです。

言うまでもないですが、レイプは、相手の女性の
人格や気持ちは無視され、自分の性欲処理だけしか考えてないものです。
結婚相手を求めるなら、相手の女性のことを理解し、気持ちを考え、
相手のためになにかすることになるでしょう。
プロポーズの「勇気」とは、そんな自分が、相手に受け入れて
もらえないかもしれないという、恐れや不安と闘うことになるでしょう。

自分の欲望だけか、相手を想うためかで、まったく異なる感情を、
同列に思っている、太田議員の女性観や恋愛観は、
相当ひずんだものと、言わざるを得ないようです。


のちに追求を受けて、謝罪したときも、太田議員は、
「『レイプは重大な犯罪であり、従来以上に厳しく罰するべきだ』
と言おうとしたが、時間がなくなった。
男性が配偶者を求める覇気に欠けている。
それほど強く異性を求めているのであれば、きちんと結婚する
相手を求めるべきだ、ということを言いたかった。」
などと釈明していました。

おそらく、討論会の場では、自分の発言の異常さがわからず、
あとから、批判が出てくる中で、ひどく深刻な事態になっていると、
気がついたのでしょう。
(しかし、太田議員は、自分のどこがまちがっていたのか、
根本のところは、結局わからなかったのではないかと、
わたしは想像しています。)

鹿児島の公開討論会に、参加していた人たちですが、
太田の「レイプ」発言に対して、なぜか批判が沸き起こらないのでした。
それどころか、どこか笑いごとというような雰囲気だったのです。

田原総一郎氏は、「むちゃくちゃ言ってるけど、
どう?こういう発言聞いて?」と、橋本聖子議員を即しました。
ところが、彼女は「なんとも答えられない」と、ノーコメントでした。
(橋本氏は、同じ席で出てきた、森発言に対しても、
「私は聞いていなかった」と、コメントをしませんでした。)
結局、田原氏は、「この発言を問題視するような声は出ず、
笑い声も出る和やかな雰囲気の中で終わりました」などと言って、
しめくくることになりました。

あまりに無謀なことを、(おそらく)無防備に発言されたので、
参加者一同は、あっけにとられてしまい、
その場では、なにも言えなくなったのでしょうか?


田原総一郎氏も、たぶん、わたしが上で述べたように、
レイプとプロポーズを、同列の「強く異性を求めている」と考える、
きわめて異常な異性観が、太田議員にあることを、
意識してか、無自覚にか、気がついたのでしょう。
それで、「プロポーズできないから、レイプするのか!?」と、
とっさに訊いたのではないかと思います。

田原氏は、『朝まで生テレビ』の司会をしていたし、
いまの妻は、婦人運動にかかわったことがある、アナウンサーだそうです。
(運動がもとで、番組を降ろされそうになったとき、
テレビ局に対して、訴訟まで起こしたことがあるらしい。)
このあたりから察するに、田原氏本人には、
太田議員のような、ひずんだ感覚があったとは、
考えにくいものがあります。

とはいえ、後日になって、田原氏は、
「かわいそうだ。あれは半分、ジョーク(冗談)だよね」などと、
太田氏をかばっていたらしく、このあたり、なんとも不可解です。
(それとも、くだんの暴言に対して、じゅうぶん批判できなかった
自分に対するうしろめたさゆえの、逃避(自己弁護)でしょうか...?)

国会ではどうだったかというと、衆参女性議員懇談会の、
有志議員が集まっての抗議行動が、いちおうはありました。
またこれに対する、太田議員からの謝罪文もありました。
この懇談会は超党派なので、与党の議員にもお誘いはかかるのですが、
なぜかひとりも返事はなかったそうです。

やはり、自民党では、当選回数序列が幅を利かせていて、
有力議員である太田議員には、楯を突きにくいのでしょうか?
(橋本聖子氏が、討論会の席で、自分の意見を言わなかったのは、
この理由もあるのかもしれないです。)
それとも、女性議員懇談会の自民党への影響力が、
それくらい弱いということでしょうか?

もっとも、抗議に参加したのは、全部で野党議員が9人だけでした。
もともと、たいした事件ではないと、見られていたのかもしれないです。
国会での批判も、おそまつなほうだったと言えるでしょうか?


それでもウェブでは、自民党議員からの批判も、見られるようです。
佐々木知子議員のページには、簡単ながら批判が見られます。
(でも、「発言には気をつけて」と、どことなくやさしいような...)
http://www.sasaki-law.com/memberof/general68.htm#2

野田聖子議員は、おなじ討論会でなされた、森発言と合わせて、
わりあいきっちりと、批判をしています。
(「わが自民党の大先輩」と、なぜか名前を伏せているが。)
http://www.noda-seiko.gr.jp/kiji/zasshi5.html


太田誠一議員は、選択別姓も反対の急先鋒で、法務省陰謀論とか、
風変わりな反対論を唱えていたことで、知られていました。
児童虐待防止法の議論でも、「親による懲戒権」に
やたらこだわっていたのでした。
また以前は、青少年問題特別委員会の与党筆頭理事を、
勤めていたことがあったのでした。

自民党では、こんな人が、少子化対策や、
青少年の教育にかかわっていて、重要なポストについたり、
テレビで討論会に出たりしているもののようですよ。
(「レイプは元気」発言が、祟ったのかどうかはわからないですが、
太田氏は、03年11月の衆議院総選挙で、落選してしまいました。)


ついでですが、欧米諸国で、政治家が太田や森くらいの
暴言を吐いたら、まずまちがいなく、クビが飛ぶそうです。
各メディアは、たちまち彼(ら)を糾弾するでしょう。
そんなやからに、政治家の資格はないと見なされるからです。
(なにかにつけて、差別発言を繰り返す、
東京都知事の石原慎太郎氏にいたっては、
とっくのむかしに政治生命を失っているところです。)

しかし日本では、かかる暴言や差別発言に対して、
たいした批判は起こらず、クビになることはありません。
(太田は落選しましたが、石原はあいかわらず高い人気で当選しています。)
それどころか、これを擁護する論調が、マスメディアの中にさえあるくらいです。
(不用意に批判したら、「彼らの価値観も尊重しなければならない」なんて、
逆にこちらが糾弾されることも、ありそうです。)

欧米の民主主義諸国では、とうていありえないことが、
日本ではまかり通っている、ということを、最後に付け加えておきましょう。

参考文献、資料
  • 早大サークルの集団レイプ事件や、
    太田発言や森発言の経緯、その暴言ぶりを批判したページは、
    数多くあるので、事件全体を調べるのは、そんなに難しくないでしょう。
    簡単に状況を把握するには、たとえば、こちらをご参照ください。
  • メディアの森の女たち 第28回
    司会の田原総一郎氏の発言意図に、疑いを向けています。
    (田原氏の妻のことなどは、こちらを参照にしました。
    彼の心理を想像する際、かなり役に立ちました。)
  • 大橋巨泉氏の公式サイトのコンテンツ、「内遊外歓 454回」は、
    海外在住や、テレビ番組に出演した経験をふまえた、独特の主張が見られます。
    (水島でさえ「社会人失格」としか言ってないのに、
    巨泉は「人間失格」と糾弾している。すごい。)
  • 太田議員の別姓反対の主張や、03年の総選挙での落選については、
    「夫婦別姓資料館」の「疑問>どの議員が反対しているのか?」で、
    簡単に述べられています。

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