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民法改正運動の展開 - 2006年
安倍晋三内閣がスタートする
夫婦別姓は死んだ

安倍晋三内閣発足 夫婦別姓は死んだ

2006年9月20日、自民党では総裁選が行なわれ、
かねてからの予想どおり、安倍晋三官房長官が選ばれました。
得票数は、安倍氏464票、麻生氏136票、谷垣氏102票、無効1票で、
これも予想通り、安倍氏が、圧倒的多数の票を得ての当選です。

安倍氏自身、このときのためにと、
著書『美しい国へ』を書くなどして、みずからをアピールしたし、
マスコミも、次期首相の最有力候補と、こぞって演出をしていました。
小泉首相(当時)も、「私の一票は安倍くんに入れよう」なんて、
パフォーマンスで、強い信任があるかのように印象づけていました。

そんな状況でしたから、まわりの人たちも、
安倍晋三氏が、つぎの首相のつもりでいたようです。
たとえば、「再チャレンジ推進議員連名」のように、
安倍氏を中心とした議連が、いくつも作られました。
また、「小泉チルドレン」も、復党をもくろむ郵政造反組みも、
新内閣で取り立ててもらおうとして、
安倍氏にこびたり、取り巻いたりしていました。

はげしい総裁選を、勝ち抜いたような演出にしたかったむきも、
あったらしいのですが、いちばん有力だったライバル、
福田康夫氏の、とつぜんの出馬辞退もあったりして、
「どうせデキレース」という雰囲気は、ぬぐい去りきれなかったようです。
自民党員の関心は、やや薄くなり気味で、
投票率も思ったよりは、低めになってしまいました。


9月26日の午後、歴代最年少の総理大臣と晴れてなった、
安倍晋三氏の、内閣の閣僚が決まりました。
(くわしくは、たとえばこちらを、ご覧になってください。)
森喜朗氏が、だいぶくちばしをはさんだと、言われていますが、
「安倍首相の個人的なつながりや総裁選の論功行賞を
重視しながら、派閥のバランスにも配慮した布陣」と、
言われてしまっています。

おおかたは、わかっていたとはいえ、
この首相にして、この閣僚を、あたらめて目の前にして、
いろいろな方面から、将来を危ぶむ声が出てきました。
中には、05年9月の郵政選挙で、自民党に投票しておきながら、
「右派ぞろい、タカ派ぞろいの安倍内閣、たいへんだ」と、
言っている人もいるようで、こういう人は、以前の自分の言動を、
いまどう思っているのか、わたしは知りたいです。

また、安倍首相をはじめ、06年5月の統一教会系団体による、
合同結婚式に、祝電を送ったメンバーが多いので、
「統一教会内閣」なんて、言うかたもいらっしゃいます。
いろいろご意見もあると思いますが、
この組閣の全体的な評価は、ここでは深入りしないので、
ほかのサイトやウェブログを、参照していただけたらと思います。

民法改正の関心から、気になるのは共同参画関係です。
男女共同参画相はなくなって、「北方・沖縄対策、科技政策、
イノベーション、少子化・男女共同参画、食品安全」という、
カテゴリでまとめて、内閣府特命担当相が、置かれました。
重要性が下がって、「その他もろもろ」のひとつになったようです。

その特命担当相ですが、なんと、高市早苗氏が選ばれたのです。
民法改正反対派の、首謀格のひとりであり、
法務部会では、毎回頑迷きわまりなく反対して、
法案提出を握りつぶしてきた、張本人にほかならないです。

また、首相補佐官が5人いますが、
教育再生担当として、山谷えり子氏います。
民法改正に賛成とみせかけて、2000年の衆議院総選挙で、
民主党から当選、のちに反対の記事を、雑誌『諸君!』に書いて、
公約違反をはじめたという実績のある人です。

このほか、大臣ではないですが、安倍晋三新首相は、
「安倍ブレーン」と言われる相談役を、5人置いています。
そのうちのひとりに、八木秀次氏が入っているのです。
共産主義陰謀論に毒された、これまた筋金入りの反対派です。


こうして、新内閣の男女共同参画関係は、
高市、山谷、八木と、民法改正の狂信的反対派、
バックラッシュ派で、がっちり堅められてしまいました。
(これだけのメンバーが一同会するのも、ある意味貴重かも。)

こう言ってはなんですが、民法改正の実現は、
まったく絶望的になったと、わたしは思います。
もともと自民党政権下では、無理だと思っていましたが、
徹底的に不可能にさせられたと思います。

ほかの男女共同参画に関した、さまざまな政策も、
まったく期待できないどころか、逆行にむかう危険さえあり、
それを食い止めるだけで、精一杯かもしれないです。
かねてから、予想(覚悟)していたとはいえ、
ここまでくると、あらためておそろしい気持ちになってきます。

