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「理系保守」の少子化対策(3)
処女崇拝と浮気
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紫藤ムサシ氏に言わせると、外で働いている女性より、
専業主婦のほうが、浮気をしないのだそうです。
外で働いていると、いろいろな男性と接触することが多いので、
浮気の機会が多く、専業主婦だと、男性と出会う機会が少ないから、
浮気をすることもないからだそうです。

たとえば、日常の倦怠に飽きた、時間をもてあました主婦が、
刺激を求めて不倫に走る、なんてお話を、
ムサシ氏は、聞いたことがないのでしょうか?
きょうびは、長く家の中に閉じこもっていると、
精神的に滅入ってしまい、対人関係にも、悪影響なことがあります。
それゆえ、妻が専業主婦をやっていても、できるだけ外へ行かせて、
社交を持たせることが、夫に勧められるくらいです。


そもそも、異性と出会うことが多いから、浮気しやすい、
ということが、根拠のないことです。
むしろ、接触する機会がないから、かえって、
異性に対する免疫が、なくなることがあるくらいです。

これは、むしろ男性のほうに、ありがちだと思います。
理工系学部のような男所帯にいると、現実の女性を見る機会がないので、
女性に対するおかしな思い込みが、強くなることがあります。
「女欲しい〜」という欲望だけが強くなったり、
固定観念が高じて、差別的な感覚を持ったりするようになります。

ふだんから社会の中で、現実の異性とたくさん接触しているほうが、
変な妄想を持つこともなく、不必要に異性を意識したりせず、
円滑な対人関係を持つことができるのだと思います。

専業主婦と、働く女性とで、実際には、どちらが浮気が多いのかは、
わたしには、ぜんぜんわからないです。
相関はなさそうですし、こんな比較をすること自体、
そもそも、意味のないことだと思います。
すくなくとも、ムサシ氏は、専業主婦のほうが、
浮気がすくないという、ご自分の説を裏付ける調査を、
どこにもしめしていないようですよ。

紫藤ムサシ氏に言わせると、男性が処女を好きなのも、
「本能」なのだそうです。
ところが、処女崇拝も、特定の文化事情でしか存在しないのでした。
たとえば、アフリカの部族の中には、「痛がる」「血が出る」
といった理由で、処女がかえって避けられるところもあります。
(いや、現代の日本だって、ちょっと女ずれしていると、
同じ理由で、処女をいやがる男も、まま見受けられますが。)

日本では、戦前は「夜這い」という、
フリー・セックスの習慣が、広く行きわたっていました。
ムラの若い男の子が、めぼしい女の子の家に行って、
その日かぎりのセックスをしてくる、というものです。
何人かで集まって、くじで相手を決めるのが、よくあるパターンでした。

習慣のこまかいところは、ムラによって違いがありました。
隣のムラへ行ってもよいところもあったり、
自分のムラにかぎられたところもありました。
また、ムラの女性なら、だれに夜這いをかけてもよいところと、
未婚の女性にかぎるところもありました。
さらには、女性から夜這いに行くムラも、あったようです。

このくらい、性規範がおおらかな社会では、処女が取り立てて、
エラくもありがたくもないことは、すぐにわかると思います。
夜這いの習慣は、オセアニア地方には、いまでも見られるらしく、
戦前の日本だけが特別、ということではないです。


日本では、明治時代の中ごろ、近代的な家族制度を整えてから、
しだいに夜這いを禁じるようになりました。
(家族を国家で管理する都合、婚姻関係がわかりにくいとか、
だれの子どもか特定しづらい、というのは、具合が悪かったのでしょうか?)
おそくとも、1950年代には、日本のほとんどの村落から、
夜這いの習慣は、消えてしまったのでした。

こうして、婚外のセックスが、ご法度になっていくかたわら、
近代家族制度の輸入元の、キリスト教的貞操観念が加わって、
男どもが、処女をありがたがるように、なったのかもしれないです。
(ウィルヘルム・グリムは、婚前交渉や、それにともなう妊娠を
はしたないとしたらしく、『グリム童話』は、
版を重ねるごとに、そうしたシーンが削られていきました。
じつは、これも、産業革命とともに隆盛した、
ブルジョワの感覚を、受け継いだのかもしれないです。)

紫藤ムサシ氏は、男性の浮気については、なにも語っていないです。
社会に出て働いていると、浮気しやすいというなら、
ほとんどの男性は、浮気しやすい環境にいることになります。
これは、かまわないのでしょうか?
自分は女性に、浮気するなと言っておいて、
男性である自分は、浮気をしようというのでしょうか?

あるいは、「イイ歳して童貞なんて、気持ち悪い」という
物言いは、どうお考えなのでしょうか?
(「童貞はキモいと、女性が思うのは本能です。
メスは、よりよい子孫を残すために、強いオスの遺伝子を求めますが、
チェリーくんは、ほかのオスとの子孫を残す競争に勝てない、
生物学的に弱いオスだからです。」なんて、説明をされたら、
どういう気分になるでしょうか?)

紫藤ムサシ氏は、男のエゴに抗しきれない意志の弱さを、
「本能だから変えられない」と、言いわけしているだけだろうと思います。

その自己中心的な発想は、
========
生物の基本は「フィーメイル・チョイス」(女が男を選ぶ)ですが、
人間には「メイル・チョイス」(男が女を選ぶ)があり
========
などと言って、自分の結論に都合のいいように、
人間をほかの生物から、特別扱いするという、
ダブル・スタンダードに、現われていると言えるでしょう。

参考文献、資料
  • 『<非婚>のすすめ』 森永 卓郎著、講談社現代新書
    第2章「日本型恋愛と結婚の謎」の3節「経済体制と結婚システム」

    さらに174ページには、妊娠した女の人が、
    実の父親とおぼしき男性を、指名しちゃうムラもあった、
    というお話があります。 ご指名を受けた男性は、原則としてことわれず、
    そのままくだんの女性と、結婚するのだそうですよ。
    (いまとちがって、本当に実の父親かどうかなんて、
    確かめようがないですし、実質的に、好きな男を選べたみたい。)

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