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小泉首相の「犬のように」発言(1) 「明治時代」発言 犬のように産む? 犬のように産む?(2) 犬のように産む?(3) [0] [1] [2] [3] |
05年12月24日に行なわれた、閣僚懇談会のときでした。 小泉純一郎首相は、明治時代の出生率を引き合いに出して、 現代の少子化は、政治のせいではないと、開き直ったことを言ったのです。 05年12月25日の朝日新聞に、このことが記事になっています。 ごく短いので、全文をご紹介したいと思います。 以下に引用するのはウェブ版で、紙面版では、 小さな囲み記事で、さらに文章が短くなっていて、 猪口氏がコイズミを擁護するコメントが、割愛されています。 ======== 「首相『所得格差、原因でない』『改革が少子化加速』指摘に」 05年12月25日 朝日新聞 日本の人口が自然減に転じる見通しとなる中、 24日の閣僚懇談会で少子化対策について議論が交わされた。 野党から小泉改革が所得格差を生み、少子化を加速させていると 指摘されていることを意識して、小泉首相は「必ずしも所得格差や 政府が手を打っていないことが原因でない」と、 少子化の原因は多様であると強調した。 来年度予算のうち各省庁の少子化関係分が約1兆457億円と なったことをふまえ、首相は「日本は明治時代からもともと子どもを たくさん産む社会で、ずっと生活水準が満たされていない段階でも、 たくさん育てていた」などと述べたという。 また猪口・少子化担当相も記者会見で 「少子化の流れは過去30年の中ででてきたもので 所得格差が増大する中で進んだとの短絡的な説明はあたらない」とした。 また過去の政策についても22日に会見した際、 「少子化対策が国の最優先課題ではないという時代もあったかもしれないが、 この30年はその前提を整えるために費やされ、 必要最低限の政策はとられてきた」としている。 ======== オリジナルの議事録は、公開されていないのか、見当たらないです。 しかし、コイズミが、所得格差と関係ないと言ったのは、 つぎのサイトでも、確認を取ることができます。 「中馬 弘毅元行政改革担当大臣記者会見概要」 ======== 閣僚懇談会に入りましてから、少子化の問題で必ずしも所得の問題とか、 あるいは政府が手を打たないからとかという 問題ではないのではないのか、もっと別の要素があるのではないか といったようなことを小泉総理はおっしゃっていました。 ======== |
「明治時代から、ずっと生活水準が満たされていない段階でも たくさん育てていた」などと、コイズミは言ってくれています。 「足るを知らない」とか「主観的に不幸」とか言っていた、 このかたと同じ考えのようです。 いわずもがなのことですが、明治時代の出産や育児の環境は、 いまよりずっと劣悪で、多産だったかわりに、 成人できずに死んでしまう子も、たくさんいました。 「むかしは生活水準が低くても、多産だった」と吐く人は、 コイズミにかぎらず、ときどき見かけるのですが、 このような高い死亡率が、このましいということでしょうか? また、教育もいまより水準が低く、大学進学率は数パーセント、 たいていの人は、義務教育の小学校くらいしか、行かれませんでした。 むかしよりずっと高度な素養を、国民全体に求めている 現代社会においては、とてもふじゅうぶんでしょう。 この「明治時代」発言は、「コイズミ改革の作った所得格差が、 少子化の原因になっている」と、野党議員に批判されたので、 所得格差は関係ないとばかりに、言い返したものだと記事にあります。 自分の任期中に出生減となり、これといった対策も、 ほどこせないまま、自分の「カイカク」のせいとされたので、 コイズミは、いらだったのかもしれないです。 野党からの批判が、どんなだったのかは、 議事録がないので推測になりますが、「コイズミ改革によって、 非正規雇用に追いやられる女性が増えたため、これを避けるために、 出産しない女性が増えた」といった、内容だろうと思います。 |
コイズミは、猪口邦子氏を男女共同参画大臣として入閣させて、 少子化の「国際比較報告書」を作らせるなど、一見まともに見せています。 しかし、心の中では、じつはなにを考えていたのか、 その本性を垣間見たような感じです。 とはいえ、その猪口氏も、せっせとコイズミカイカクを、 かばったりしているのですから、いやになってしまいます。 野党からの批判は、所得格差が、少子化の大きな原因のひとつ、 ということであって、すべての原因だとは、たぶん言っていないと思います。 (それでも、コイズミカイカクのせいで、 所得格差ができたことは、認めているみたいですが。) また過去30年の政策についても、出産で職場を離れてからの復帰のケアや、 周囲の意識の変革については、ほとんどおざなりだったと思います。 必要最低限の対策も、ふじゅうぶんであり、だからこそ、 「国際比較報告書」でも、日本は、出生率が低く、低下率が高い、 「タイプC2」に分類されたのではないでしょうか? じつは、猪口大臣は「政府の少子化対策」について、 あちこちで講演をしていたことがありました。 つぎのエントリに、そのとき配った資料があります。 興味のあるかたは、ダウンロードして、ご覧になるといいと思います。 http://ameblo.jp/jijitsukon/entry-10016063667.html これを見ると、「生命の大切さ、家庭の役割等についての理解」 「家族・地域の絆を再生する国民運動」なんて、異様なものもあったりします。 ようするに、自民党のお歴々がよろこびそうなことであり、 しょせん、コイズミあっての「チルドレン」のひとりであり、 彼らの家族観と相容れないことは言えないという、限界があるのでしょう。 上述のように、コイズミカイカクをかばうのも、 「後ろ楯」を批判するわけにいかない、ということなのだと思います。 いくら、ジェンダー問題に理解のある人がいても、 自民党の中ではいちじるしく制約され、あまり期待できないという、 ひとつの見本とも言えそうです。 |
参考文献、資料
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