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日本だけ特異的(家族法)


諸外国とくにOECD加盟国の中で、日本だけ特異的という
社会現象は家族法に関することできわだっています。
もちろん日本は立ち遅れているという意味です。

ここでは家族法に関して、日本だけが飛び抜けて
諸外国と比べて遅れていることを、見てみたいと思います。

選択的夫婦別姓
槍玉にあげたいのは、選択的夫婦別姓です。
日本は夫婦別姓の選択が認められないほぼ唯一の国です。
ジェンダー分野の中でも、日本の「ガラパゴス」ぶりが
もっともきわだっていることだと思います。

世界の夫婦別姓

『よくわかる民法改正』という2010年の本の
11ページのリストを見ると、次のようになっています。

1. 男女平等と個人の尊厳の見地から、同氏・別氏
(国によっては複合氏も含めて)の選択を可能にする国
東欧や北欧の諸国、オランダ、ギリシャなど。

2. 呼称の自由として、同氏・別氏の選択が可能である国
イギリス、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドなど。

3. (a) 氏不変の原則の下、夫も妻も不変の国
韓国、中国、カナダ・ケベック州、イタリア、スペイン、
中南米スペイン語圏(名+父の氏+母の氏)など。
(b) 夫は不変だが、妻が夫の氏を称したり、
妻の氏に夫の氏を付加することを認める例として、
フランス、ベルギーなど

4. (a) 夫婦の共通の氏として婚氏を定めるが、
定めなかった場合には、それぞれの自己の氏を称する国
ドイツ、オーストリアなど(実質的に1.と同じ)。
(b)スイスでは、夫の氏が夫婦の氏となりますが、
妻は自己の氏を付加することができます。
(c)タイでは、夫の氏による夫婦同氏を強制していましたが、
違憲判決を受けて、実質的に選択が可能な1.に移行しました。


アメリカ合衆国は1970年の名前闘争の時代に
選択的夫婦別姓が認められるようになっています。
カナダのケベック州は1982年に男女平等の見地から、
夫婦別姓しか選択できなくなりました。

ドイツは1994年から選択的夫婦別姓が認められています。
フランス、スペイン、イタリアなど、
ラテンの国は、もともと夫婦別姓が原則です。
欧米の民主主義国では、選択的夫婦別姓を認めることは、
20世紀にほぼ終わったことと言えます。

21世紀に入るとアジアの国でも、
選択的夫婦別姓が認められるようになります。
タイは2005年から認められています。


2010年の衆院調査局の資料は以下のようになっています。
表にある国のいくつかも2010年代に進展がありました。

世界の夫婦別姓:2010年代の動向


夫婦の姓を巡る各国の状況

トルコは2014年に女性の非改姓結婚を認めない家族法に、
憲法裁判所が違憲判決を下しています。
フィリピンでは2010年に、女性が結婚改姓するかどうかは、
選択であるという、最高裁の判決が出ています。

インドでは2012年に、結婚改姓は女性にとって障害となる
という判決をムンバイ高等裁判所が出しています。
ジャマイカの夫婦同姓は慣習によるものなので、
非改姓結婚している女性はいます。

再婚禁止期間
2016年6月に民法改正され、女性のみに課される
再婚禁止期間が短縮されました。
それでも100日の再婚禁止期間が残っています。

欧米の民主主義国では、ほとんどどこも
女性差別の廃止と医療技術の発達の見地から、
再婚禁止期間は完全に廃止されています。
すでに過去のものとなっていると言うことです。

「諸外国の再婚禁止期間」

北ヨーロッパの国ぐには1968-69年に廃止されました。
ドイツは1998年、フランスは2004年、韓国は2005年に廃止です。
イギリス、アメリカ合衆国、カナダ、オセアニアの英語圏は、
離婚の要件として1年以上の別居があるので、
再婚禁止期間の規定はもともとないです。


ヨーロッパで再婚禁止期間が残っているのはイタリアです。
2016年6月の日本の民法改正は、
ようやくイタリアに追いついたレベルです。

「世界の離婚(11) 〜イタリア編〜」

イタリアには再婚禁止期間があり、 女性は前婚の解消から300日間は再婚できません。 ただし、婚姻の解消前から同居していなかった場合には、 裁判所は再婚禁止期間中でも婚姻を許可することができます。 また、妊娠の終了によっても再婚禁止期間が終了します。

婚外子の割合
日本は婚外子の割合が極端に少ないことが目立つ国です。
2008年の統計を見ると、日本の婚外子の割合はわずか2.1%で、
婚外子の「少なすぎ」がきわだっています。

スウェーデンとフランスは半分以上が婚外子、
欧米の民主主義国の多くは30-50%のあいだにあります。
ヨーロッパの中では家族、ジェンダーに関して
因習・反動的なイタリアでも17.7%です。

「世界各国の婚外子割合」


世界各国の婚外子割合


欧米の民主主義国ではなぜ婚外子が多いのかというと、
1. 婚外子を差別する社会通念がない
2. 婚外子を持っても社会保障や法的な制度で不利にならない。
という事情によります。
これらの国ぐにではすでに嫡出概念がなく、
婚外子と婚内子を区別する考え自体がないです。

日本は2013年12月の民法改正で、婚外子の相続差別が
廃止されたとはいえ、いまもって子どもを持つのは
結婚してから、という社会通念が強いです。
また婚外子に対する社会保証もふじゅうぶんです。
こうしたことが、日本における婚外子の割合を
極端に低いものにしていることになります。

関連エントリ

参考資料

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