トップページ別館ジェンダーの部屋

人口の調節と女性の自己決定権

世界人口70億に寄せて

世界には人口問題を抱えている国はたくさんあります。
ところが、OECDに加盟しているようないわゆる「先進国」と、
貧しい開発途上国とでは、事情が異なっています。


貧しい開発途上国が抱える人口問題は「出生率の高さ」です。
世界の人口は、近年になって急速に増え続け、
2011年10月に70億人に達しました。
この人口増加の直接の原因は、貧しい開発途上国で
人口がどんどん増えていることによります。

世界人口が増えたことは、残念ながら喜ばしいことではないです。
たとえば、食料や水などの資源が不足して、
争奪が起きるといった、不穏な事態が予測されるからです。

貧しい開発途上国で、人口がどんどん増えているのは、
女性の権利、性の自己決定権がふじゅうぶんで、
ごく制限されていることが大きな原因となっています。

たとえば、モザンビークの例は典型的です。
ピルや避妊具など、近代的な避妊法を利用しているのは
わずか12%で、ほとんど避妊ができないと言えます。
また男性は、一般に多くの子どもを望み、
女性の意見を顧みることがないと言われています。
女性の自己決定権が、ほとんどないと言っていいでしょう。


OECD加盟国のような、裕福な国の抱える人口問題は
「出生率の低さ」、すなわち「少子化」です。
そしてよくご存知のように、OECD加盟国どうしで比較すると、
相対的に女性の権利が保証されている国は出生率が回復して、
相対的に女性の権利が制限されている国で、
出生率が低くなっている、という現状になっています。

OECD加盟国の中で、女性の権利がふじゅうぶんな国は、
妊娠や出産してもお仕事を続けやすいといった、
子育てをしやすい環境が、じゅうぶん整備されないことが多いです。
それゆえ、子どもを持つことをためらう人が増えて、
出生率の低下を招いている、ということになります。


貧しい開発途上国とOECDに加盟するような国とで、
抱えている人口問題の方向性が、まったく逆なのですが、
どちらも女性の権利の保障がカギになっている、
ということが興味深いと思います。

そしていずれの場合も、女性の権利や自己決定権が保証されると、
人口の増えかたが適正になるわけです。
したがって、女性差別をいつまでも温存する国は、
人口問題でずっと苦しむことになると言えます。

参考資料
  • 「世界人口70億人へ、資源争奪など不穏な時代の幕開けか」
    http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-23819620111026
  • 「世界人口70億人 途上国の貧困対策を急げ」
    http://3coco.org/a/modules/d3pipes_2/index.php?page=clipping&clipping_id=644
    モザンビークの事情についてすこし触れている。
  • 「70億人の世界で70億の可能性を考えるー『世界人口白書2011』が全世界で発表されました」
    http://whiteribbon.excite.co.jp/report/unfpa_2011.html
    この記事には、裕福な国の人口問題について、つぎのように書かれています。
    これは考察がふじゅうぶんというか、ポイントが外れていると思います。
    ========
    しかし、裕福な国の出生率の低さは経済的な問題だけではないようだ。
    女性が自立し、様々な生き方が選択可能になり、
    「自分のためにもっと時間を使いたい」という考えがあることも少なくない。
    女性が権利を得た環境でもまた、別の問題が生まれているのだ。
    ========
    これは本文に書いたように、妊娠・出産と育児との両立が
    制度と意識の両方で保障されるかどうかが、問題だと思います。

「ジェンダーの部屋」にもどる
「別館」にもどる
トップにもどる


inserted by FC2 system