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子どもは国の宝?

子どもは国の宝?

『ウィキペディア』の「千葉景子」の項目を見ると、
「「子供は国の宝」発言への批判」という節があります。
これを書いた人の意図がうかがえそうですが、
以下のような内容になっていて、千葉景子氏が、
本当にこんな矛盾を言ったのかと、心配の向きもあるでしょう。

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2007年2月15日、参議院厚生労働委員会で、
安倍首相が今国会の施政方針演説で
「子供は国の宝」と述べたことについて、
「子供は経済や年金のために生まれるのでない。
子供は国のために生まれるという発想があるのではないか」と批判した。

ただし、自身が所属する民主党の
『次の内閣厚生労働部門〜民主党の政策提言〜』に、
「子どもは国の宝」と挙げられており[9]、
また、2006年4月に民主党が提出した
「小児医療提供体制の確保等のために
緊急に構ずべき施策の推進に関する法律」も
同じ言葉が使われている。[10]、

民主党の議員も郡和子が2006年4月6日衆議院本会議において
”子供は国の宝”と述べている[5]。
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引用されている文献を、3つとも見てみました。
「子どもは国の宝」「チルドレン・ファースト」と、
かならず「チルドレン・ファースト」が、
あとに続けて併記されています。

「地域の実情とニーズに応じた質の高い安心で安全な小児医療を」
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「子どもは国の宝」「チルドレン・ファースト」という視点から、
民主党は子どもの安全や子育て支援について
最優先課題として取り組んでいる
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「がん対策、小児医療、患者の権利重視で、医療3案を衆院に提出」
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「小児医療提供体制の確保等のために緊急に
構ずべき施策の推進に関する法律案」は、
「子どもは国の宝」「チルドレン・ファースト」という視点から、
国民が望む小児医療体制の提供が急務という考えの下、
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「衆議院本会議2006年4月6日議事録」
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子供は国の宝、チルドレンファーストという視点に立って、
民主党は、子供の安全や子育て支援について
特に最優先課題として取り組んでいるところでございます。
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これは、子どもが第一、すなわち、
育っていく子どもが主体である、という考えに
もとづいている、ということでしょう。
したがって、民主党の資料に出てくる
「子どもは国の宝」とは、「子どもは国全体から
歓迎される存在」という意味になります。


民主党が作っている冊子、『育ち育む応援プラン』は、
はしがきページに「チルドレン・ファースト」と書かれています。
4章「子どもたちのための行動計画」の1節に、つぎのようにあります。
ここではっきりと、「国のために産む」という視点を批判しています。
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でもちょっと待ってください。
子どもは国のために生まれてくるのではなく、
人間らしく生きていくために、親をはじめとする社会全体に
歓迎されて生まれてくるのです。

日本では、昔、戦争中に、「戦争に勝つためには
国のために働ける人(そして国のために死ねる人)を
増やさなければならない」と、「産めよ殖やせよ」が
奨励されたという歴史があります。
「国のために生む」という姿勢では、
「一人ひとりの子どもにこそ価値がある」
という個人の尊厳の視点が弱くなってしまいます。
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安倍首相(当時)が「子どもは国の宝」と発言したという、
07年2月15日の参議院厚生労働委員会の議事録も見てみました。
ここで、千葉景子氏は、子どもが第一で主体であることを、
確認しようとして、安倍への追求をくりかえしています。
「第166回国会 厚生労働委員会 第1号」

首相という立場上(?)、安倍の答弁は
あたりさわりがなさそうですが、
いかんせん、安倍晋三氏は「美しい国」の人ですから、
「お国のために子どもを産んでもらう」を
意味しているのではないかと、勘ぐられても
無理もないことでしょう。


よって、千葉景子氏による、安倍発言批判の中の
「子どもは国の宝」は、民主党の資料や、
群和子氏の発言に出てくる「子どもは国の宝」と、
意味はおなじではなく、どこも矛盾しないと考えられます。
おなじことばでも、置かれている文脈で意味が変わってくる、
という、ひとつの見本だと思います。

千葉景子さんや、民主党は矛盾しているのではないか?
(「国士さま」や「ネトウヨ」たちが、
今後あげつらうのではないか?)と、心配になっていたかたは、
安心してだいじょうぶだと思いますよ。
疑問に思ったときは、やはり原資料にあたるのがよい、
ということですね。

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