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民法改正運動の展開 - 2000年
神道政治連盟とは?
反対派の圧力団体

「神道政治連盟」(神政連、SAS)という、宗教的政治団体があります。
一般には、あまり知られていない政治団体ですが、
そのむかし(2000年)、森喜朗首相(当時)が
「日本は天皇を中心とした神の国だ。」などという
発言をしたときも、影響を与えた政治団体です、と言えば、
ピンと来るかたもいらっしゃるでしょうか?

この神道政治連盟という団体が、
民法改正、選択別姓の実現に、激しく反対しているのです。
以下のサイトで、その反対の活動のようすを、
垣間見ることができると思います。
(参議院法務委員会、2000年5月25日)
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/147/0003/14705250003017a.html
 
 
この法務委員会の質議で、中村氏が出していたパンフレットは、
おそらく選択別姓の実現を呼びかけるものでしょう。
全国各地の地方自治体や、公共図書館などをふくめて、
20000部というたくさんの数を配ることができて、
かなり評判がよかったもののようです。

それにもかかわらず、あるとき突然、
パンフレットを配るのをやめることになったようです。
法務省民事局長は、目的を果たしたからやめたのであって、
どこも圧力はかけていないとコメントしています。
しかし配付中止の不自然さからして、
神道政治連盟が中止の圧力をかけた疑いは強いでしょう。
 
質議の後半は、もっぱら神道政治連盟が
なぜ選択別姓に反対するのか、その理由の追求に終始しています。
しかし質問を受けた法務大臣は、「回答は控えさせていただきます」
「私は答える立場にない」と回答を拒み続けています。
法務大臣の立場上、私的でなく、公的な見解としての、
反対の理由があるはずですし、質問を受ければそれを答えるところでしょう。
また本人も、神道政治連盟の幹事のひとりなのですから、
理由を知らないはずないことだと思います。

ようするに、民法改正(選択別姓)に反対する、
まともな理由などどこにもないのでしょう。
選択制である以上、反対理由などないというのが、わたしの持論ですが、
神道政治連盟の反対派たちも、ご他聞にもれず、
あたまから反対しているだけなのだと思います。

国会で審議になったら、自分たちの主張など通るはずもない、
神道政治連盟や、反対派議員たちは、
それをじゅうぶん自覚しているのでしょう。
だから、国会での審議自体を、つぶさなければならないのだと思います。
 
 
結局、2000年の通常国会でも、民法改正法案は、
やはり審議にいたらなかったのでした。
法制審議会が答申を出しながらも、法案が提出されなかったというのは、
過去に3回しかないとあります。
法案提出がなされない状況がこのように続くのは、
きわめて異例のことのようです。

神道政治連盟が、はっきりと反対活動を行なったのは、
1996年3月、民法改正法案が最初に提出されようとしていたときですが、
それ以来、かなり強い妨害活動を続けていることが、うかがいしれます。
民法改正法案は、いままでずっと、
国会で審議されてきたことがろくになかったのは、
こうした妨害をされていたからにちがいないでしょう。
 
質議を続けてきた中村敦夫氏は、最後に
「この議連、ここに入っている方々はこの法案には反対している、
ほぼそうであるというふうに判断しておりますけれども、
そのとおりと考えてよろしいですか。」と訊くのですが、
臼井法相の回答は、これに対してさえも、
「そうした点については、私からお答えする立場にはございません。」だそうです。
どうやら、反対している事実さえも、言えないもののようです。

神道政治連盟は、その綱領(こうりょう)に
「神意を奉じて、経済繁栄、社会公共福祉の発展をはかり、安国の建設を期す。」
とあるように、神道の信仰や考えかたを、
政策を決定する際の、基本イデオロギーとしています。
この政治連盟は、自民党に要望書を送るなど、
自民党の政策に一定の影響も与えています。

また、神道政治連盟には、「国会議員懇談会」という
自民党の代議士が加盟している、密接に関連した議連があります。
これをご覧になるとわかるように、神道政治連盟は、
かなり多くの自民党議員の選挙活動をサポートもしていて、
自民党の大きな支持基盤となっています。
したがって、創価学会を支持基盤としている
公明党と同じように、自民党も、宗教政党だと見ることも
できるのではないかと、わたしは思います。
 
 
宗教団体も、政治で反映してほしい、
自分たちの希望はあるでしょうし、一定の数の信者がいれば、
それが世論を作ることもあるでしょう。
宗教政党の存在自体は、政教分離に反しているとはかぎらないと言えます。
実際、日本以外の世俗化された国でも、宗教政党はあります。
(たとえば、ドイツのキリスト教民主同盟など。)

しかし、具体的に自分たちの世論を、政策として推し進めるなら、
非教徒に対する配慮がなければ、信仰の自由の侵害になるでしょう。
それは、「神さまのお告げ」ではなく、
非教徒にも納得できるはっきりした理由、
つまりもっと人間的な「理性的な理由というもの」でなければ、
政教分離への抵触にもなると言えるでしょう。

神社は全国的なネットワークを持っていて、日本でいちばん大きい、
民法改正(選択別姓)に反対している組織です。
国会議員懇談会に加盟している、自民党議員の中には、
膨大な人手のかかる選挙活動をサポートしてもらうために、
あるいは神社からの組織票を取るために、内心は賛成と思っていても、
反対を続けている議員もいるようです。

参考文献、資料

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