夫婦別姓は死んだ(1)
「夫婦別姓は死んだ」なんて、衝撃的な見出しですが、
これは、『AERA』11月13日号の、特集につけられたタイトルです。
安倍新内閣が、高市、山谷、八木と、バックラッシュ勢力で
固められたので、選択別姓の実現なんて、もう絶望的という、
気持ちがこめられたに、ちがいないと思います。
http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20061113-02-0101.html

「首相が首相なら担当相も担当相だから 夫婦別姓は死んだ」(タイトル)
「世論調査では5年前に賛成が反対を上回っている。
でもこの党では逆。 憲法が時代にあわないというのなら、
それより古い民法はどうなのか。」(リード)

 
安倍内閣は、男女共同参画関連ばかりでなく、
ほかの主要な閣僚もまた、民法改正の、狂信反対派が多いのです。
まず、安倍晋三ご本人が、「わが国がやるべきことは
別姓導入でなく家族制度の建て直しだ」と、反対しています。

つぎに、長勢甚遠法相が出てきますが、
この人も「伝統的な家族」の信者で、
「景気が悪いのに、何をくだらない議論をしているのかと、
地元から言われる」と、法務部会で言った人です。
(この人、07年4月から導入される、離婚時の年金分割も、
家族の崩壊だと言って反対したもののようです。)

長勢法相は、統一教会に、しっかり祝電を送っているひとりで、
10月6日に公開質問状が、送られてもいます。
『FRIDAY』10月27日号に、長勢の顔写真と、
紀藤弁護士の、怒りのメッセージがあります。


それから、中川昭一政調会長が、紹介されています。
04年の法務部会で、議論が白熱する中、おしまいのほうで、
乗り込んできて、「どっちを向いて議論しているんだ!
なぜこの期におよんで法案を出そうというのか!」などと、
どなりつけてくれたそうです。

この中川昭一氏というのは、06年10月に、
北朝鮮が核実験を行なったとき、「日本の核保有も選択肢だ」
「金正日は糖尿病だから、核使用もありえる」と、騒ぎだした人です。
核兵器がお好きなかたは、部会でも迫力がちがうみたいですが、
『AERA』に載っている写真も、迫力があってコワイかもしれないです。(笑)

夫婦別姓は死んだ(2)
べつの意味ですごいのは、推進派の、野田聖子氏です。
めでたく自民党に復党したら、反対派の理解を得るべく、
さらに新しい妥協法案を、考えるのだそうです。
あきらめないことを示すのは、とても結構なので、
これはこれで、続けてほしいですが、いったいどういう案で、
かかる反対派たちを説得させるのでしょうか?

本気で説得させるらしいので、それだけでもびっくりですが、
家裁認可案よりさらに、妥協した案が、
まだ出てくるいうのが、さらにびっくりです。
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別姓の目的を家の存続だけに限る、など。
とにかく事実として別姓を実現させることが大事。
自民党内に議論をとどめておくのは不健全だと思うので、
党議拘束をかけずに国会に出してみたい。
社会の変化に民法がついていっていない。
安倍首相には、憲法よりまず民法を変えてほしい。
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しかし、『AERA』の記者は、はっきり書いています。
なんと、「現政権下では不可能」と、言っているのです。
こんな発言、メディアで、わたしは、はじめて見ましたよ。
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党にも内閣にも『歴史』と『伝統』を重んじる
皆様方が多い政治状況から見て、安倍政権下で夫婦別姓が
実現するのはまず不可能といっていい。
中川氏も長勢氏も高市氏の唱える通称使用にすら消極的。
チーム安倍は事実上「夫婦別姓ブロックシフト」だ。
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裏を返せば、このくらい追い込まれないと、
「不可能」と言う人が、出てこないとも言えるかもしれないです。
それだけ、別姓推進派たちは、自民党政権下で、
選択別姓が実現するかどうか、その可能性に対する
懐疑や批判をタブーにしてきたことの、あらわれとも言えそうです。
(わたしは、02年の前半に、すでに「現政権下では不可能」と
言っていたのですが、このころは、関係者のだれもが、
「いける」と信じていたので、わたしはヒコクミン扱いされたのだ。)

参考文献、資料
  • 『AERA』 06年11月13日
    「首相が首相なら担当相も担当相だから 夫婦別姓は死んだ」
    こちらで全文をご覧になれます。
    http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20061113-02-0101.html
    安倍晋三の顔を、たてに引き延ばした上に、
    法案の条文を重ねた写真が、載せられています。
    上のリンクに出ているのは、小さくなっているけれど、
    誌面版の写真は、かなり大きく、迫力があるかもしれないです。

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