トップページ反対派の精神構造と思考構造

反対派の精神構造と思考構造
「通称使用」派は反対派のお仲間?

内閣府(旧総理府)が行なっている、民法改正の世論調査では、
選択別姓制度の導入そのものについての設問は、
(ア)「反対」(イ)「賛成」(ウ)「通称使用」の3つの選択肢があります。
2001年の世論調査のときは、以下に引用したような質問文で、
「反対」29.9%、「賛成」42.1%、「通称使用」23.0%となっています。
http://www8.cao.go.jp/survey/h13/fuufu/index.html
http://www8.cao.go.jp/survey/h13/fuufu/images/zu15.gif

前回1996年のときは、「反対」39.8%、「賛成」32.5%、「通称使用」22.5%でした。
今回の調査で、はじめて「賛成」が「反対」より多くなったので、
各新聞社とも、この結果を記事に取り上げました。
01年8月5日の朝日新聞では、『夫婦別姓制42%賛成、初めて反対超す』
「民法改正へ追い風」という見出しで報じていました。


〔回答票15〕 現在は,夫婦は必ず同じ名字(姓)を 名乗らなければならないことになっていますが, 「現行制度と同じように夫婦が同じ名字(姓)を名乗ることのほか, 夫婦が希望する場合には,同じ名字(姓)ではなく, それぞれの婚姻前の名字(姓)を名乗ることができるように 法律を改めた方がよい。」という意見があります。 このような意見について,あなたはどのように思いますか。 次の中から1つだけお答えください。 (ア)婚姻をする以上,夫婦は必ず同じ名字(姓)を 名乗るべきであり,現在の法律を改める必要はない (29.9%) (イ)夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望している場合には, 夫婦がそれぞれ婚姻前の名字(姓)を名乗ることができるように 法律を改めてもかまわない (42.1%) (ウ)夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望していても, 夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきだが, 婚姻によって名字(姓)を改めた人が婚姻前の名字(姓)を通称として どこでも使えるように法律を改めることについては,かまわない (23.0%) わからない(5.0%) http://www8.cao.go.jp/survey/h13/fuufu/3.html

このように、賛成のほうが反対より多いという事態を、
反対論者たちが、おもしろいと思うはずもないのでした。
それで、彼ら、彼女らは、さまざまな工夫をこらして、
じつは反対のほうが多いのだと、調査結果を「解釈」しようとしてきます。

2002年3月号の『諸君!』には、『クタバレ「夫婦別姓」』という、
過激なタイトルの、国会議員の座談会記事があります。
ここに出てくる、西川京子氏という、反対派議員は、
朝日新聞の記事について、こんなことを言っているのです。
これは一種の「誤報」であり、法務省に都合のいいように 世論操作の片棒を担いだというしかない。 実際は夫婦同姓を支持する国民の声((ア)と(ウ)を合わせて))は 相変わらず半数以上(53パーセント)あったという事実の方を重視すべきなんです。
なんと、「通称使用」と答えたかたを、ぜんぶごっそり、 「反対」に加えて、自分たちのお仲間にしているではないですか。 西川氏は、すこし前のところでも、「通称使用」と「反対」は、 「従来ならば別姓容認反対論で一元化されていた」とも言っています。 もともと、「通称使用」は「反対」と、おなじ意見と見ていたようです。 なぜに、「通称使用」が「反対」と、おなじになるのかと言うと、 自分たちが、選択制に反対しているので、通称使用を主張しているから、 世論調査で「通称使用」とお答えした人たちも、自分たちとおなじように、 選択制には反対だからのはずだと、お考えのようです。 山谷えり子氏という、べつの反対派議員は、自分が通称使用の浸透を 訴えてきたのも、選択別姓には反対するためだと言っています。 また実際に、自分は選択制に反対だが、この世論調査では、 「通称使用」を選んでしまうサンプルだ、とも言っています。
私も、この世論調査だと、「夫婦は同姓を名乗るべきだが、 旧姓を通称として使えるように法改正をしても構わない」に○をつけてしまう。
反対派議員たちは、こんなことを言っていますが、 世論調査で「通称使用」を選んだかたが、かならずしも選択別姓制に、 反対しているとはかぎらないと、わたしは思いますよ。 みんながみんな、選択別姓に絶対に反対だから、 通称使用がよいと思っているとは、決まっていないでしょう。 というのは、「通称使用でじゅうぶんだろう」というかたの中には、 通称を使うのがいちばんいいと、思ってはいるけれど、 「次善の手段」として、選択制を認めてもいいというかたも、 すくなからずいるだろうと考えられるからです。 こうした可能性をすっかり無視して、「通称使用」を選んだかたたちは、 みんな自分たちの同類だとして、無条件に「反対」に加えてしまう、 西川京子氏や山谷えり子氏のほうが、ずっと恣意的で偏った 調査結果の取り扱いをしていると言えるでしょう。 2001年の内閣府の世論調査の、公平で安全な読みかたは、 「通称使用」は、どちらにもカウントしないで、 「賛成」の42.1%と、「反対」の29.9%で、議論することだと思います。 したがって、8月5日の朝日新聞の見出しは、西川氏たちが言うように、 偏ってはいなし、「誤報」ということもないのだと思います。

