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日本だけ特異的(ジェンダー)


家族法に限らずジェンダーに関する問題は、
日本だけ特異的という現象はとくに多いです。
ここでは一般的なジェンダー問題に関して、
日本だけが諸外国(とくにOECD加盟国の中で)と比べて
きわだって遅れていることを、見てみたいと思います。

睡眠時間
日本人女性は世界の中でもっとも睡眠時間が短いです。
さらに男性よりも女性のほうが睡眠時間が短いという
ほとんど唯一の国でもあります。
OECDのジェンダーに関する調査でわかっています。

「Balancing paid work, unpaid work and leisure」

ほかの調査対象国はほとんどどこも、
女性のほうが男性より睡眠時間が長いです。
メキシコは女性のほうが睡眠時間は短いですが、
日本と比べると男女とも睡眠時間はずっと長いです。




日本人女性はなぜかくも寝られないのか、
仕事と家事・育児の両立の負担が考えられます。
OECD加盟国の中では、日本人男性はもっとも
家事時間が短いという調査もあります。
家庭内労働のしわ寄せが、女性に多く
来ていることは、想像にがたくないことです。

「家事をしない日本の男性と家族思想信仰」

総務省の『社会生活基本調査』によると、
とくに40代と50代の女性に、睡眠時間の短いかたが多くなります。
育児と介護のダブルケアの負担が
かかっている女性が多いことも考えられます。




大学進学率
日本は女子より男子のほうが大学進学率が高いほぼ唯一の国です。
OECDがジェンダー別の大学進学率の国際調査を
示していますが、ほとんどの国において大学進学率は
女子のほうが男子より高いことがわかります。

日本以外で男子の大学進学率のほうが高い国は
トルコとチェコ共和国がありますが、これら2国は
男子と女子はほぼ同率とみなせる程度の差です。
「大学生は女子学生のほうが多い」が、現在の国際社会の常識です。
男子の大学進学率のほうが高いのは、
日本だけの特異的な現象と言ってよいでしょう。




なぜ日本だけ大学進学率が特異的なのか、
「三角関数を女子生徒に教えてなにになるのか」
という鹿児島県知事の発言に代表される、
「大学教育は女子には必要ない」というカチカンが
根強く残っていることがあると思います。

『世界価値観調査』によると「大学教育は女子よりも
男子によって重要である」という設問に
「賛成」および「強く賛成」と答えたかたの割合は、
欧米の民主主義国に比べて日本は高くなっています。

「大学教育のジェンダー観の国際比較」


「大学教育は女子より男子にとって重要である」と考える割合


日本は大学教育への公的支出が、諸外国に比べて
少ないということも考えられます。
それゆえOECD加盟国の中で日本は、大学の授業料が高く
奨学金が貧しい唯一の国としてきわだつことになります。

「学費は高いわ援助はないわ・・・日本の高等教育@OECD」


Average tuition fees (USD) vs. the percentage of students receiving public subsidies for higher education, 2008-09

そうなると大学教育を受けるためには、
個人で経済的な負担をする部分が大きくなります。
そこへ前述のように「大学教育は男子優先」という
カチカンがあると、教育の経済的リソースは息子に優先させて、
娘には使わないようにする家庭も出てきます。

日本は「失われた20年」で不況が長引いて
経済的に苦しい家庭が多くなっていますから、
なおさら教育の経済的リソースを息子優先にする親も
多くなっているのではないかと思います。

ひとり親世帯の貧困率
日本はOECD加盟国の中で、親が就労している場合の
ひとり親世帯の貧困率がもっとも高い国です。
日本の貧困率は54.6%、ほかに50%を超えている国はないです。

「一人親世帯の子どもの貧困率」

さらに日本が特異的なのは、親が就労していないよりも
親が就労しているほうが、ひとり親世帯の貧困率が高くなるという、
OECD加盟国唯一の国であることです。
日本は税金を投入して、ひとり親世帯に分け与えるのではなく、
むしり取っているという、衝撃的の現状です。

一人親世帯の子どもの貧困率(2008年)
一人親世帯の子どもの貧困率(2008年)

ほかの国ぐにはすべて、親が非就労の世帯よりも
就労している世帯のほうが、ひとり親世帯の
貧困率が低くなるという、当然の状況になっています。

かくして日本は親が非就労のひとり親世帯の貧困率は、
他国と比べて取り立てて高くないのに、
親が就労すると貧困率が最高になることになります。


日本が特異的な貧困率を示す理由として、
ひとり親世帯に対する公的支援が
ふじゅうぶんということがあります。
貧困対策にもっとも効果的な現金給付に
政府も世論も肯定的にならないことがとくに大きいです。

「貧困対策はなぜ現金給付か」

ひとり親の雇用状況も、日本は立ち遅れています。
子どもを持つ女性の賃金が、男性の39%でOECD加盟国の中で
飛び抜けて低く最下位です。
賃金で差別されていて、働いても暮らしがよくならないことが、
ひとり親世帯の貧困率を高めているわけです。

「子を持つ女性の賃金格差」

子を持つ女性の賃金差別が世界最悪の日本

長時間勤務者
日本は男性よりも女性のほうが残業を
している人が多い、世界でほぼ唯一の国です。
リージャスが世界のビジネスパーソン12000人を対象に
行なった長時間勤務者についての調査によります。

世界で最も長時間勤務者多い国は?

男女別長時間勤務者の割合

これを見るとどの国も、女性より男性のほうが
残業をしているかたの割合が多いです。
長時間勤務者の割合の世界平均は、
男性が12%、女性が5%となっています。
残業は男がしやすい、もしくはさせられやすいという、
社会通念があるのかもしれないです。

そんな中にあって日本だけは、長時間勤務者の割合は、
男性が14.1%、女性が14.3%です。
残業は少ないに越したことはないですから、
日本は悪いことだけは女性を男性並みにして、
「男女平等」にするという、悪平等社会であると言えます。


日本は家事育児に対する時間のジェンダー差が大きく、
男はほとんど家事育児をしない社会です。
それにもかかわらず、日本は残業する人の割合は
ジェンダー差がほとんどない、ということになります。

「家事をしない日本の男性と家族思想信仰」




かかる調査結果を踏まえると、日本企業は長時間労働が
慣行していて、男は家に帰る時間が遅いから
家事をしないのだろう、という認識は、
必ずしも正確ではないことになりそうです。
女性も男性並みに残業をしているのに、家事育児の負担は
女性だけがとても大きいということになるでしょう。

関連エントリ

参考資料

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