いささか強引なのですが、「通称使用」が「賛成」と「反対」の
どちらに寄っているのか、おおよその見当をつける方法も、なくもないです。
06年12月の内閣府の調査と、08年8月の読売新聞の調査をくらべることです。

08年8月9-10日に、読売新聞の『日本人』というコーナーで、
結婚観について、独自世論調査を行なっていました。
ここで、選択別姓制度の是非についても、問うているのですが、
設問内容と回答の割合は、つぎのようになっています。

あなたは、夫婦が希望すれば、それぞれ結婚前の姓を名乗ることができる 「夫婦別姓」の導入に、賛成ですか、反対ですか。 賛成 26.9% どちらかと言えば賛成 20.0% どちらかと言えば反対 22.9% 反対 23.2% 答えない 7.0%
06年12月の内閣府の調査は、安倍政権のバックラッシュ的雰囲気のせいか、 それとも、調査が投げやりで、サンプルが偏ったせいなのか、 01年のときより後退して、「賛成」が36.6%、「反対」が35.0%と、 ほとんど同数になってしまったのでした。 「通称使用」は25.1%で、01年のときとほぼ同じ割合でした。 読売新聞の08年8月の世論調査は、「通称使用」がなく、 「賛成」「反対」「どちらかと言えば賛成」 「どちらかと言えば反対」の、4つの選択肢になっています。 男女両方を合わせて、「どちらかと言えば」を加えた割合は、 「賛成」が46.9%、「反対」が46.1%と、ほぼ同数です。 内閣府と読売新聞のどちらの調査も、層化2段無作為抽出法で選んで、 調査員が個別面接聴取で、回答を得るという同じ方法を用いています。 06年12月から08年8月と、1年9か月経っていますが、 「賛成」と「反対」が、ほとんど同じ割合なので、 両方とも同じサンプルから統計を取ったと、みなせなくもないでしょう。 そこで、思いきり簡単に考えて、単純にふたつの調査を比較すると、 「どちらかと言えば賛成」は、選択肢が3つになると、 約半分が「賛成」で、あとの半分が「通称使用」と考えられます。 「どちらかと言えば反対」も、「反対」と「通称使用」が、 ほとんど半々くらいになると考えられるでしょう。 逆に「通称使用」を選んだかたは、半分弱が「どちらかと言えば賛成」で、 残りの半分強が、「どちらかと言えば反対」になると考えられます。 「通称使用」のうち、すくなくない人たちが、通称のほうがよりよいと 思ってはいるが、選択別姓制度でも容認できることになりそうです。 「通称使用」のかたが、全部選択別姓に反対だとしたら、 半々に近い割合で、「どちらかと言えば賛成」と、 「どちらかと言えば反対」に、わかれて行くことはないと思います。 反対論者が考えている(決め込んでいる?)ように、 「通称使用」を選んだかたが、すべて選択別姓制度に、 反対というわけではない、ということは、まちがいないでしょう。

内閣府の世論調査
賛成通称使用反対無回答
1996年6月32.5%22.5%39.8%5.1%
2001年5月42.1%23.0%29.9%5.0%
2006年12月36.6%25.1%35.0%3.3%


読売新聞連続世論調査『日本人』 2008年8月9-10日
賛成どちらかと
言えば賛成
どちらかと
言えば反対
反対無回答
男性25.4%18.0%23.7%25.9%7.1%
女性28.3%22.0%22.1%20.7%6.9%
全体26.9%20.0%22.9%23.2%7.0%

参考文献、資料
  • 朝日新聞 2001年8月5日
    「夫婦別姓制42%賛成 内閣府調査 初めて反対超す」
    「民法改正へ追い風」
  • 『諸君!』 2002年3月号
    ネコ撫で声の「男女平等」に騙されるナ! クタバレ「夫婦別姓」
  • 読売新聞 2008年8月27日
    本社連続世論調査「日本人」(9) 結婚観
    「広がる人生の選択肢」

「反対派の精神構造と思考構造」にもどる
トップにもどる


inserted by FC2 system